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学長対談企画

2015.11.06 〔対談〕 伊東学長 × 浜松ホトニクス株式会社 晝馬 明代表取締役社長


2015年11月6日にオークラアクトシティホテル浜松において,浜松ホトニクス株式会社晝馬 明代表取締役社長と伊東 幸宏静岡大学長が,「産業界と国立大学」をテーマに対談。司会は,教育コーディネーターで静岡大学客員教授の中西 美沙子氏。

テーマ 「産業界と国立大学」


中西  晝馬社長、今回のノーベル物理学賞受賞へのご貢献、おめでとうございます。地元企業の素晴らしい活躍を誇りに思います。


伊東 本当におめでとうございます。ノーベル賞に三度貢献とは、すごいことですね。

 

晝馬 そうおっしゃっていただくのはありがたいのですが、我々はお手伝いをさせていただいただけですので。
日本は、宇宙線研究、素粒子研究において偉大な成果を上げ世界をリードしています。大学の研究には基礎研究と応用研究がありますが、最近は応用研究に目が行きがちです。梶田先生も「ニュートリノの研究をして認められたが、これはすぐに役に立つものではない」とおっしゃっていますが、その意味するところは「宇宙とは何だ」、「真実とは何だ」という真理を追及することこそ、学問・学術にとって、そして人類にとって、非常に大切なことだと私は理解しています。


対談の様子
  右から,伊東静岡大学長,晝馬浜松ホトニクス社長,中西静岡大学客員教授

 

地場産業と地元国立大学のかかわり


中西  本日の対談は、「産業界と国立大学」というテーマとさせていただきました。まず最初に、地域の産業、企業と、静岡大学との関わりについてお話を進めさせていただきたいと思います。

 

晝馬 当社は1953年に、今で言う「大学発ベンチャー企業」としてスタートしました。静大の前身である浜松高等工業学校の高柳健次郎先生の門下である堀内平八郎とほか二人の静大OBが創業したのです。

 

伊東 私は、早稲田出身なのです。当時、テレビジョンの研究は、早稲田式テレビと浜松式テレビが争っていて、その早稲田式テレビの方の先生というのが、私の指導教員のさらに指導教員でした。静岡に来るという時に、そんな話を指導教員としたのを覚えています。そのころから、浜松ホトニクスという、何かすごくユニークな会社があるということは知られていて、私が浜松に着任する際の一つの魅力でもありました。
静岡大学は、私が着任した平成2年当時には、既に博士課程(電子科学研究科)を持っていました。それは、新制大学の中でも最初に電子工学研究所が設立されて、電子科学に関しての研究実績があったからです。そういう意味でも、静岡大学の歴史を語る時、高柳先生の光研究は欠かせないものだと思っています。


静岡大学長伊東幸宏


   伊東 幸宏(いとう ゆきひろ)
   東京都出身 >
   早稲田大学理工学部卒
   工学博士
   1990年 静岡大学工学部着任
   2007年 情報学部長
   2010年 第14代静岡大学長
   現在3期目

 

 

 

 

 

 

中西  光に関する研究というのが、そこから、この浜松で始まったということですね。地域の企業と共同で展開する大学の取り組みから、まず、アジア・ブリッジ・プログラム(Asia Bridge Program)について、ご説明をお願いします。

 

伊東 アジア・ブリッジ・プログラムですが、浜松地域や県全体を見渡しても、多くの企業がアジアに出て行っています。アジア地域の優秀な人材で、日本や静岡が好きだという学生や人材を本学で育てていきたい。静岡大学は学生数が1万人強ですが、昨年度の外国人留学生は300人程度です。日本人学生のグローバルな能力の向上を図るためにも、外国人の同級生が当たり前にいるという環境をつくって勉強するような形をとらないといけないのかなと。できれば、将来的には1割くらいは外国人留学生になるようにするべきではないかと思っています。当面は、300人から600人に倍増をめざしたい。そういう意味でも、アジア・ブリッジ・プログラムでは、一学年40人くらい入学させたいと考えています。
それから、アジアの人材を育成することと、グローバルな日本人学生を育てる大学の環境として、学生だけじゃなくて、教員も外国人がたくさんいればいいと思っていて、そういう二つの意味があります。最近は、生協で食事をしたときに外国人の比率が高くなったような気がしますが。

 

