令和4年度静岡大学入学式を挙行しました

2022/04/05
学長メッセージ

 令和4年4月4日(月)にグランシップ 大ホールにおいて、令和4年度静岡大学入学式を挙行しました。
 今年度は新型コロナウイルス感染症対策のため、午前・午後の2部制で入学式を挙行し、保護者の方のためにライブ配信を実施しました。

 式に先立ち、静岡大学混声合唱団による静岡大学学生歌「われら若人」と「夢みたものは……」の合唱があり、式典に華を添えました。
 式では、日詰 一幸学長から、学部生2,031名(編入学生を含む。)、大学院生656名の新入生に対して、入学が許可され、「皆さんが何に対しても常に能動的で、自らの創造力を発揮し、柔軟性をもって学生生活を送られることを期待しています。」との式辞がありました。
 最後に、新入生を代表して、第1部では情報学部情報科学科の小出 智大さん、第2部では地域創造学環の森 万穂里さんからそれぞれ、静岡大学での新たな第一歩に向けて力強い宣誓が述べられました。
 
令和4年度静岡大学入学者数
○学部(学士課程)
人文社会科学部   435名
教育学部      304名
情報学部      247名
理学部       241名
工学部       560名
農学部       192名
地域創造学環     52名
       計 2,031名
※人文社会科学部、情報学部、工学部、農学部には編入学生を含む。

○大学院(修士課程)
人文社会科学研究科  32名
総合科学技術研究科 560名
         計 592名

○大学院(博士課程)
教育学研究科      4名
光医工学研究科     3名
自然科学系教育部   17名
          計 24名

○大学院(専門職学位課程)
教育学研究科     40名
         計 40名

  合計 2,687名


-------------------------------------------------------

令和4年度 入学式式辞
 
 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。そして、ご家族・保護者の皆様にも、お子様のご入学を心よりお祝い申し上げます。

 静岡大学は今年度、学部学生2,012人、編入学19人、大学院修士課程592人、大学院博士課程24人、専門職大学院教育実践高度化専攻40人の合計2,687人の新入生をお迎えすることができました。ここに全学の教職員を代表致しまして、皆さんのご入学を心より歓迎致します。

 昨年度の入学式は学生の皆さんの代表や大学側の役員・部局長等の限られた出席者からなる規模の小さなものでした。今年度は、全国でまん延防止等重点措置が先月の21日をもって解除されてはいますが、コロナウイルスの感染防止を優先するという観点から、午前と午後の2部制にして実施することにしました。しかし、2つに分かれているとはいえ、同じ学部に入学する皆さんが全員顔を合わせてこの会場に出席されていることを、私たちはとてもうれしく思っています。

 さて、この2年間、皆さんにはいろいろな制約が課されましたので、毎日不自由さを感じ、万全の状況ではない中で自らの学びを進めてこられたのではないかと推察しています。いろいろとつらい経験もあったことでしょう。しかし、皆さんはそのような困難な状況を乗り越えて今日の日を迎えられました。私は、皆さんのそのような努力に心からの敬意を表したいと思います。新型コロナウイルスはまだ収束したとはいえない状況ですので、静岡大学においても、皆さんを感染から守るために、これまで通り密集、密接、密閉という「三密状態」を避け、マスクの着用、手指消毒、ソーシャルディスタンスと呼ばれる安全な距離を保つことなどをお願いすることになりますが、厭わずにそれらの取り組みに理解を示していただくことを期待しています。

 私たち教職員は、コロナ禍の中で授業についてもいろいろな経験を積んできました。2年前、得体の知れないコロナウイルスの感染を予防するために、対面で授業を行うことが困難な時期もありました。しかし、そのような状況の中にあって、オンラインを使った授業の取り組みを展開しました。本学の教員は皆、様々な工夫を凝らした教材を作成して授業を行い、オンデマンド方式の授業は一定の成果を挙げたと考えています。そして、最近はオンラインと対面の授業の双方を組み合わせたハイブリッド型の授業も展開されるようになり、これまでの授業のスタイルが大分変化を見せ始めています。そのような中で、皆さんは静岡大学での学びを始めることになります。私たち教職員一同、皆さん一人一人が楽しく豊かな学生生活を始めることができるように力を尽くしていきたいと考えています。

