2012/10/18

■ 東海地震に備えた静岡県における防災への貢献(特に防災に係るもののみ)

3.東海地震に備えて本学として進めるべき教育研究

詳細内容紹介

3-1.防災実務者養成(自治体、企業における防災担当者の実践的応用力養成)
【氏名・役職・所属】 増田俊明・教授・理学部・防災総合センター(センター長)
【内容】 自治体や企業等で防災の実務に従事している「静岡県防災士」等の実務者を対象に、災害発生後の「危機管理ノウハウ」にとどまらず、災害の事前予防を目指し、地域の災害特性を理解し、実践的応用力を身につけた人材の育成プログラムを実施しています。具体的には、最新の災害科学基礎知識修得を目的とする講義、現地踏査、文献収集などから得られた各種データの読解・処理作業などの実習・演習、指導教員の個別指導によるセミナーを通じ、災害科学的基礎を背景とした実践的応用力を養います。
【現状】 平成23年3月に第1期生を受け入れ、養成プログラムを開始しました。
平成24年3月に第1期修了生15名をふじのくに防災フェローとして静岡県知事認証しました。
平成24年3月から第2期生の養成プログラムが開講中です。
第3期生は2012年11月に募集要項を公開し,出願期間は2012年12月28日〜2013年1月14日とする予定です。
【メッセージ】 この人材養成プログラムは、静岡県の防災人材育成構想の一端を担うもので、全国でも初めての取組です。
詳細はふじのくに防災フェロー養成講座のウェブページをご覧下さい
http://sakuya.ed.shizuoka.ac.jp/sbosai/fellow/index.html 
このプログラムでは単なる災害発生時のノウハウ修得は目的としていません。災害科学情報を読み解くための自然科学的素養(高校程度の数学、物理)を備え、実際の防災関連業務にどのように活かしていくかという意欲のある方の応募をお待ちしております。また、受講希望者が所属する自治体や事業所の皆さまに、ご理解とご協力を賜りたいのでよろしくお願いします。

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3-2.静岡大学防災マイスター
【氏名・役職・所属】 増田俊明・教授・理学部・防災総合センター(センター長)
【内容】 東海地震の想定域にある静岡大学では、これまでにも、学生(学部生)の防災力向上のために共通科目として「地震防災」「新入生セミナー(防災)」等を提供してきましたが、十分体系的なものにはなっていませんでした。そこで、一定レベルの防災知識を備えた学生を養成して社会に送り出すために、防災マイスター資格制度を立ち上げました。
静岡県でとりわけ危惧される東海地震をはじめとする自然災害に対する科学的な知識を有し、それに基づいて災害時に自己や他者の生命と災害後の生活を守る上で有用な最低限の防災知識・スキルを獲得することを目標としています。
【現状】 今年度、将来、小中高等学校の教員となり、生徒への防災知識の普及を期待できる可能性の高い教育学部生に対する教育から実施しています。
【メッセージ】 詳細はウェブページをご覧下さい。
http://sakuya.ed.shizuoka.ac.jp/sbosai/menu03.html 

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3-3.過去の津波解析(静岡平野の堆積物ボーリング調査)
【氏名・役職・所属】 北村晃寿・准教授・理学部(防災総合センター併任)
【内容】 1854年の安政東海地震などの静岡県を襲った過去の津波の痕跡を求めて、静岡平野の海岸低地で堆積物のボーリング調査・解析を行っています。
【現状】 静岡市駿河区大谷地区の2か所で長さ8mのボーリングコアを掘削しました。現在、それらのコア堆積物の解析を行っており、今年度7月末に結果を公表する予定です。
【メッセージ】 静岡平野の地盤の科学的調査は、1980年代以降、全く行われていません。そのため、静岡県の公表している推定液状化危険度マップは、隣県に比べると、精度は低い状況にあります。一方、静岡県内における遡上した津波堆積物の分布調査は県西部では行われているものの、静岡市周辺は皆無です。本調査を通じて、静岡県における津波・液状化対策を含めた防災計画の修正の議論に資するよう調査を精力的に実施したいと考えています。

