河岸 洋和 特別栄誉教授(農学部) の共同研究が「科学新聞」で紹介されました

2022/12/14
研究

農学部 河岸 洋和 特別栄誉教授、宇都宮大学の 鈴木 智大 准教授、東海大学の 浅川 倫宏 准教授、国立環境研究所の 前川 文彦 主幹研究員 らの研究グループによる共同研究「スギヒラタケ摂取による急性脳症発症の推定分子メカニズム-発症には 3 つの成分が関与-」が、『科学新聞』で紹介されました。

科学新聞2022.12.02号6面掲載記事 (科学新聞社掲載許諾済)

科学新聞2022.12.02号6面掲載記事 (科学新聞社掲載許諾済)

急性脳症を引き起こすスギヒラタケ

急性脳症を引き起こすスギヒラタケ

【研究概要:「スギヒラタケ摂取による急性脳症発症の推定分子メカニズム-発症には 3 つの成分が関与-」】
スギヒラタケ(Pleurocybella porrigens)はキシメジ科スギヒラタケ属のキノコで、北陸、中部、東北地方を中心に食用とされてきました。しかし 2004 年 9 月以降、新潟・山形・秋田の各県でこのキノコの摂取による急性脳症が疑われる事例が発生しました。
当時は戦後最悪の食中毒事例とされ、大きく報道されました。厚生労働省は研究班を立ち上げ原因究明に努めましたが、最終的には「原因不明」と結論付け2006 年に研究班を解散しました。
静岡大学の河岸洋和 特別栄誉教授(当時研究班にも在籍)、宇都宮大学の鈴木智大 准教授、東海大学の浅川倫宏准教授、国立環境研究所の前川文彦 主幹研究員らの研究グループは、研究班の解散後もこのキノコによる急性脳症発症機構の解明に継続的に取り組み、以下を明らかにしました。
(1)このキノコから、マウスに対して致死活性を示す新規のタンパク質(プレウロサイベリン:PC と命名)の精製に成功
(2)PC と、このスギヒラタケ由来のレクチン(PPL)が複合体を形成し、タンパク質分解活性を示す
(3)PC および PPL と、過去に神経細胞に毒性を示す化合物として、このキノコ中に存在することを予想し化学合成によってその存在を証明したプレウロサイベルアジリジン(PA)の 3つの混合によって、マウスの脳内に障害が起きる
これらの結果から、「スギヒラタケ中の 3 つの物質が急性脳症の発症に関与する」という新たな毒性メカニズムを提唱しました。
本研究成果は、2022 年11 月 12 日、国際学術雑誌「Toxicon」のオンライン版で公開されました。

JP / EN