 ところで、これから静岡大学で大学生活を始めようとしている皆さんに、いくつかの私からの期待をお伝えしたいと思います。

 一つ目は、大学での学び方についてです。皆さんはこれから「大学」という場で学ぶことになります。静岡大学は文系・理系双方の学部からなる総合大学です。これから始まる静岡大学での学生生活に、大きな期待を膨らませておられることと思います。これから皆さんは学部ないし学環に属し、自らの問題関心に沿って学びを深めていかれることでしょう。そのような学び方は大学生であるので当然ですが、ぜひ心にとどめておいてほしいことがあります。それは、自らの専門性を深める学びだけではなく、文系・理系に偏ることなく、自らの学びの幅を広げてほしいということです。皆さんのこれまでの学びは、高校生のある時点で、大学受験のために自らを文系または理系と色付けをして、双方の学びの幅を狭めてしまったのではないかと思います。大学に入学した今、そのような学びのスタイルを変えていくことも必要だと思います。皆さんは静岡大学で自由に学びの幅を広げていくことができます。つまり、世の中で起こっている様々なことに問題意識をもち、物事を探求する姿勢こそ大学生としての学び方であるはずですし、皆さんはできる限り知的関心を広げて学んでいってほしいと思います。実は、大学院の修士課程や博士課程で学ぶ学生の皆さんにもこのことは言えます。大学院での学びはより深く専門性を極めていくことになりますが、だからこそより広く知的関心の幅を広げておくことが大切です。知的関心の幅を広げて学んでおくと、いつしかそれらの学びが一つにつなげることができ、そのようなつながりにより、皆さんが追及する専門性がより豊かになっていくことになるのではないかと考えています。哲学者の野家啓一氏は「専門知識以外の場面で臨機応変に発揮される多彩な能力、その身体と心になじんだ『懐の深さ』こそが教養なのである。」(山脇直司編『教養教育と統合知』)と「専門知」とともに「教養知」の重要性を指摘しています。ぜひ専門的な学びの他に「教養知」にも関心を払って学ぶという、まさに学びの醍醐味をこの静岡大学で味わってほしいと思います。

 二つ目は、一つ目とかかわりますが、世の中で起こっていることに関心を持ち、社会に対する自らの洞察力を磨いてほしいということです。今年一月後半以降、ロシアがウクライナへ軍事侵攻するのではないかという懸念が世界中に広がりました。そして、2月24日、ついに軍事侵攻が現実のものとなりました。日本社会で暮らしていると「軍事侵攻」とはどのようなものか、ニュース報道でしか体感できません。しかし、それが現実に起こっているということを私たちはどのように受け止めることができるのか、そのことを真剣に考えてみることも必要ではないでしょうか。私自身は主権を持つ一つの国が他国による軍事侵攻により領土が占領されるだけでなく、非戦闘員である一般の市民にまで危害が及ぶ事態は決してあってはならないことだと受け止めています。しかし、そのようなことが現実に起こっているのです。私たちは一人の人間として、このような蛮行を許容することはできません。私たちは、大学という学問の府の中にあって、なぜそのようなことが起こってしまったのか、そしてその解決策はあるのかといったことを考えてみることも必要ではないかと思います。今回の事態に際し、社会思想家の佐伯啓思さんは新聞の論評で次のように述べています。「今日、冷戦後のアメリカ流グローバリズムの表皮が剝がれつつあるなかで、われわれはむき出しの『力』が作動する世界へ移行しつつある。」「西洋、アジア、ユーラシアの大国を舞台にした文明の衝突が起きる時、日本は、そのはざまにあって、前線に置かれる。」「その時、日本はどのような立場をとるのだろうか。」と。(朝日新聞、2022年3月26日付朝刊)今、私たちは平和な日本の中に住んでいます。日本は現在、他国から軍事的侵略を受けるなどと誰もが想像することさえできないほど平和を享受しています。しかし、これからの世界情勢を考えるときに、日本もなにがしかの影響を被る可能性を否定することができないのです。それほど日本を取り巻く情勢は混とんとしています。このような状況の中にあって、ぜひ世界の動きから皆さんの目をそむけないでください。そして、様々な学びを通して、物事の本質を見極める力を養っていただきたいと思います。

