【第78回 2015.05.14】

木造校舎の思い出と地力が生み出す木造建造物

投稿者:田中 克成(昭和42年3月静岡大学農学部林学科卒業)

 私は昭和42年3月に農学部を卒業しました。4年間お世話になった校舎は木造の建物で今ではほとんど見られなくなった学び舎ではないかと思います。
 私は小学校、中学校、高校、そして大学もすべて木造校舎でしたので、何の違和感もなく過ごすことが出来たのではと思っています。
 大学の時は小、中学校時の様な廊下の雑巾がけはありませんでしたが、木造だから響く足音で解ることが幾つかあったと思います。
 あの二階建ての教室で終わりそうで、なかなか終わらない授業に溜息を付き過ごしたひと時、今は無い木造の校舎にはいろんな思い出が詰まっていました。
 卒業後森林や木材に関わる仕事に携わり、国産材が世界的に類まれなる品質の良さを持っていることを、肌で知ることが出来ました。
 私が静岡県森連の天竜営業所長をしていた時、ある山主の方がここの山は「地力」があるから、良い品質の木材が出来ると言っていたことを今でも思い出します。天竜地域は全国でも有数な品質をもつ杉、桧の産地です。
 樹齢300年の神妻スギ(佐久間町産)を1本2千万円で捌いたこともありました。
 土の話に戻りますが、かの有名な法隆寺の宮大工を長年務めた西岡常一氏が「法隆寺を支えた木」という本の中で述べていることが、印象に残っています。
 それは常一氏が大工になるために工業学校に進む考えを持っていた時のことです。祖父が「土が分からずに木を学ぶことは出来ない!農業学校に進め」と一喝しました。祖父の忠告を守り土から木を学び日本一の宮大工になったのです。
 法隆寺は建立から1、300年多くの宮大工に守られて、地震や風雪に耐え未だに古の歴史を伝えてくれています。
 日本は木の文化の国です。日本の木の良さと、土の大切さを後世に伝えて行くことが出来る人に静岡大学農学部の学生は成長していくことを願っています。

  

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