晝馬 私は6年前まで長くアメリカにいたのですが、かつては結構いた日本人学生がどんどん減り、今は中国韓国の人が非常に増えています。
学長がお考えのように、日本とりわけ静岡で、海外と日本の人たちが交流する場をつくること、これですと、日本にいながらにして国際的感覚を養える訳ですし、先生が英語で教育して学生たちのコミュニケーション能力のレベルを上げるということも、非常に大切なことだと思います。
そういえば静岡県と中国浙江省は友好関係にありますね。我々も浙江大学との関係が非常に強く、毎年二名の大学院生を中央研究所に招いて研究してもらっています。優秀な人たちが多いので、静大の学生さんとも交流ができればいいですね。
あとでも話題になろうかと思いますが、学長とわたしの会話をきっかけに「浜松を光の尖端都市に」という「光宣言」が誕生しました。そこでも述べましたが、世界各国の光の研究の第一人者たちは浜松に来て研究しなければ話にならない、というそんなレベルの街に浜松がなって欲しいと思っています。そして、学生の皆さんは、浜松に来た世界的なレベルの研究者から直にお話を聞いてもらうということも大切だと思っています。こういった研究者は、学術だけではなく、結構ビジネスセンスも持ちベンチャースピリットも持っていますので、そういったことも含めて勉強していただきたいですね。

浜松ホトニクス社長 晝馬明氏

 

晝馬 明(ひるま あきら)
浜松市出身
米国ニュージャージー州立
ラトガース大卒
1984年 浜松ホトニクス入社
ハママツ・コーポレーション(米国)社長を経て、2009年12月から浜松ホトニクス代表取締役社長
静岡大学経営協議会学外委員

 

 

 

 

 

 

 

中西  大学が考えている、もう一つの取り組みとしまして、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」というのがございます。それについて、具体的にお話いただけますか。

 

伊東 COCというのは、センター・オブ・コミュニティー(Center of Community)で、文部科学省の事業としては、昨年度もやっていた事業です。今年から、「COC+」というように枠組みが変わりました。COC事業というのは、各大学が、それぞれ地方が元気になるような取り組みを行うものですが、COC+では、成果として求められることとして、「雇用の創出」とか「就職率の向上」などの目標を掲げる事業になっています。
安倍内閣の「まち・ひと・しごと創生」に沿った事業として展開するということで、雇用創出とか、就職率、特に、静岡県内への就職率を上げようということが目標として掲げられています。今、静岡大学の場合、県内就職率は40%くらいです。それを、プラス10%にすることを求められています。 
それはそれとして、静岡大学では、「地域創造学環」という教育プログラムを来年度から始める予定です。この「地域創造学環」というのは、学部を越えた新しい教育プログラムで、まさに地域の課題解決を学びの素材として、課題解決型の学習をカリキュラムとして設置しようというものです。全学共通の教育プログラムとして、「地域創造学環」のなかに、地域経営コース、地域共生コース、地域環境・防災コース、アート&マネジメントコース、スポーツプロモーションコースという、5つのコースを作って教育します。入試はほかの学部と別にやることとなります。

 

晝馬 学部入試枠とは別に、ですか?

 

伊東 そうです。本学は6学部ございまして、その6学部とはまた別の形で入試をします。学生50名をこのコースの定員としました。1年、2年時に地域課題を学び自分のテーマを設定して、その課題を解決していくために必要なものを学んでいくというスタイルです。いままでの学問的な積み上げの学び方でなくて、課題解決型の学びを考えています。リアルな課題に取り組ませたいという思いがあったので、そういう意味で、このCOC+事業を通して、地域の課題をきちんととらえて解決していくという経験をすることによって、県内に残っていく学生も増えるのではないだろうかと期待しています。
「地域創造学環」という新しい教育プログラムをスタートさせるときにCOC+事業が採択され、ちょうどよかったと思っています。このCOC+の枠組みを使いながら、静岡大学としては、この新しい教育プログラムで、地域人材を育てていきたいと、思っているところです。COC+の事業を展開するに当たって、浜松ホトニクスさんにもお願いしているのですけれども、県内の企業さんや自治体と提携を結び、具体的にアドバイスをもらいながら、人材育成をしていきたいと思っています。
もう一つ、このCOC+で求められているものに、「雇用創出」があります。雇用創出は、大学単独でできるような話ではありませんけれども、やはり、今、光拠点(光創起イノベーション研究拠点)でやっているようなものから、新しいビジネスというものを作っていくということに大学としても一層力を入れて、新産業を創出したい。特に、今浜松は元気がないです。何とかそこに力を入れて、そこからこのプログラムの成果として出せればいいなと思っているところです。


晝馬 さきほども少し触れましたが、3年前、学長と私は、浜松自体の力が弱っているという認識を共有しまして、一緒に何か浜松で産業を起こせるような活動をというお話で一致しました。そこから「光宣言」「光拠点」という活動につながったのですが、「COC+」にもつながったのですね。
これまでも浜松では、「やらまいか」の精神でいろいろな企業――ヤマハ、ホンダ、スズキなど――がどんどん出て来た。そういう風土にあって、これから新しい企業を作っていく駆動力になるのが「光拠点」の役割だと思うのです。一つの企業で考えることでも、大学だけで考えることでもない。大学と地域企業とが協力し、自分たちで地域のポテンシャルを活性化させるんだという「思い」をもって進めないといけません。

