【第124回 2019.5.14】

静岡大学と浜松医科大学の統合に寄せて

投稿者:伊藤 隆(昭和54年 工学部情報工学科卒)

 今、話題の静岡国立大学統合について書いてみます。私は、工学部OBです。丁度、一期校・二期校世代に静岡大学に入学して静岡で教養部、浜松で工学部教育を受けました。ですから両キャンパスに「思い出」があって今回の統合には、分離されるという観点では一抹の不安を抱いております。しかしここは、違う意見を持っています。地元、静岡の為にどうすべきか?静岡大学の歴史を紐解きましょう。

①新制静岡大学の誕生(昭和24年)
 旧制の静岡高等学校、静岡第一師範学校、静岡第二師範学校、静岡青年師範学校、浜松工業専門学校の5校を統合
②静岡大学・静岡県立静岡農科大学の統合(昭和26年)
 農学部の発足
③静岡大学医学部設置に於ける出来事(昭和49年)
 静岡大学医学部ではなく浜松医科大学の設立
④教養部の廃止(平成7年)
 情報学部の発足

 

 そして今回の「静岡大学と浜松医科大学の統合」と大学にとって5回目の大きな変革を迎える事となります。浜松工業専門学校より実績と伝統を培った「浜松」の名前を捨てて、静岡大学工学部に集約された時、当時の先生や学生、浜松市民はさぞかし悔しかったと思うんです。また静岡大学に「医学部」を設置する時も、学問の府としての学部設立が「静岡」と「浜松」地域抗争に、そして政治家の権力闘争にしてしまった暗い過去もありました。教養部を廃止して情報学部にする時も多くの諸先生方が住み慣れた本拠地を静岡から浜松に移して、それなりの思いがあったと思います。同じ県内とはいえ、辛い別れや生活基盤の変更などもあった事でしょう。でもよく考えてみるといづれの変革も少なからず「痛み」を伴いながらも乗り切って、今の静岡大学に発展させてきた諸先輩たちの努力や苦労、変化に挑む思いは、凄かったはずです。

 

 それに比べてください。今回の「静岡大学と浜松医科大学の統合」は、そういった過去の歴史に終止符を打ち、この静岡の地に「新しい2つの大学」を作り出し、知識/教育の新しいインフラ基盤作りができる格好のチャンスではないでしょうか?メリットやデメリットといった目先の「損得勘定」で議論するのではなく、新しく新制となる静岡大学のこれからの「あるべき姿」を強くイメージして大胆不敵かつ、小心翼々に静岡での最高学府である大学という「知のインフラ構築」を進めていってほしいと思います。「強い者、頭の良い者が生き残るのではない。変化するものが生き残るのだ」とダーウインも言いました。どうか諸先生・在校生の皆さん、英知を絞り創意工夫を凝らして協議して頂きたいです。いつの日か、また静岡大学の歴史を語るときに「そうだね、あの浜松医科大学との統合こそ真の静岡大学誕生のきっかけだったね。」と熱く語れるように・・・、お願いします。


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