順応を利用したVRバイクシミュレータ酔いの低減法: 1時間休んで、シミュレータ体験の記憶が 脳に定着するのを待つ

2024/09/22
プレスリリース

情報学部の 宮崎 真 研究室(筆頭著者:加瀬川智皓・修士2年)は、ヤマハ発動機(三木将行)、慶應義塾大学(板口典弘准教授)との共同研究により、1時間の休憩を挟んで、もう一度シミュレータを体験すれば、シミュレータ酔いを低減できることを発見しました。

ドライブシミュレータを利用すると、しばしば酔いが生じます。この酔いは、シミュレータを繰り返し体験して慣れると低減します。この慣れのことを「順応」と呼びます。
従来の研究報告では、シミュレータ体験間に1日以上の間隔を空けていました。
もし、より短い時間間隔で酔いを低減することができれば、手軽で効果的なシミュレータ酔いの低減手法として実用できることが期待されます。
以上の着想に基づき、VRバイクシミュレータを用いた実験を行った結果、シミュレータ体験間に1時間の休憩を取れば酔いを低減できることが明らかとなりました。

一方、6分間の休憩や酔いが無くなるまで休憩を取っただけでは、酔いは低減しませんでした。
このことから、順応を利用して酔いを低減させるためには、VRシミュレータ体験の記憶が一定の時間をかけて脳に定着するのを待つ必要があることも示唆されました。

本成果は、VRシミュレータの利用に伴う酔いの問題の解決だけでなく、自動車や船舶といった乗り物酔い、ゲームや教育コンテンツなどの幅広いVRシステムの利用に伴う映像酔いの問題の解決にも応用できることが期待されます。

本研究成果は、英国のNature Publishing Groupの発行するオンライン科学ジャーナル「Scientific Reports」に2024年9月22日付(日本時間18時)に掲載されました。

【ポイント】

・順応(慣れ)により、シミュレータ酔いを低減させることができる

・従来の研究では、シミュレータ体験の間に1日以上の時間間隔を空けていた

・もし、1日以内の短い時間間隔で順応が生じれば、手軽で効果的な酔いの低減手法に繋がる

・本研究は、VRシミュレータ体験間に1時間の休憩を挟むことで、酔いを低減できることを実証(6分の休憩では、酔いは低減せず、むしろ増大)

・酔いを低減させるには、主観的な酔いが回復しても一定以上の休憩をとる必要があることも確認

・順応を利用して酔いを低減させるためには、一定以上の時間をおいて、VRシミュレータ体験の記憶が脳に定着するのを待つ必要があることを示唆

・本成果は、シミュレータ酔いの低減に留まらず、乗り物やVRの利用に関わる幅広い社会応用も期待

実験の方法と結果の概要 実験参加者はバイク型の筐体の搭乗した状態でヘッドマウントディスプレイを装着し (A),一人称視点からのバイク走行験風景 (B) を体験した.2回のシミュレータ体験のあいだに1時間の休憩をとったグループでは, 2回目のシミュレータ体験による酔いの程度(FMS)が1回目よりも低減した (C).

実験の方法と結果の概要
実験参加者はバイク型の筐体の搭乗した状態でヘッドマウントディスプレイを装着し (A),一人称視点からのバイク走行験風景 (B) を体験した.2回のシミュレータ体験のあいだに1時間の休憩をとったグループでは, 2回目のシミュレータ体験による酔いの程度(FMS)が1回目よりも低減した (C).

【論文情報】

掲載誌:Scientific Reports

出版元:Nature Publishing Group(英国)

論文タイトル:
Effects of within-day intervals on adaptation to visually induced motion sickness in a virtual-reality motorcycling simulator 
(VR自動二輪シミュレータにおける映像酔いへの日内順応の影響)

著者:
・加瀬川 智皓(静岡大学大学院)
・板口 典弘(慶應義塾大学)
・山脇 ユミ(静岡大学大学院・2024年3月修了)
・三木 将行(ヤマハ発動機)
・林 真光(静岡大学大学院・2022年3月修了)
・宮崎 真(静岡大学)

論文URL:https://doi.org/10.1038/s41598-024-71526-9

問い合わせ先:

静岡大学情報学部情報科学科
宮崎 真
TEL:053-478-1450
E-mail:brain[at]inf.shizuoka.ac.jp
※[at]を@に変更してご利用ください。

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