 そして、三つ目は人との交流から多くのことを学んでほしいということです。静岡大学には学部と大学院合わせて1万人を超える学生が学んでいます。本学に在籍する学生は静岡県内出身者ばかりでなく、全国各地から集まっています。まずは、皆さんは受け身になるのではなく、自ら「口を開いて」心の扉を開け放ち、これまで出会ったことのない人との出会いをぜひ大切にしていただきたいと思います。そのような出会いは、同級生だけではなく、ゼミや研究室、さらにはサークルや部活動を通していろいろな機会があるはずです。場合によっては、皆さんの生涯に影響をもたらす同級生、先輩、教職員との出会いもあるのではないかと思います。そのような人との交流や語らいをぜひ大切にしてください。また、本学にはアジアの国々ばかりでなく、アフリカ、北米、南米、ヨーロッパ諸国からも多くの留学生が学んでいます。そのような留学生との交流は言葉が一つの壁になるかもしれませんが、彼らは皆さんとの交流を心から期待をして待っていると思います。言葉、宗教、風俗、習慣の異なる国から目的をもって静岡大学へ留学した学生たちとの交流は、必ずやこれからの皆さんの人生にとって意義深いものとなるのではないかと思います。かつてノートルダム清心学園の理事長をされた渡辺和子さんが次のような言葉を残しています。「いい出会いにするためには、自分が苦労をして出会いを育てなければならない。」(渡辺和子『置かれた場所で咲きなさい』)渡辺さんが言いたかったことは、人との信頼関係は出会っただけで何もしなければ実りあるものとすることはできない。自分自身がその「出会いを育てる」努力をしなければならないということです。私は、皆さんが静岡大学で「出会いを育てる」ような体験を沢山していただくことを期待します。

 さらに四つ目は、静岡大学での学生生活が皆さんにとって、自らへの「挑戦」の機会であってほしいということです。静岡大学では、毎年3月に学生生活で顕著な業績を達成した学生に学長表彰を行っています。先日、私はこの学生表彰の場に立ち会いました。ピアノコンクールで優れた才能を発揮して優秀な成績を収めた学生、研究成果を論文でまとめあげ学会等で表彰された大学院生、社会貢献で大きな成果を挙げた学生などいずれも社会で認められる素晴らしい成果を挙げた学生たちです。皆さんが自らの学生生活にあって、卒業・修了の際に「これだけはやり切った」といえることにぜひ挑戦してみてください。

 以上四つのことを私は皆さんへの期待ということで申し上げました。私は、皆さんが何に対しても常に能動的で、自らの創造力を発揮し、柔軟性をもって学生生活を送られることを期待しています。静岡大学での学生生活において、皆さんは自由に物事を発想して振る舞うことは可能ですが、一方で一定のルールがありますので、それをわきまえることも求められます。そのような環境の中で、皆さんは一人の大人としての扱いを受けます。多くは自己責任とされることもありますので、それについては常に自覚的であってください。そしてその中で、皆さんが大いに静岡大学での学生生活を満喫してください。

 最後になりますが、私たち教職員は、皆さんの学生生活が充実したものとなることができるように支援をしていきたいと考えています。どうぞ気軽に声をかけてください。そして、皆さんが静岡大学の優れた環境の中で、生き生きと学生生活を送ることができるよう心より願っています。改めまして、本日はご入学まことにおめでとうございます。以上をもちまして、私からの式辞とさせていただきます。

令和4年4月4日
静岡大学長 日詰一幸

【写真左より】
・日詰学長から、入学生へ式辞がありました
・第1部入学生代表者 情報学部の 小出 智大さんから入学生宣誓がありました
・第2部入学生代表者 地域創造学環の 森 万穂里さんから入学生宣誓がありました

JP / EN