FM.Hiゆうラジ!Radio魂内「静大スタイル」に本学第三期若手重点研究者出演企画 第9回目は、情報学部 木谷 友哉(きたに ともや)准教授が出演しました

2017/11/22
ニュース

 FM.Hi「ゆうラジ!Radio魂(76.9MH)」内の「静大スタイル」のコーナーは、本学の公認サークル団体「CUE-FM放送研究会」が司会を務め、毎週木曜日夕方5時23分から5時53分まで放送している番組です。この番組は、私たちが学ぶ静岡大学の先生をより身近に!をコンセプトに第3期若手重点研究者に選定された教員に隔月で出演いただいています。
 今回のゲストは、情報学部 情報科学科 木谷 友哉(きたに ともや)准教授で、11月16日(木)に生出演いただきました。

 木谷先生の専門は、「情報科学」。奈良県出身です。今回は、先生の研究内容を中心にお話いただきました。

●先生の専攻について教えてください
 専攻は、情報科学です。博士号を得たときの専攻は情報ネットワーク学になります。具体的にはコンピュータと通信ネットワークを使って、世の中のデータを収集したり、それを処理して活用したり、生活を豊かにする技術やサービスを研究しています。
 学部や修士の大学院生のときは、効率よくデータを処理するにはどうしたらいいか、効率よくデータを運ぶにはどうしたらいいかということについて取り組んでいました。例えば、大量のデータを短時間で処理するときにはCPUだけで処理しないで、専用ハードウェアとのハイブリッドで処理するとか、大勢が同時にデータを通信しようとしたときに如何にぶつからないようにするとか。具体的なアプリケーションやサービスを考えると言うよりも計算そのものやインフラに関する研究を行っていました。
 博士課程以降は、もっとそれらを活用した具体的なサービスに着目するようになりました。具体的には高度交通システムという情報科学技術で交通を円滑に効率的にする研究です。わかりやすい例で言えば、高性能なカーナビゲーションシステムや今のGoogleMapの渋滞情報収集のような研究です。

●具体的な研究の内容を教えてください
 研究テーマは大きく2つです。
1つ目は、自動二輪車、つまりバイクを対象とした高度交通システムの研究です。たくさんのバイクに運動センサや位置センサをつけて情報を収集し、人間の運転操作や挙動の解析をしたり、副次的に得られる情報から道路のでこぼこを発見したりする研究を行っています。
 2つ目は、高精度衛星測位です。いわゆるGPS/GNSSを使ってセンチメートル精度を実現する技術を利用した研究開発です。これは測量の技術を一般にも使えるようにしているものです。既に浜松キャンパスに設備を用意して、これを使えば浜松市内周辺の人たちがセンチメートル精度で位置情報を取れるような環境を整えてあります。
 静岡大学に8年前に赴任してからは、しばらく自動車を対象にした高度交通システムの研究をしていました。各車両の位置をリアルタイムに収集して渋滞を検出したり、通過にかかる時間を計算したり、渋滞のない経路を案内する研究や、歩行者との事故を避けるために道路の近くに居る歩行者の位置をセンシングして自動車の運転手に知らせるような研究です。
 5年前ぐらいに、浜松ならではと言うこともあり、対象を自動二輪車の研究に絞って、二輪車向けの高度交通システムの研究を始めました。実は自動二輪車について情報系の研究者はほとんどいません。最近はセンサ類が安価に手軽に入るようになってきましたし、これらをつかえば、いままで取れなかったデータを世の中からたくさん取り出せるようになってきました。そこで、機械工学系の先生方や二輪車産業界のエンジニアの方々とは違った方面から研究を進めています。
 二輪車の良さというと四輪車よりは小回りが利いたり、四輪車が行けないような場所に行けたり、道路でも車線の中での自由度が高かったりという点が挙げられます。二輪車からデータを取得して、それを活かそうとすると、どうしても今までのGPSの精度では十分とはいえません。そこで、次世代高精度衛星測位技術を用いて、センチメートル精度を実現する技術についても取り組んでいます。

