FM.Hi ゆうラジ!Radio魂内「静大スタイル」に 教育学部 村井 大介(むらい だいすけ)先生が出演しました

2019/03/29
ニュース

 FM Hi「ゆうラジ!Radio魂(76.9MH)」内の「静大スタイル」のコーナーは、本学の公認サークル団体「CUE-FM放送研究会」が司会を務め、毎週木曜日夕方5時23分から5時53分まで放送している番組です。この番組は、私たちが学ぶ静岡大学の先生をより身近に!をコンセプトに教員に隔月で出演いただいています。
 今回のゲストは、教育学部 村井 大介(むらい だいすけ)先生で、3月14日(木)に生出演いただきました。
 村井先生の専門は「社会科教育」で、出身は東京都です。今回は、先生の研究内容から学生時代の話など、日頃大学では、聞くことのない内容にもお話いただきました。

【1.先生の専攻を教えてください】
 教育学の領域で社会科教育を専門に研究しています。皆さんが小学校・中学校で学習した「社会科」や、高等学校で学習した「公民科」「地理歴史科」を中心に研究し、教員を目指している学生が教育職員免許状を取得するのに必要な授業を担当しています。

【2.具体的な研究内容を教えてください】
 私が研究しているのは、社会科教師のライフストーリーです。ライフストーリーとは、ある人の人生についての語りです。
 皆さんは、印象に残っている社会科の授業はありますか?また、その授業を行った先生が、どのような経緯や願いから授業を行っていたのか、想像したことはありますか?
 社会科をなぜ教えるのか、どのような内容を教えるのかということは、文部科学省の告示する学習指導要領によって定められています。しかし、実際には、こうした学習指導要領の内容を理解しながら、学校の先生方は、ご自身のそれまでの歩みのなかで、目の前にいる一人ひとりの子どもの状況や、実社会での課題などを捉えて、自分自身の言葉で社会科を教える意義や方法を考えています。先生方がどのような願い(=希望)を持ちながら、どのようにその願いを実現しようとして、授業を実践してきたのかを、先生方へのインタビュー調査を通して明らかにする研究を行っています。


【3.研究におけるやりがい、また難しいところは何ですか】
 様々な先生方と出会い、インタビューでお話を伺うことは、常に新しい発見があり、とてもやりがいを感じています。特に、インタビュー後に、調査に協力してくださった先生が、自分自身にとっても新しい気付きがあったと言って下さることがあります。そのようなときに、私自身も救われた気持ちになり、一層、やりがいを感じることがあります。
 難しいところは、インタビューの内容を発表したり論文にまとめたりするときに、限られた時間や紙幅の中で、もともとのインタビューの語りの重さや魅力をどこまで伝えられるのかというところです。

【4.先生の研究が達成されると、どのようなことがわかるようになりますか】
 先生方がご自身の経験の中で、何を大切にしながら授業を行ってきたのか、どのような壁にぶつかり、どのような工夫をしながらそれを乗り越えてきたのかということを明らかにすることは、同じ願いや同じ課題を抱える先生方にとっても参考になるのではないかと考えています。
 先生方の授業づくりの少しでも役に立ち、社会科が好きな子が一人でも増えればと思います。社会科は、単なる暗記科目ではなく、平和で民主的な国家・社会を形成することにつながる重要な教科です。日常生活や毎日のニュースには、様々な社会的な課題が溢れています。こうした社会への課題意識を共有しながら、次代を担う子どもたちが豊かで持続可能な社会生活を送ることに少しでも寄与できればと思います。

【5.今の研究をするに至ったきっかけを教えてください】
 大学の学部生のときには、社会学を専攻していました。社会学では、「当たり前」を疑いながら社会をつきはなして捉えるような側面があるのですが、こした視点の延長から、私は、どのような人が如何に教員になるのかに関心を持ち、大学の教職科目(教育職員免許状を取得するために必要な授業科目)を取り始めました。ところが、教育実習での生徒とのやり取りに、とてもやりがいを感じ、次第に教育へとのめりこんでいきました。
 大学院では、教育学と社会学を探究しながら、高等学校で非常勤講師として「倫理」を担当する機会に恵まれました。ところが、いざ授業をすると、なかなかうまくいかず、途方にくれることが何度もありました。こうした自分自身の経験もあり、他の先生方は、どのような経緯から何を考えて授業を行っているのかに関心を持つようになり、教師のライフストーリーを研究するようになりました。

【6.先生は大学生の頃、どのような学生でしたか】
 自分で問いをたてながら探究する、という大学での学問の面白さに夢中になっていました。テレビもインターネットもない一人暮らしの生活が功を奏したのか、友人と社会学の読書会をしたり、他大学の学生と議論するような場にもよく出かけたりしていました。夏休みには、読みたかった本を数冊携えながら、青春18きっぷを使って、5日間で本州を一周するという一人旅もしました。

