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学長対談企画

2016.09.13 〔対談〕 伊東学長 × 鈴与株式会社 鈴木与平 代表取締役会長


平成28年9月13日(火)に鈴与株式会社本社(静岡市清水区入船町11-1)において、鈴与株式会社 八代 鈴木与平 代表取締役会長と本学 伊東幸宏 学長が、「地方創生とグローバル化・静岡大学に期待すること」をテーマに対談。
司会は、本学の経営協議会委員を務めていただいているHumanDelight株式会社 代表取締役 野田万起子 氏。

対談の様子











 左から伊東幸宏 静岡大学長、鈴木与平 鈴与会長、
 野田万起子 HumanDelight代表取締役



テーマ 「地方創生とグローバル化・静岡大学に期待すること」


[地方創生に関する静岡大学の取組について]


伊東 最初に、静岡大学で取り組んでいることをご紹介させていただきます。
いま、静岡大学は、COC+事業、ABP事業、それからCOI事業に取り組んでいます。
 私は、学長7年目になりますが、学長に就任したときに静岡大学というのは、地域に根ざした知の拠点であると同時に、いくつかの分野で世界と戦える大学でありたいと申し上げました。
 その中の「地域の拠点」ということについては、地域との連携を少しずつ濃くしてきたつもりです。地元である県内すべての信用金庫や株式会社エスパルス等との包括提携協定を締結しました。地元との提携を大事することにより、それが学生の成長に結び付けばよいと思っております。
いま、「地方創生」という流れの中で、文部科学省も大学が『地方創生』の核となるための事業を始めました。
 本学が実施しているCOC(Center of Community)、センター・オブ・コミュニティーの事業を発展させ、静岡大学、静岡県立大学、浜松医科大学、静岡文化芸術大学、沼津工業高等専門学校という静岡県内全ての国公立の高等教育機関が連携して「地方創生」の取り組みを行うことを目指して始めたのがCOC+事業です。
 そこでは、学生にもっと静岡県内に向いて短期的な視点ではなく、自分の生活設計やキャリア設計を考えてもらいたいと思い、県内への就職率をプラス10%にする目標を立てました。いま、静岡大学は、44%が県内からの入学生で、48%の卒業生が県内の企業に就職していますのでプラス4%ですが、これを10%増やしたいと思い目標を立てました。
 また、県内に就職するということは、同時に県内に魅力的な産業や企業が必要ということですから、地元の企業、あるいは自治体と協力しながら、新しい産業の創出ということにも取り組んでいきたいと考えています。
 ABP(Asia Bridge Program)は、「アジア・ブリッジ・プログラム」といいまして、アジアの4カ国(ベトナム、タイ、インドネシア、インド)を中心にして学部40名、大学院40名の入学生を毎年入れたいと考えています。
 いま、静岡大学の学生数の全体は1万1千人くらいで、そのうち留学生数は300人ですから、ちょっと少ないですね。将来的には10%くらいまで増やしたいと考えております。アジアにターゲットを絞っているのは、県内企業の進出先が主にアジアの地域であり、そこで日本語で技術を語り、コミュニケーションがとれる人材で、かつ日本企業とも付き合っていけるような経済人を育成したいのです。
 また、留学生を増やす狙いは、自分のクラスに外国人がいることが当たり前だという環境を作り、そうした環境の中で日本人を育てるということも目的のひとつです。国際化、グローバル化といったときに、身近に外国人がいて一緒に勉強する環境をつくるということです。
 三つ目のCOI(Center of Innovation)というのは、センター・オブ・イノベーションということで、これは特定の分野で世界と戦える大学でありたいという部分です。
 「光」に関しては、浜松ホトニクス、静岡大学、浜松医科大学、光産業創成大学院大学の4機関で世界一の県にしようという意気込みで、静岡大学浜松キャンパスに建物を建て、そこに4機関が集まって研究を開始します。

 

静岡大学長伊東幸宏


   伊東 幸宏(いとう ゆきひろ)
   東京都出身
   早稲田大学理工学部卒
   工学博士
   1990年 静岡大学工学部着任
   2007年 情報学部長
   2010年 第14代静岡大学長
   現在3期目






 

鈴木 静岡大学の中でも浜松は歴史が少し違い、昔から卒業生の多くが浜松で就職し、活躍された方も多いですね。
また、浜松は大学と産業界はとても密接な関係があって、いま、伊東学長が言われたように、光の研究などはとても良いテーマで、それだけの素地がありますね。