●先生の研究のきっかけを教えてください
 元々、乗り物が好きで、高度交通システムの研究をしていましたが、ここは浜松ですし、どうせなら地元産業界と一緒にできることをしたい、いや、それ以前にバイクが好きだからバイクの研究をしようと思ったのがきっかけです。浜松キャンパスの教員になっていなかったらこの研究は始めなかったかもしれません。

●先生の研究が達成されると、どんなことがわかりますか?
 二輪車は四輪車のような乗り物の一種というよりも、身体の延長のように考えています。曲がるときには車体を傾けますし、より生物に近い感じですよね。人間の動作をセンシングするのは難しいです。それは人間の運動が多岐にわたっているからです。ただこういう身体延長型デバイスの運転操作というところに焦点を当てれば、人間のそういう運動を解明できるようなデータをたくさん集めて、人間はどういう風に身体を動かしているのか、プロのレーサと一般の人はどう違うのか、上手な運転の人と事故を起しやすい人はどう違うのかとか明らかにしたいですね。

●先生の研究は実生活のどのようなことに役に立ちますか?
 例えば東南アジアや南アジアの新興国ではバイクがメインの交通手段です。また先進国では四輪車中心で渋滞が問題になっています。今後、新興国も豊かになるとともに四輪車中心になっていけば交通問題はさらに深刻になるでしょう。そこを適材適所で二輪車と四輪車が上手に使い分けることができれば、交通の適正化が図れますし、環境負荷もトータルで小さくなります。ただ、高度交通システムについて、四輪車は自動ブレーキとかテレマティクスとかいろいろ進化しているのですが、二輪車はまだそこまで行っていませんから、やっぱり二輪車は安く趣味の乗り物のようになってしまうと、四輪車への移行を止められないかもしれません。
 研究を進めることで二輪車または二輪車から進化したパーソナルモビリティが交通社会で活躍するようにして、渋滞や事故、道路インフラ維持費用の低減など、交通問題を解決していけると信じています。

●静岡大学で担当されている授業について教えてください
 専門科目では、ディジタル信号処理やコンピュータシミュレーションを教えています。また、文系入試で入ってきた情報社会学科の学生のプログラミングの担当もしています。
 あとは、創造的プログラミングという、何でもありのプログラミングの講義を開講し、やる気のある人ならだれでもOKで、古典的な技術から最新の技術、ハードウェアやフィジカルセンサ、VR、3Dプリンタを使った、なんでもありのプログラミング作品制作の講義も行っています。

●ゼミについて、また、木谷研究室の雰囲気や学生の様子も教えてください
 研究室では、前述したバイクセンシングと高精度衛星測位の2つのテーマについて学生と取り組んでいます。手や身体を動かすことが好きな学生が集まってくれていると思います。みんな体育会系というわけではなく、おとなしい雰囲気の学生も多いですが、芯はしっかりしている学生が集まってくれていると思います。
 実際に、はままつフラワーパークに小型セグウェイを持っていって実験したり、浜松の会社と一緒に実験イベントを行ったり、テクノフェスタでも研究室自作で次世代高精度衛星測位を使った宝探しゲームを企画して来場した子供達と楽しんだりしています。
 研究室のモットーは、「よく学び、よく遊べ」「学生時代にいっぱい失敗しておこう」という感じです。学生さんがだんだん自発的に研究生活を楽しんできてくれるようになりました。

●高校生へのメッセージとして、静岡大学にはどんな学生に来てもらいたいですか?
 とりあえずやってみようかなと思ってくれる学生さんが良いですね。幸い情報学部にはそういう素直な学生さんが多いような気がします。大きな都市部にある大学ではなく、地方大学ですので良い意味で地域の最も頼りにされる大学であると思います。そして静岡県、とくに浜松市には世界に誇る産業もありますので、都市部にある大学にはないメリットもあります。学内で研究するだけではなく、地元産業界とコラボレーションして世界を変えるようなものを社会実装して試すこともしやすいと思いますので、そういう頭も手も動くような学生さんに来てもらえるといいのではないかと思います。

●最後に、リクエスト曲は何かありますか?
 ウルフルズの「バンザイ~好きでよかった~」をお願いします。

バイクインフォマティクスについて説明する木谷准教授

バイクインフォマティクスについて説明する木谷准教授

生放送の様子

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