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3-4.由比の地すべり調査(東海道の要の危険度を調査)
【氏名・役職・所属】 千木良雅弘客員教授(防災総合センター)、里村幹夫・教授・理学部
【内容】 東海道本線、東名高速道路、国道一号線が集中する東海道の要である静岡市清水区由比地区において、地すべりのメカニズム解明、危険度の調査、地すべりが発生した際の影響等を調べます。更には深層崩壊の危険度についても併せて検討していきます。
【現状】 GPSを用いて土砂の動きについて調査を開始しました。本年度中には表層地すべりの様子をとりまとめるべく実施中です。
【メッセージ】 東海地震発生時に東海道の要である由比地区において地すべりが発生した場合、東京方面との交通が遮断されその影響は極めて大きいと思われます。あらかじめGPSを用いた計測等により状況を的確に把握することに努めたいと思います。

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3-5.静岡県中西部の稠密な地殻変動観測(東京大学地震研究所との共同研究)
【氏名・役職・所属】 里村幹夫・教授・理学部
【内容】 静岡県中西部の約50校の小学校、中学校の校舎の屋上にGPSアンテナを設置して、静岡県中西部の地殻変動の連続観測を行なっています。これは東海地震予測のために始めたものですが、東北地方太平洋沖地震によるこの地域の地殻変動パターンの変化などが捉えられています。
【現状】 2003年から継続して観測中。東京大学地震研究所の共同研究として実施しています。
【メッセージ】 静岡県内の多くの小学校、中学校に協力いただいて、ずっと観測を続けています。GPSでは無理だろうといわれていた短期スロースリップによる獄わずかな変動を捉えるなど、大きな成果が上がっています。

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3-6.巴川水系の津波解析(東北地方太平洋沖地震による静岡への津波解析)
【氏名・役職・所属】 原田賢治・准教授・防災総合センター
【内容】 東北地方太平洋沖地震発生に伴い、静岡県にも津波の影響がありました。特に静岡市中心部を流れる巴川において設置していた水位計のデータを解析し、津波の影響について解析し、将来の津波被害の低減につなげていきます。
【現状】 現在、水位計のデータを解析中ですが、地震発生後から数日間にわたって通常では見られない水位変化があったことがわかりました。
【メッセージ】 津波は低い土地、川を遡り護岸が低いところから周囲の土地へ押し寄せます。津波の挙動を解析し、対策に資するよう解析を精力的に進めていきたいと思います。

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3-7.津波のシミュレーション
【氏名・役職・所属】 原田賢治・准教授・防災総合センター
【内容】 自治体の作る防災計画に資するように、東海地震発生時に、静岡県にどのような津波が押し寄せる可能性があるのか、シミュレーションを行います。
【現状】 東北地方太平洋沖地震を踏まえて、津波の原因となる東海地震について想定の再検討を行っています。
【メッセージ】 静岡県は、太平洋に面する海岸距離が長く、標高が低い部分が多いことから津波に対する備えは極めて重要です。どのような津波が押し寄せる可能性があるのか、シミュレーションをわかりやすい形で示すことが出来るよう研究をしています。

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3-8.富士川から南アルプスまでの地下構造調査(第2東名へのアクセスの健全性評価等)
【氏名・役職・所属】 狩野謙一・教授・理学部、伊藤谷生・客員教授(防災総合センター)
【内容】 表題地域の測線に沿って地震計を多数配置し、人工的に発生させた地震を観測することにより地下構造を詳細に調べようとしています。
【現状】 目下準備中で、今年度中には富士川付近から観測を始める予定です。
【メッセージ】 南アルプス地域は、日本でも地殻変動が激しい地域の一つです。その地下構造がどのようになっているのかを調べることで、地殻変動の様子を予測する手がかりをつかもうとしています。

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3-9.伊東付近の火山ガス調査(伊東市沖の海底火山噴火観測)
【氏名・役職・所属】 野津憲治・客員教授・防災総合センター、藤井直之・特任教授・(防災総合センター)
【内容】 伊豆半島、特に伊東付近の地下の火山活動の様子を調べるために、火山ガスの調査を行います。
【現状】 予察調査を今年度中に行うため準備中です。
【メッセージ】 伊東付近は火山活動に常に注意が必要な地域です。今後の火山活動の活発化に備えて、兆候や活動規模を把握するため火山ガスの調査を行います。

