ツノゼミの多様な「ツノ」における種間相同点の整理 -種ごとに異なるツノ形態はどことどこが対応するの?-
静岡大学 創造科学技術大学院 バイオサイエンス専攻 後藤 寛貴 助教の研究グループは、ツノゼミ類(半翅目ツノゼミ科)の昆虫の複雑な前胸(ツノ)において、種間で共通してみられる構造(=相同点)を明らかにしました。
【研究のポイント】
・形態が著しく珍奇であるツノゼミ類の昆虫にて、形態比較により種間で対応する構造を発見
・ツノの各領域がどのように改変され、それぞれのツノ形態となったのかの仮説の提示
・本研究の成果により、ツノゼミのツノ形態の記載・比較の精度向上が期待できる
ツノゼミの突出した前胸(ツノ)の形は著しく多様であることが知られています。
写真集が出版されるほど多様で複雑であり、それぞれの種ごとのツノの、どこがどこと対応するのかが不明瞭であり、分類学的研究などの様々な研究に支障をきたしてきました。
そこで、本研究は、ツノゼミ類のツノ形態を種間で正しく比較するために、ツノゼミ科全体から13種を選定し、ツノ形態を比較することで種間で共通して保有しているツノ構造(相同点)を明らかにしました。
また得られた相同点を基にツノの各領域が進化の過程でどのように改変されたか説明するためのグラウンドプランの提示も行いました。
本研究ではツノゼミ科9亜科のうち5亜科でのみ解析を行っていますが、今回対象としなかった4亜科での観察や、発生過程も併せて考慮することで、より強固な相同点理論が構築できると考えられます。
また本研究で示された相同点理論は、ツノゼミ類において、あらゆる研究の基礎となる形態の正しい記載・比較という点に大きく寄与すると期待されます。
なお、本研究成果は、2025年2月25日に、チェコ科学アカデミーの発行する国際雑誌「European Journal of Entomology」に掲載されました。
研究者コメント|静岡大学理学部助教・後藤 寛貴(ごとう ひろき)
ツノゼミは写真集が出版されるくらい珍奇でユニークな形をしています。
この研究で、それらの形態は基本型の改変で理解できることが明らかになりました。
聞きなれない昆虫かと思いますが、その姿を見てみると驚くこと請け合いです。
【論文情報】
掲載誌名:European Journal of Entomology
論文タイトル:A general theory of the complex pronotum morphology of treehoppers in Smiliinae and its relatives (Insecta: Hemiptera: Membracidae) and its applicability to other subfamilies
著者:Kanta Sugiura, Tensho Terano, Haruhiko Adachi, Jin Hagiwara、 Keisuke Matsuda, Kenji Nishida, Paul Hanson, Shigeru Kondo, Yasuhiko Chikami, Hiroki Gotoh
DOI:10.14411/eje.2025.005
【研究助成】
科研費:
・新学術領域研究(研究領域提案型) 15H05864
細胞シートから3次元の分岐構造を作る原理の解明 代表:近藤 滋 分担:後藤 寛貴
・学術変革領域研究(A) 20H05944
『折り畳みと展開』による三次元形態形成機構の解明 代表:新美 輝幸 分担:後藤 寛貴
【用語説明】
相同点:
どの種のツノゼミのツノでも共通して保有していると考えられるツノ構造。
これを目印とすることでツノ形態をより正確に捉えることができる。
側方突起(Humeral angle):
ツノの前方腹側、眼と前翅の付け根の間から側方遠位方向に伸びる左右1対の突起。
中央管(Median carina):
ツノの背側正中線上を通る管状の構造。頭部と前胸の接続部から始まり、ツノ後端まで延びる。
今回この中央管の前方開始地点と後端の終着点も相同点とした。
関連リンク
問い合わせ先:
【研究に関すること】
静岡大学理学部
助教 後藤 寛貴
E-mail:goto.hiroki[at]shizuoka.ac.jp
【報道に関すること】
静岡大学 広報・基金課
TEL:054-238-5179
E-mail:koho_all[at]adb.shizuoka.ac.jp
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