高速リチウムイオン伝導性を示す分子結晶電解質の開発と電解質の融解・凝固を利用した全固体電池の作製 ―全固体電池の開発に新たな方向性をもたらす発見―

2020/10/29
プレスリリース

■ポイント■
▶新たな有機固体電解質として、室温・低温下で高い特性を示す分子結晶を開発
▶分子結晶の融解・凝固という簡便な操作により、薄膜全固体電池を作製
▶低温動作が可能な固体電解質・全固体電池の開発に新たな方向性をもたらす発見

 国立大学法人静岡大学 理学部 化学科の 守谷誠 講師 と国立大学法人東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の一杉太郎教授らの研究グループは、高いリチウムイオン伝導性を示し、新しいイオン伝導メカニズムを有する有機分子結晶を開発しました。
 これは全固体電池の固体電解質として応用が期待される材料であり、室温でのイオン伝導度は既報の分子結晶の最高値と同程度ですが、−20度では既報のおよそ100倍の伝導度を示します。有機固体電解質としてよく知られるポリマー電解質は低温にすると急激にイオン伝導度が低下することが一般的ですが、本研究で見出した分子結晶ではそれが起きません。例えば自動車への応用を考えた場合、寒冷地でも電池が動作する必要があり、低温でも動作する全固体電池の実現が期待できます。
 実際に、この固体電解質を融解させ形を整え、その後、凝固させて作製した全固体電池が、高い充放電効率で動作することを確認しました。このように有機分子結晶の将来性を示したことは、国内外で活発化している全固体電池の研究開発に新たな方向性を示すものです。

 なお、本研究成果は2020年10月28日に米国化学会誌Nano Lettersにオンライン掲載されました。

DOI:10.1021/acs.nanolett.0c03313
論文名: High Li-Ion Conductivity in Li{N(SO2F)2}(NCCH2CH2CN)2 Molecular Crystal
著者名:田中 健二郎、多湖 裕輔、近藤 満、渡邊 佑紀、西尾 和記、一杉 太郎、守谷 誠

【本研究成果について、下記メディアで紹介されました】
・2020年11月16日 日本経済新聞電子版 『寒さに強い全固体電池、零下でもEV快走へ』
・2020年11月10日 EE Times Japan 『リチウムイオン伝導性が高い有機分子結晶を開発』
・2020年11月30日 日刊工業新聞電子版 『全固体電池の充放電効率95%に、静岡大と東工大が有機分子結晶を開発』
・2020年12月02日 DG Lab Haus
 『「第4の電解質 分子結晶」がもたらす全固体電池バージョンアップ~静岡大と東工大のタッグで実現』(WEB掲載許諾済)

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