令和2年度静岡大学新入生の皆様へ(清水海上保安部からのお言葉)

2020/04/06
ニュース

令和2年度静岡大学新入生の皆様へ

令和2年度入学式の後に行われる講話の中で、清水海上保安部
交通課長 木野敏信様からお話しいただく予定でございました
お言葉をご紹介します。
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 新入生のみなさん、この度は御入学おめでとうございます。 
私からは注意喚起の話ということで、おめでたい雰囲気に水を差すことになるかもしれませんが、とても重要な話をしますので、どうか真剣に聞いてください。

 さて、2018年8月に、静岡キャンパス近くの海岸で遊んでいた静大生3名が高波にさらわれて、帰らぬ人となる悲しい事故が発生しました。
 残念ながら、過去から同様の悲劇が繰り返されています。2018年の事故から遡ること14年前の2004年6月、静大生約60名が、やはり静岡キャンパス近くの海岸でバーベキュー中、2名が高波にさらわれ、2名とも帰らぬ人となっています。
 2名の死因は頭部打撲であり、死亡推定時刻は高波にさらわれた直後であった状況から、高波に飲まれた直後に、海底に叩きつけられて亡くなったものと考えられます。このことからも、大波の威力の凄まじさが分かります。

 その事故より更に3年前の2001年7月、静大生約15名が同じく静岡キャンパス近くの海岸でバーベキュー中、最初に1名が高波にさらわれました。それを見ていた仲間の1名が救助しようと海に入りましたが、2人とも沖合に流されて戻れなくなりました。
 このときは奇跡的に、到着したヘリコプターに吊り上げられて2名とも救助され、何とか命を落とさずに済みましたが、紙一重の状況でした。

 このように、静大生が海岸で波にさらわれる事故が繰り返されています。残念ながら、過去の事故から学ぶべき教訓が生かされていないと言わざるを得ません。では、このような事故を今後、繰り返さないためには、どうすれば良いのでしょうか。

 皆さんが海岸に行ったとき、安全な場所と危険な場所の境はどこだと思うでしょうか。波が打ち寄せている場所の砂浜は濡れており、そこより手前側は乾いています。この乾いている砂浜は波が来ていない場所なので、安全だと思うのではないでしょうか。これが落とし穴です。この砂浜の乾いた場所にいて、高波に飲まれているのです。
 海岸や岸壁などでは、100回の波に1回程度、それまでの波の高さの1.5倍の高波が打ち寄せ、更に、1,000回に1回程度、2倍もの高さの大波が打ち寄せると言われています。
 乾いた場所にいても、その大波に飲まれているのです。これはもちろん、静岡キャンパス付近の海岸だけの話ではなく、浜松キャンパス近くや、他のどこの海岸でも同じです。
 そして、静大生以外にも、また、海岸だけではなく、防波堤の釣り人などもこのようにして大波に飲まれて命を落とした人が沢山います。

 先程の3件の事故が発生したときは、何れも波浪注意報が発表されていました。このような波が高いときに、海に近づくのは大変危険なのです。
 海が穏やかで、元々の波が低い場合には、それが1.5倍、2倍になっても、影響は大きくありませんが、元々の波が高いときには、凄まじい高さになって牙をむいて襲ってきます。
 『波が高いときには絶対に海には近づかない』 このことが唯一、悲劇の繰り返しを絶つ方法であり、そしてこれは、今から直ぐに、誰にでもできる、とても簡単なことなのです。
 私はこれ以上、将来ある若者の命が、大波によって奪われることを何とか防ぎたいのです。
 今日を限りに、波が高いときには、決して海には近づかないでください。

2020年4月 清水海上保安部 交通課長 木野 敏信

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