【7. 学校ではどのような授業をされていますか】
 教員を目指す教育学部の学生を対象に、社会科教育、生活科教育に関する授業と、社会学の授業を担当しています。教員を志望していることもあり、皆、とても真面目で熱心です。表現力が豊かで、ユーモアのある学生も多くいるように感じています。
 私の担当する授業では、グループでの探究活動を軸にしたものが比較的多いです。例えば、「社会学特論」という授業では、グループで、社会的な課題の解決に取り組むNPO団体を一つ取り上げて、インタビュー調査を行い、報告書を作成するという授業を行っています。この授業には、社会科の教員を目指す学生が多く受講しています。受講生が将来担当することになる社会科の授業では、社会の多様な事実を取り上げながら、課題の解決に取り組めるような、子どもの資質・能力を育むことが求められます。そのため、この授業では、社会で活躍する方へのインタビューを通して、社会への課題意識を共有し、目指すべき市民像をもつとともに、社会科の教材を作成する際に必要になる取材力・調査力を身に付けることをねらいにしています。知らない他者とつながるということは、とてもエネルギーのいることです。インタビューを依頼する段階では、なかなか踏み出せない学生も少なくありません。しかしながら、グループのメンバーで協力しながらインタビューを行うなかで、人とかかわることの大切さも含めて、地域の課題に取り組む方から多くの学びを得ています。

【8. 授業の際、気をつけていることはありますか】
 学習したことを振り返る時間を大切にしています。特に、「将来、どのような授業を行いたいのか」「どのような教師になりたいのか」といったことや、「そうした授業を行える教師になるにはどのような力が必要なのか」「その力を身に付けるために、今、何ができるのか」を問い続けることは、学び続ける教師になる上で、とても重要であると考えています。そのため、目指したい授業像や教師像とも結び付けながら、授業で学習したことが、現在、もしくは、将来の自分自身にとってどのような意義があるのかを、一人ひとりに考えてもらいながら授業をしています。

【9. どのようなゼミを開講していますか】
 まだ着任して1年半で、今年度、初めてゼミを開講しました。そのため、学生と一緒にゼミを創っている段階で、私の方がゼミ生から多くのことを学ばせてもらっているような感覚です。
 社会科教育及び社会学に関するゼミということで、二つのことをテーマにしています。一つは、現代社会における教師というテーマです。時代や社会の変化とともに、求められる教師像も変化しています。文献の講読を通して、学校教員のおかれている社会的状況を相対化するとともに、学生は2年生のうちから教育実習を経験しているため、自身の教育実習での経験も踏まえながら、教師に求められる力や学校文化の現状について、皆で議論しながら考えています。
 もう一つのテーマは、身近な地域を実際にフィールドワークして、新しい視点から教材化することです。今年は、『無印都市の社会学』という文献を読みながら、各自がラーメン屋やパーキングエリア、コンビニ、パワースポットなど、様々な場所をフィールドワークしてレポートしました。こうしたレポートでの知見をいかして、小学校や中学校でも使えそうな教材を作成しました。「バリアフリー」や「娯楽施設」、「ショッピングモール」など、これまでにないユニークな視点から、地域や社会を捉える教材を作成していたのが印象的でした。将来的には、ゼミで調査して作成した教材を、何かしらのかたちで社会へ発信できればと考えています。

【10. 最後に、静大生やリスナーの皆さんに一言】
 自分の声に耳を傾け、一人で考える時間も大切にしてください。
 今の学生の皆さんを見ていると、とても忙しそうです。授業だけではなく、部活動やアルバイト、ボランティア、就職活動をはじめとした将来の進路に関する活動、等々。常に友人とコミュニケーションをとり、スマートフォンを片時も離さず、インターネットから溢れる情報を追い続けています。こうしたなかで、自分の声に耳を傾け、一人で考える時間を持てているのか心配になることがあります。
 既成の価値観にとらわれずに、社会や自己の在り方を大きな視点からじっくりと見つめ直す時間があることが、学生時代の特権です。他者に安易に同調するのではなく、人との違いを恐れずに、ぜひ自分の声に耳を傾け、一人で考える時間を大切にしてください。とはいえ、一人で悶々と考え込んでも埒があかないこともあるので、そのようなときには、様々な本を読み、様々な人と対話しましょう。

【11. 一曲リクエストしてください】

リクエスト曲は、さだまさし「天然色の化石」

この曲は、
①「常識」を疑いながら問いをたて、
②未来(この曲では5億年先の未来!)を想像しながら、
③現代社会の課題を鋭くとらえて、
④願いを発信している

というところがとても魅力的です。学問や教育の意義とも、どこか通じる点がある気がします。

▲研究について語る村井先生

▲研究について語る村井先生

▲ラジオ収録の様子

▲ラジオ収録の様子

JP / EN