【第150回 2021.8.6】

同窓会員からみた「大学再編」

投稿者:柴田 俊二(昭和43年 農学部農芸化学科卒)

 大学を取り巻く環境は、デジタル化やグローバル化の進展、Society5.0の到来、そして少子化が進むなど大きく変化してきている。文科省の掲げる方針に沿い全国の国立大学が再編問題に直面している。近隣では既に名古屋大学と岐阜大学が法人統合し、アンブレラ方式による1法人2大学がスタートしている。

 静岡大の大学分離・統合再編問題が浮上後、農学部同窓会では役員会等で意見交換を続け、同窓会臨時総会において「大学の分離・統合再編案に反対する決議」を採択し、同窓会としての意思表示を大学側に提出した。

 大学側が示した再編案は、静岡大学を東西キャンパスに分離し、静岡地区大学と浜松医科大学・静大工学部・情報学部を加えた浜松地区大学の2大学に再編するというもの。大学の分離・統合による再編は、70年の歴史ある総合大学としての静岡大学ブランドが消えること、小さな大学になり全国地位が大幅に低下し大学の質の低下が懸念されること、東西に分割された地区大学のメリットが全く見えないこと等、魅力ある大学からほど遠い大学になってしまうのではないかと危惧される。また県全体の一体性・連携性が失われ、学部横断的な人的交流が薄くなり人的財産の形成機会が少なくなるなど大きな損失でもある。地方大学は、地域密着型の研究体制や教育プログラムにより人材育成、地域産業の活性化を図ることが目的であるが、十分に機能が果たせなくなるのではないか。

 Society5.0時代を迎える時に、学部融合、場合によれば他大学との連携が求められる時代だからこそ大学を分離するのではなく大きな総合大学を目指すべきではないか。

 大学の法人統合は、コスト削減により生み出される新たな予算として貴重であり、社会の背景からも必然かつ合理性が見込まれることから賛成できるが、大学再編は大学の将来像を充分見据えた上で慎重な姿勢が必要だと私は思う。

 

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