【第129回 2019.9.30】

静大の後輩たちへ、そして、大学へ ~終活中の卒業生からのたわごと~

投稿者:湯佐泰久(昭和44年 理学部 地学履修コース卒)

 私は1965年静大理学部の1回生として化学科に入学し、4年後、地学履修コースを卒業しました。50年以上も前の事になります。将来が見えなくて不安で、しかし、夢があった学生時代でした。終活中の今になると、お世話になり影響を受けた多くの先生、それと、悔いを残した多くの事柄が思い出されます。
 このリレーエッセイの主旨に合わせて、大学への期待や希望を、そして、後輩の皆さんへの、(自分の体験や反省に基づく)メッセージを書きます。少しでも参考になれば嬉しいです。(短絡的・主観的で稚拙な表現が多く、ごめんなさい。)



静 大 の 後 輩 た ち へ


●「大学はスタート点だ、ゴールではない。」 社会に出てからの方が何倍も長い。だから、知らないこと・やったことないこと、何事でも、何度でもやってみよう。
  大学の先生にも遠慮なく、質問をしよう。例えば、「どうして、先生はこの研究分野を選んだのですか、」と。「うるさい!」という先生は大学にはいません。喜んで答えてくれるでしょう。50年前、実験室での先生の一言を今でも覚えています。


●「自分を変える先輩に必ず、逢える。」名大大学院で逢った静大の先輩がそういう人でした。修士課程の後、彼は、テキサスA&M大学を経て、トロント大学で博士号を取得し助手に。帰国後、予備校講師などアチコチ苦労した後、国立大教授で定年退職されました。
 上昇志向だが、毎日ラジオの英会話を聞き発声練習するなど、常に努力する。教授に冷たくされても、基礎的・初歩的なことでさえ臆せず尋ねる、そんな人でした。見習いました。その後も、影響を与えてくれた多くの師匠に出会いました。


●「諦めが悪い人になれ」、頭が良い人は、出来ない理由・やらない理由を考え、すぐ納得します。皆さんは若いから深く考えないで、まずはやってみましょう。そして、続けましょう。でないと、成功というゴールに着きません。


●「ノーベル賞はもういらない」と、ある科学史の専門家は講演しました。「(ある狭い分野での)ノーベル賞を狙うような研究は、今の人類が直面している環境問題のような多領域にまたがる大問題の解決には役立たない」、と言ってヒンシュクを買ったそうです。これからは、視野や活動範囲の広い人が求められます。社会で大活躍中の人物が、大学ではまったく別の分野を専攻していたと聞き、驚いたことがあります。皆さんも、今の専攻分野だけを、未来も専攻しているとは限りません。
 『他分野の事にも、社会の動きにも広く目を向けて、自分の担当する分野の知識や考えを他分野の人に簡潔に説明できる。そして、多方面のメンバーと協力して、環境問題のような大問題の解決に立ち向かう』、 そんな人物になって下さい。


●「判りやすい文章を作成する力」を身につけましょう。実社会における文章や言葉の重要性は小さくありません。まずは、「理科系の作文技術 (木下是雄著 中公新書.756円と安い!)」の一読をお勧めします。私は文章を書くのが苦手で、「君の文章はさっぱり分からない」 と言われ、悩み続けてきました。36歳頃にこの本を読んで、「目からうろこ」。文章の書き方が変わりました。



大 学 へ の 期 待 や 希 望


●大昔の教養部時代の体験談です(今の静大には該当しないことを祈ります)。学生のための外国語教育なのか、疑問に思いました。ドイツ語なんか、文法を少し習ったあとは、恋愛小説を駆け足で読むだけでした。「科学を学ぶための外国語」を期待していたのですが。


●「情報を正確に伝え、意見を簡潔に述べるための言語技術教育を!」1年生向けに文章作成能力の教育を実施した方が良いと思います。これは、岐大工で22年間、静大理で3年間、その他、いくつかの大学で授業した経験から、実感したことです。ほとんどの受講生は、「中・高校では文章作成の教育を受けたことが無い。だから、苦手だ。」と言っていました。これでは困ります。「明快で簡潔な文章を作成する能力」は重要です。


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