【第116回 2018.07.09】

研究と実践を架橋するアナロジー的視点

投稿者:山﨑 保寿(昭和52年 理学部 数学科 卒)

 私は理学部数学科の出身であるが、現在は、教育学の研究を行っている。数学科で学んだ強みを生かし、質問紙調査のデータに対して多変量解析の方法を適用し、主に学校教育に関する研究に取り組んでいる。私の研究スタイルは、研究的方法と実践的方法の架橋をなすアクション・リサーチに該当するものである。

 一般に、アクション・リサーチは、研究者と実践者(教師)の協働により、教育の実践的な課題に対して、その解決と実践の改善を目指す継続的で省察的な研究であるといわれる。アクション・リサーチでは、教師の実践的課題に研究者が積極的に関与していくとともに、実践を「分析・検証」し実践の改善が目指されていく。こうしたアクション・リサーチのプロセスでは、理論を実践に「援用・適用」したり、実践の結果を研究的に「分析・検証」したりすることが行われる。

 さて、ここで提案したいことは、「援用・適用」ないしは「分析・検証」の視点として、理論と実践との間に一種の類比(アナロジー)構造があるという見方を持つことについてである。換言すれば、アナロジー的視点をもち、異なる系間の構造を考察するという考えである。アナロジー的視点から考察しようとする場合、G.Polyaの次の言葉が参考になる。

 「おそらくは初等数学においても高等数学 においても、またその点では他の任意の方面においても、これらの操作なしに、特に類比を用いることなしに、うまく運ぶことができるようなどんな発見もないだろう」(G.Polya(柴垣和三雄訳)『帰納と類比~数学における発見はいかになされるか~』丸善、1959年)

 同書でG.Polyaは、かなり厳密な意味で類比という言葉を用いているが、私は教育学に足場を置いているため、類比の意味をより柔軟に捉えている。すなわち、理論的に見て、実践の中に理論との類比構造が不完全ならば、実践の内容や方法を改善する余地があるのではないか、逆に、実践の中の構造を説明する類比構造が理論の中になければ、その点において理論は不完全である可能性を否定できないのではないかということである。

 このように考えれば、理論と実践とをアナロジー的視点で捉えることは、「援用・適用」という考えを一歩越えて、実践者にとって、理論に対する実践の意義を高めることにつながる。また、研究者にとって、理論と実践の相互に類比構造がある、ない、または不完全であることを見いだすことは、一層豊富な研究課題の所在に気付く契機になり得るだろう。


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