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3-10.津波災害等に伴って発生する人的被害の発生要因に関する調査研究
【氏名・役職・所属】 牛山素行・准教授・防災総合センター副センター長
【内容】 自治体における今後の防災計画見直しに資するように、津波災害、豪雨災害を対象として、人的被害(死者・行方不明者)がどのように発生するのかについて、実証的な研究を重ねています。東日本大震災以前の災害については、既に下のような研究成果をとりまとめ、公開しています。
  • 防災情報による津波災害の人的被害軽減に関する実証的研究
  • 2004年台風23号による人的被害の特徴
  • 平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震による死者・行方不明者の特徴
  • 2004〜2009年の豪雨災害による死者・行方不明者の特徴
【現状】 現在、東日本大震災による人的被害の発生状況に関して現地調査や資料整理を進めており、追加で知見を加えつつあります。また、その成果の一部については既にとりまとめ、ブログ上で先行して公開しています。
http://sbosai.cocolog-nifty.com/blog/ 
【メッセージ】 防災計画等の見直しに際し、人的被害がどのように発生するか検証することは極めて重要です。自治体における防災計画見直しにも資するよう東日本大震災による人的被害についても研究を進めていきます。

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3-11.津波災害時の避難行動に関する調査研究
【氏名・役職・所属】 牛山素行・准教授・防災総合センター副センター長
【内容】 津波災害時の住民の避難行動、防災意識に関して調査研究を実施しています。東日本大震災以前の災害については、既に以下のような研究成果をとりまとめ、公開しています。
  • 地形認知と津波リスク認知の関係について
  • 2010年2月28日チリ地震津波の際の避難行動に関する調査速報
  • 2010年2月28日のチリ地震津波に関するアンケート 報告書
  • 岩手県陸前高田市気仙町地区における防災意識に関する調査
  • 2003年5月26日「三陸南地震」時の住民と防災情報(基礎資料)
【現状】 現在、東日本大震災による津波災害時の住民の避難行動、防災意識に関して現地調査や資料整理を進めており、追加で知見を加えつつあります。また、その成果の一部については既にとりまとめ、ブログ上で先行して公開しています。
http://sbosai.cocolog-nifty.com/blog/ 
【メッセージ】 防災計画等の見直しに際し、津波発生時に、どのような防災意識のもと住民がどのように避難したのか検証することは極めて重要です。自治体の防災計画見直しにも資するよう東日本大震災による津波についても研究を進めていきます。

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3-12.津波防災を考慮した住民参加型地域防災ワークショップの方法論及び効果に関する調査研究
【氏名・役職・所属】 牛山素行・准教授・防災総合センター副センター長
【内容】 住民参加で地域の防災について考える取り組みである「防災ワークショップ」は、その開催の仕方によって、得られる効果は大きく異なることがわかっています。そこで、より効果的に実施するために、その実施上の方法論や効果について調査研究を重ねています。現在までに、東日本大震災被災地を中心とした以下のような成果をとりまとめ、公開しています。
  • 非居住者を対象とした防災ワークショップの参加者に及ぼす効果の分析
  • 課題探索型地域防災ワークショップの試行
  • 津波避難場所の観察にもとづく地域防災ワークショップ効果検証の試み
その他、地域型防災マップ作成ワークショップに関する基礎資料
【現状】 これら成果が活かされるよう東日本大震災被災地自治体に広報しています。また、今後、静岡県内でも同様な取り組みを試行的に行うことを検討中です。
【メッセージ】 防災ワークショップは、その地域の実情、これまでにお住まいの方々が得ている情報等を分析し、最も効果的に実施する必要があります。東日本大震災被災地を対象とした調査結果を活かすべく、被災地自治体に貢献していきたいと思います。また、今後、同様の調査を、静岡県内を中心に行うことにより、静岡県内自治体における同種のワークショップ開催にも資するよう調査を進めていきます。

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(原子力発電所)

3-13.福島第一原子力発電所の事故調査、解析
【氏名・役職・所属】 奥野健二・教授・理学部/附属放射科学研究施設長
【内容】 福島第一原子力発電所の事故について調査を行います。
【現状】 現在行われている事故対応状況を精査しているところです。既に、サイエンスカフェにおいて「放射能の基礎知識」という題目において、一般公衆向けに講演会を実施しています。また、5月26日には原子力人材育成プログラムの講演会において、京都大学原子炉実験所教授の山名教授に福島第一の事故に関連した講演を開催しました。
【メッセージ】 事故は、一面だけを捉えたり、断片的なものだけにとらわれ過ぎたりしては、物事の本質を見失う恐れがあります。時系列に従い正確に起きたことや対応について把握することが必要です。現在まだ事故対応が行われていることから、事故対応の妨げにならないよう留意し、対応状況を精査、落ち着いた段階で関連諸機関、自治体、中部電力等からの情報を集約し、静岡県民に浜岡原子力発電所との関連でわかり易く説明できるよう努力していきます。

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