グリーン科学技術研究所 河岸洋和教授が日本学術振興会 令和2(2020)年度 科学研究助成事業(科学研究費補助金)「特別推進研究」に新規採択されました

2020/11/06
ニュース

 静岡大学グリーン科学技術研究所 河岸洋和教授の研究課題「フェアリー化合物の科学とその応用展開」が日本学術振興会の令和2(2020)年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)の「特別推進研究」に新規採択されました。
 特別推進研究とは、「新しい学術を切り拓く真に優れた独自性のある研究であって、格段に優れた研究成果を期待される」ものであり科学研究費の最高峰です(文系理系全分野で12件採択)。本学の教員が特別推進研究に採択されるのは、本学始まって以来の快挙です。
 河岸教授はフェアリーリング(芝が輪状に周囲より繁茂あるいは生育抑制され、後にキノコが発生する現象)を惹起する2つの物質(2-azahypoxanthine(AHX)、imidazole-4-carboxamide(ICA)をキノコから得て、更にその代謝産物(2-aza-8-oxohypoxanthine(AOH))を植物中に発見し、これら3種の化合物をフェアリー化合物(FCs)と命名しました。
 本研究では、FCsの活性発現分子構造を解明し、FCsの新しい植物ホルモンとしての証明と、加えて農業への実用化を目指し、有機化合物によってより高活性で安全なFCs誘導体を創製することを目的としております。これは独自性の高い研究であり、本研究の遂行により、植物生理活性物質の基礎学術として重要な知見が蓄積されるものと期待されます。新しい植物ホルモンとして認知されれば、8番目の植物ホルモン(我が国としては2番目の植物ホルモン)に位置付けられる可能性があります。また、イネ、小麦、ジャガイモなどの主食系作物の収量増加効果の分子機構が明らかになれば、植物生産性の向上やストレス環境下での植物生育の実現など、農業分野での優れた成果も期待できます。

■ポイント■
▶日本学術振興会の科学研究助成事業(科学研究費補助金)の研究種目「特別推進研究」に本学で初めて採択された。
▶独自性の高い研究であり、植物生理活性物質の基礎学術として重要な知見が蓄積されるものと期待される。
▶フェアリー化合物(FCs)によりイネ、小麦、ジャガイモなどの主食系作物の収量増加効果の分子機構が明らかになれば、農業への実用化で優れた成果が期待される。
▶フェアリー化合物(FCs)は第8の植物ホルモンに位置付けられる可能性がある。


【研究の概要】
 芝が輪状に周囲より繁茂あるいは生育抑制され、後にキノコが発生する現象を「フェアリーリング(妖精の輪)」という。河岸教授は、この現象を惹起する2つの物質、2-azahypoxanthine(AHX)とimidazole-4-carboxamide(ICA)を、フェアリーリングを引き起こすキノコから得、AHXの植物中での代謝産物2-aza-8-oxohypoxanthine(AOH)をイネから発見した。その後、これらの物質群は植物に普遍的に内生していることがわかり、圃場試験においては農作物の収量を大幅に増加させた。これら3種の化合物(フェアリー化合物、fairy chemicalsと総称、FCsと略称)はプリン代謝経路上で生合成されることが明らかになっている。本研究では、この生合成・代謝経路の全容を解明し、あらゆる植物そして菌類に共通な新しいプリン代謝経路を明らかにする。また、植物とキノコを用いてFCsのシグナル因子・受容体解明とそれらの生合成酵素欠損株の作出等によって、活性発現分子機構を明らかにする。以上の検討によってFCsが新しい植物と菌類のホルモンであることを証明する。加えて、農業への実用化を目指し、作物の栽培実験を通して効果と作用機構を検討し、さらに有機合成化学によってより高活性で安全なFCs誘導体を創製する。

【期待される成果と意義】
・我が国で発見された植物ホルモンはジベレリンのみであり、FCsが新しい植物ホルモンと認知されれば、8番目の植物ホルモン(我が国としては2番目の植物ホルモン)に位置付けられる可能性がある。
・本研究によるFCsによりイネ、小麦、ジャガイモなどの主食系作物の収量増加効果の分子機構が明らかになれば、植物生産性の向上やストレス環境下での植物生育の実現など、農業分野での優れた成果が期待される。

図1 本研究の全体構想

図1 本研究の全体構想

申込み方法・問い合わせ先:

【お問い合わせ先】
グリーン科学技術研究所 河岸 洋和
TEL/FAX:054-238-4885
E-mail:kawagishi.hirokazu[at]shizuoka.ac.jp
※[at]を@に変更してご利用ください

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