伊東 私は浜松地区の工学部に赴任し、その後、情報学部長に就任することになったとき、浜松のいろいろな企業の方に教えてもらいながら、学部長をやってきました。
 私自身がそのような背景を持っているので、やはり、もっと地域と密にして、地域からも応援してもらえるような大学にしたいという思いはありました。


[地方創生(地域活性化)の役割について]


野田 静岡大学の取組でCOC+事業のお話がありましたが、地域と密接につながり、地域との連携が非常に大事になっています。
鈴木会長より、まず「地方創生」をテーマにお話を伺えればと思います。


鈴木 「地方創生」というのは、なかなか定義が難しいですね。いまの「地方創生」というのは、地域で自立的にやりなさいと言われているわけですから、大学のリーダーシップというのはとても大事だと思います。特に町づくりについては、もっと大学が前に出て、先生方がリーダーシップを取ることが大事だと思います。
 今、町づくり欠けているのは「ビジョン」です。最高の知が集まっている大学の先生方が、経済界や政治家と話をして、一つのビジョンやコンセプトを創っていってもいいのではないかという気がします。


対談の様子
















野田 今年度、大学ではCOC+のビジョンづくりが進み、素晴らしいものができていると思いますが、やはりこれを大学だけでやっていくのは非常に難しいと感じています。会長がおっしゃるように、大学がリーダーシップを取るという位置づけと、地域の経済界に具体的に関わっていく必要があります。


鈴木 自分たちで考えて自分たちでつくっていくためには、地域に根ざした静岡大学の先生方が、もっと市民や経済界、あるいは行政などと交流し、リードしていくことが大事だと思います。
  経済界には実行力がありますが、忙しさからあまり突き詰めていく人が少なく、肝心なロジックが弱くなってしまう。故に、そういう点を先生方に教えてもらいながらやっていくといいですね。

野田 「地方創生」の大きな課題の一つは人口減少ですが、中学、高校時期を静岡で育ち、大学で地元を離れてしまうと、その後、地元に戻って来て就職するということができていません。
特に静岡市は、女性の拠出率も年々増加している問題があり、今後、地域の力として期待されていく世代の若者が、静岡に戻って来ないということが危惧されます。


鈴木 「地方創生」がなぜ難しいかと言いますと、若い人たちが地方に義侠心で戻ってくるのではなく、本当に住みたいなと思う町をつくっていかないといけないからです。そのためには、町に文化があり、教育システムが整い、子どもが安心して通える学校がないといけません。
 エアラインでいろいろなところに就航して、町を見せていただきますけど、市民が機運を高めて、きれいな町をつくり、文化を育てている、そういう個性のある町は、とても少ないように感じます。
 そういう意味でも、地域に対する静岡大学の役割は大きいと思いますし、教育もすごく大きな課題です。
 教育を安心して任せられることや、家族が楽しめるだけの文化的なレベルが上がれば、行って住もうかという人が増えてくると思います。そして、そのリーダーシップをとる存在として、大学がとても重要なファクターになると思います。



鈴木会長


     鈴木 与平(すずき よへい)
   静岡県清水市(現静岡市清水区)出身
   慶應義塾大学経済学部卒
   東京大学経済学部卒
   1967年 鈴与入社
   1977年 社長就任
   2001年 8代目「与平」を襲名
   2008年 フジドリームエアラインズ(FDA)社長就任
   2015年 代表取締役会長に就任





 

野田 本当に大学の役割は重大ですね。今後、静岡大学も中長期の事業計画に基づき経営していくわけですが、静岡大学ならではの役割や専門性など、どのような点をより発揮していくのが良いか、ご指導いただければと思います。


鈴木 大学の教職員、学生がいろいろなかたちで町へ出て、もっと地域と交流を深められるような場を持つというのが、すごく大事なことではないでしょうか。
  そういう中で人間関係ができてくると、いろいろな人が静岡大学に行くようになり、いろいろな頼み事を大学の先生にするようになります。そういう意味では、いまはまだ開かれた大学になっているとは思えません。