 

イノベーション創出と国立大学の役割


中西  光宣言というのが、2013年になされました。光の街である浜松。浜松を世界的な光技術の研究拠点の都市にするということを目指しています。文科省の助成を得て、今年の2月に、建物も完成致しました。現在、静岡大学、浜松医科大学、浜松ホトニクス、光産業創成大学院大学の4者が共同で研究に取り組んでいる光創起イノベーション研究拠点の活動について、お話を伺えますか。

 

晝馬 浜松は、楽器、織機、輸送機器という産業に加えて新しい産業をどんどん生み出していかなくてはいけません。
私たちは光産業に区分けされますが、光産業というとイメージにしにくいでしょうから「光を応用する産業」と考えていただくとわかりやすいです。これは従来の産業のようにいわゆるピラミッド型の産業構造ではなく逆ピラミッドの構造をもっています。つまり、ボトムに我々のような光の要素技術――先端的な光部品――を生み出す企業がいて、その上位に、そんな部品を活かすモジュールを生産する企業群、そのモジュールを使うシステムを開発/製造する企業群、そしてそのシステムを利用してサービスを提供する企業群があり、トータルで大きな市場をもつという構造です。ボトムにいる私たちは売上1千億円規模の中堅企業ですが、その上位にくる企業群は多種多様な広がりをもち、とても巨大なものになります。これが光産業なのです。
光技術はよく「キーとなる技術」と言われていますが、それを用いた「光を応用する産業」群が浜松地域や静岡県でどんどん生まれてくることを期待しています。そういった企業はまずはベンチャーとして立ち上がるのではないかと思います。ベンチャーが出やすい環境をつくるにはどうしたらいいか。それがこの光創起イノベーション研究拠点だと思っています。

 

中西  浜松は、ものづくりの町としてあるわけですから、そこにまた、新たに光を応用した産業などが創出されて、元気になっていくといいですね。

 

伊東 浜松の企業の中では、輸送機関係が大分外に出て行ってしまって、関連する仕事がなくなってしまっているという状況があります。また、電気自動車や自動運転の時代になった時、クラッチや車のミラーをつくっている会社などは、違う方向にも幅を広げて行かなければならなくなります。その時に、いままで培ってきたものづくりの高い技術を生かした形で、光というのを活用するということを考えてみたらいいのではないか、そしてそのためのポテンシャルはこの地に培われているのではないかと思います。静岡大学は、光関係だけでなく、ほかの分野にも強みを持っていますから、それらとかけ合わせて地域の産業創出に関しては、大学を今よりももっと活用してもらえるようになればいいなと思っています。
そのためにも光の分野で先頭をきってやりたい。成功例をつくりたいですね。

 

企業の研究開発と国立大学への期待

伊東 電子工学研究所は、新制大学で最初にできた附置研究所ですが、平成25年に改組をしまして、静岡、浜松に関係なく、分野的に適合している人で仕事ができる人が集まる組織が研究所だという位置付けにしました。

 

晝馬 ひとつ強調しておきたいのは、「光宣言」にもありますように、浜松には、静岡大学、浜松医科大学、そして、光産業創成大学院大学と弊社の4者連携の活動があるということです。異分野の連携ですね――産業界も居れば、電子工学研究所のように基礎工学も、そして医療/医学も。シーズとニーズの両面からやっているという点でこれは非常に大切なところだと思っています。
電子工学研究所の横にあって4者が運営に参画している「光拠点」はその中核のひとつになるところだと思っています。参画企業は当社だけではありません。すでに数社が参加されています。ベンチャー企業さんもどんどんここに来て新しい展開を目指して欲しいですし、地域の中小企業さんはここで静大さんの広汎な技術を利用されて、光技術を自分たちの持っている産業技術と融合させ新しいアプリケーションに応用して、進化させていかれてはどうでしょう。

中西  最後に地元の企業として、静岡大学に、どのような期待をされているかお話いただければと思います。

 

晝馬 この浜松という街からさまざまなベンチャー企業が出て来て欲しいと思っています。当社もそういったベンチャー企業から育ってきました。地方創生を考える時、大学は重要な役割を持ちます。静岡大学が企業の方向性をコーチングしてくれるような存在として、また、産業界にとって現在の仕事をさらに進化させるためにはどうしたらよいかを一緒に考えていただけるような存在であって欲しいと思っています。

中西  本日はとても有意義なお話をお聞きすることができました。本当にありがとうございました。

 

晝馬明氏と伊東学長      三者歓談


 

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