ご挨拶

1.機関の現状
 本学は、地域に根ざした研究等を掲げ、光・電子・情報分野及び生命・環境科学を重点研究領域とし研究活動を展開している。研究戦略の策定・実施は、学長のリ−ダ−シップの下、学長直轄の組織において、決定・推進している。平成18年度には、ポテンシャルの高い研究者を部局横断的に結集・組織化することにより、分野融合型の新大学院「創造科学技術大学院」を設置した。
 光・電子・情報分野では、知的クラスター創成事業、21世紀COEプログラムに採択され、それぞれ「全国第三位」、5段階評価の最上位「Aランク」の評価を得ている。知的クラスター創成事業については第U期の事業に継続して採択された。情報分野では、「産業界からのニーズに対する貢献度調査」(経産省)でA+評価を、バイオ・環境・食品分野でもA+評価を、環境分野等の論文被引用数も、2004年度4位、2005年度1位(朝日新聞社調査)の評価を受けている。
 本学は、JSPS特別研究員や外部資金による研究員を数多く受け入れ、国内外の大学等に優秀な人材を輩出している。若手研究者のための、学長裁量経費による研究費支援制度、外国雑誌への投稿支援、国際シンポジウムの開催等、若手研究者を積極的に支援している。
 任期制については、電子工学研究所、農学部、工学部、情報学部等で導入しているが、特に、電子工学研究所では、所長を含む全職位に任期制を適用している。

2.人材養成システム改革・若手研究者育成の構想
 若手研究者が一定期間自立的に研究に集中できる独立した人材システム改革特区を創造科学技術大学院・電子工学研究所に設ける。特区では、テニュア・トラック制度を中心とする人材システム改革を行い、若手研究者が自立的に研究に集中できる研究環境(資源の優先配分、研究支援体制の充実、十分な研究スペースの確保、研究以外の負担軽減等)を整備し、高い見地からの指導・支援の下、優れた研究成果を上げつつ研究能力の向上を図る。同時に、将来の指導者として必要な、リーダ−シップ、マネージメント能力、教育能力等の涵養を図る。
 評価基準を満たせば全員テニュア取得可能となるよう十分な数のポストを全学的に用意する。採用審査等は、学外の国際的な専門家を含む委員会を中心に行い、透明性、公平・公正性の高い人事制度を整備・確立する。3年目中間評価の結果を踏まえ、制度・運用面の改善を図った上で4年目以降、学長裁量ポストを活用して自主的取組を開始し、将来的に、本制度を全学に拡大する。テニュア取得後も、研究教育能力の継続的な向上のため、再審査制度・サバティカル制度を導入する。

3.3年目における具体的な目標  学外の国際的な専門家を含むテニュア審査委員会による年度毎の評価に加え、3年目に中間評価(研究の進捗状況、競争的資金の獲得状況及び学生指導等研究室の運営状況等の評価)を実施し、その結果をもとに研究戦略・研究室の運営に関するアドバイス等を行う。
 また、3年目に各審査基準(テニュア・トラック採用審査、年度毎の業績評価、中間評価、テニュア採用審査含む)及び制度全般について、それまでの経験をもとに人材システム検討委員会(学外委員を含む)を中心にPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルの一環として評価を行い、制度面・運用面の改善を図る。
 さらに、実施期間終了後のテニュア・トラック制度の全学への導入に向けて、4年目以降、テニュア・トラック制度について、学長裁量ポストを活用した自主的取組として、初年時導入部局以外の一部部局で試行的に導入する。

4.実施期間終了時における具体的な目標  テニュア審査委員会は、テニュア・トラック教員の最終評価を行い、その結果を踏まえて、人材システム改革推進本部においてテニュアとして採用する者を決定する。テニュア・トラック教員全員がテニュア・ポスト移行の際の評価基準を満たした場合の移行率が100%となるよう、十分な数のポストを用意する。
 そして、テニュア・トラック制度を中心とする人材養成システム改革について、創造科学技術大学院、電子工学研究所、一部試行部局の枠を超え、全学に順次導入する。

5.実施期間終了後の取組
 実施期間終了後は、研究人材採用の仕組みとしてテニュア・トラック制度を全学に導入する。導入するテニュア・トラック制度は中間評価、最終評価を経て制度面・運用面で改善されたものとする。なお、スタートアップ資金を含む研究資金については、学長裁量経費から手当てすることにより、テニュア・トラック制度の全学への導入を積極的に推進していく。

6.期待される波及効果
 本学は、第一期中期計画の下、光・電子・情報分野及び生命・環境科学を重点研究領域として、これら分野について、研究の推進、世界的研究拠点の形成を図っていくこととしている。その実現に不可欠な若手研究人材の発掘・育成に向けた大きな人材システム改革であるテニュア・トラック制度を導入することは、本学の研究ポテンシャルの向上、研究成果の地域への還元、優秀な研究人材の地域への供給等を通し、地域の産業振興、研究・産業人材育成に大きく貢献するものである。