伊東 この4月から「地域創造学環」という、「諸学の環(わ)」を目指した全学共通の教育プログラムをつくりました。静岡大学は、教育学部は師範学校、工学部は工業学校、農学部は農学校、人文と理学部が旧制高校という、旧制の学校の寄せ集めであり、これを学部として閉じたようなつくりになっています。そこでこの学部間の壁を取り払い、全学共通の教育プログラムをつくりました。
この地域創造学環というのは、学生が地域課題を初年次か2年目くらいまでに設定して、その課題解決に必要なものを全ての学部の授業から選択して、学んでいくプログラムです。地域課題を見つけるというところから、まず、勉強しないといけません。さらに、地域課題を見つけるためにも、学生が地域の人とディスカッションする機会をつくり、見つけた後に、今度はそれを解決するためには、自分が何を勉強すればいいかということを考えないとなりません。 私自身、本学環は、学生も教員も大学に閉じ篭るのではなく、外に行くためのプログラムだと思っています。


[グローバル化に関する取組について]


野田 先ほど、アジア・ブリッジ・プログラムのお話がありましたが、今後は、英語は勿論として、もう一言語くらいを話せることで、多様に活躍できる将来が広がると思います。
学業する環境の中に、外国人が常に一緒にいる環境をつくっていくというのは、とても大事だと思います。それが当たり前になることで、国内、地域に居ながらにしてのグローバル化になると考えますがいかがでしょうか。


鈴木 グローバル化というのは、二つあります。「外に向かってのグローバル化」と、「内に向かってのグローバル化」です。日本人は、今まで国際化というと、外へ向かっていました。だから、先生方も外国へ行き、学会に出たり、論文発表などで実績を上げたりしていましたが、いまは外国人が日本に来る、隣に外国人が住むような時代になりつつあるわけです。しかし、日本人は外国人に慣れていないから、外国人が隣にいるということそのものがストレスになります。内なる国際化は大変ですが、やっていかないといけない。外国人がきちんと日本の社会で働いていける仕組みを構築しないといけません。
 そこで大きな役割を担うのは大学だと思います。いま、日本は人材不足が進んでおり、外国人の就職先も増えているので、もっとアジアの学生に日本へ来てもらうのは良いことだと思います。
一方で、問題なのは、英語で授業をする先生がいないということです。その意味では、先生が変わらないといけませんね。本当に国際化するのであれば、英語で授業をやらないといけません。

鈴木会長
















伊東 静岡大学でも大学院は英語の授業だけで修了できるようなプログラムがあります。学部についても、英語の授業を増やしているので、将来的にはすべて英語で授業をできるようにしたいです。
ただ、静岡大学へ学部生として来る外国人は、できれば、自分の母国にブランチがある日本企業に就職して、日本の企業にしばらく勤め、将来的には国に帰りたいという学生が多いです。そうした学生が就職の時に日本語ができないと、なかなか企業は採ってくれません。やはり、英語の授業というものを大事にしながら、まずは日本語できっちり生活できて、例えば、工学部の学生であれば、技術に関してはきちんと日本語で日本人とやり取りできるという、その両方を目指さないといけません。


鈴木 それはその通りですね。鈴与グループにも、実際、静岡大学を卒業した留学生が働いていますが、日本で学び、いずれ現地法人で幹部になってもらおうと思っています。そうなると、日本語が分からないとやはり困ります。いわゆる現地雇用の外国人というのは沢山いますが、正規社員でまったく日本人と変わらない待遇で働いているのは4、5年前からです。
日本で教育を受けた人たちで、両方の国の言葉が分かるような人材が管理職をやってもらうような時代が、すぐ目の前に来ていると思います。

伊東 静岡大学では、外国人留学生を増やすとともに、留学生のための寮を静岡と浜松に新築しました。


鈴木 そこに日本人も一緒に入り生活できるといいですね。私も船会社に勤めていて、ロンドンに2年、パリに1年いたのですけど、やはり、隣に外国人がいて生活するというのは、大きなカルチャーショックを受けます。人生観がすごく変わったような気がします。

伊東 日本の大学も、そういう環境にしないとガラパゴス化してしまいます。そのような意味でも、外国人留学生を学生数全体の1割くらいまで増やしたいです。


鈴木 せっかく、そのような寮をつくられたのなら、外国人と日本人の学生をミックスして生活してもらえば、日本人学生にも大変な効果があると思います。その代わり、いろいろな摩擦があるでしょうから、チューター的な生活指導の先生を置いた方がよいかもしれません。

野田 静岡大学のアジア・ブリッジ・プログラムと、鈴与グループと、連携できるようなことはありますでしょうか。


鈴木 それは多くあると思います。インターンシップや、卒業生に働いてもらうことなど、いろいろなかたちで連携できると思います。

伊東 外国人留学生に日本でのインターンシップと、日本人の学生に海外に行かせるインターンシップ、その両方をやりたいので、実はアジア・ブリッジ・プログラムは日本人学生からもプログラムへの参加を募っています。
全学共通のプログラムで教育すると同時に、海外でのインターンシップをやろうと考えています。それも、上の学年になってからではなく、2年生くらいに行かせたい。まだ専門の勉強も進んでいませんので、現場のラインに並んで、現地の従業員と一緒に何かを組み立てるということでも構わなく、とにかく海外に行って、外国人の中で暮らすという経験をさせたいのです。


伊藤学長と野田氏
















鈴木 それはすごく良いことだと思います。当社も、新入社員全員を海外研修に行かせています。

伊東 学生も静岡企業の海外ブランチといえば、少し安心して行けるのではないでしょうか。そういうところで、是非、ご協力をお願いします。


[静岡大学への期待]


伊東 最後に、今後の静岡大学に期待をしていただいているところをお聞きしたいのですが。


鈴木 静岡県の県民から「うちの大学」と言われるくらいに地域に開かれて必要とされる大学になってほしいと思います。
もう一つは、せっかく「地方創生」ということが言われている中ですから、静岡大学が地域のオピニオンリーダーになって、町づくりなどにもっと提案や提言をなさったらいいと思います。市や県にたくさんいろいろな委員会がありますが、中央から有識者を呼ぶだけでなく、もっと地域の大学の先生方にこのような委員会に参加していただいて、意見を言っていただくことが必要ではないかという気がします。


伊東 そうですね、先生方がそういう委員会を通じて交流を深めていけば、いろいろな分野で地域のオピニオンリーダーになっていけるのではないかという気がします。


野田 文部科学省の国立大学改革に向けた方針「三つの枠組み」では国立大学を分類し、静岡大学は、分類的には少し財源が削られてくるような立場にあるという実情があります。大学経営という視点からは、どのようにしていくべきでしょうか。


鈴木 日本の大学が世界のランキングのなかで上位を取り返すためには、予算もある程度、重点的に配分していかないといけないというところはあると思います。
 ただ大学も、旧制に戻れば、それぞれミッションが違ったわけですから、静岡大学のいまのポジションでのミッションというのは、東京大学や京都大学とは違ったものがあった方がいいと思います。そのために予算を削られるなら、それは地域から集めればいいと思います。地域に必要な大学であれば、県や市町村や地元企業が放っておくわけにはいかないだろうと思います。国際的に競争のなかで生き抜いて勝ち残る大学や、独自の専門性を高めていく大学がありますが、他の大学は地域と一緒にやっていくしかないと思います。
 もっと地域と近い関係になっていき、地域に密着していれば、すごく強いのではないでしょうか。それぞれの地域の大学が、地域的な特色を活かして生きていくことが大事だと思います。


野田 逆に言えば、静岡大学などはそこが強みになるのでしょう。鈴木会長のおっしゃるように、地域に根差す大学は大いに生き残るというか、勝ち残る道がありますね。


鈴木 あると思います。ただ、一番の問題は、大学の先生方が、それだけの危機感や問題意識を持っているかどうかだと思います。存続できないことは起こり得ないだろう、このままなんとかなるだろうと思っていたら、それはたぶん違います。これからの世の中は、想定外のことが起こりうる時代であり、危機感を持って取り組みませんと、学校経営も例外ではないと思います。


野田 地域と連携する中で、大学の存在・役割はとても重要であることを、あらためてお聞かせいただけますでしょうか。


鈴木 静岡大学は地域と一緒に生きていくしか「すべ」はないと思います。地域のニーズに合った内容でどうやって運営していくかを考え、地域を助け、足りない部分はカバーしていかなければならないと思います。
静岡県は、浜松に大きな会社が多いですし、静岡にも頑張っている会社が沢山あります。静岡大学が地域と一緒に生きていける可能性は十二分にあると期待しています。


伊東 そのような意味において、今年スタートした地域創造学環の方向性は間違っていなかったと思います。


鈴木 そう思い期待しています。地域の未来の人財を育てるために、そして静岡の輝ける未来のために是非頑張ってください。


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