2022年台風15号により9月24日に発生した静岡市の洪水に関する報告

2022/12/16
プレスリリース

2022年の台風15号により、静岡市周辺は9月23日夜遅くから24日明け方にかけて猛烈な雨が降り、12 時間降水量の日最大値では静岡市では24日5時50分までに404.5ミリ(統計開始1976年、七夕豪雨は1974年で統計データには含まれていない)を記録し、観測史上1位を更新した。一方、23日23時から24日4時にかけては満ち潮にあたっており、巴川の流下能力は低下した。この状況で、巴川とその支流の一部で越水が起き、床上・床下浸水が発生した。
著者は、2022年9月24-27日に洪水の被災地で現地調査を行い、計85地点で、浸水深の測定と洪水堆積物の観察・分析を行い、その結果を「静岡大学地球科学研究報告」に報告した。

【調査方法】
今回の洪水被害に関しては、空中写真が公開されておらず、調査地点の事前選定ができなかった。そのため、大谷川放水路より下流の巴川・長尾川沿いを調査した(図1)。なお、調査時間の制約と、住民の迷惑にならないように自転車と徒歩で調査したため、浸水域全域を調査することはできなかった。
浸水深の測定は、浮遊ごみの上端を最大浸水の痕跡とし、周辺の被害状況と確認した。その後、浮遊ごみの上端の真下の地盤から浮遊ごみの上端までの距離を、コンベックスを使って測定し、最大浸水深の値を得た。測定精度は1cmである。測定地点の位置を現地で地図に記した後、研究室でGoogle Earthを使い、緯度・経度を調べ、度、分(10進法)で記載した(図2-4)。
洪水堆積物は現場で観察するとともに、3か所で計5試料を採取した(図5)。地点1は、長尾川が越水した地点で、著者が調査した地点で最も上流の越水した場所であり、厚さ6cmの洪水堆積物の下部の層厚3cmと上部の層厚3cmからそれぞれ試料を採取した。地点2は、地点1から70mの位置にある後背低地で、そこの道路上で試料を採取した。地点1-2は地点1から40mの位置にあり、地点1と2の間の堤防から後背低地に下る道路上で試料を採取した。地点77は清水区銀座の水神社の境内である。

【結果】
浸水深のデータを図1-4と表1に示す。1地点で、1974年の七夕豪雨の浸水深1.56mを示す標識があり、そこでの今回の浸水深は0.86mであり、0.7m低かったことが分かった。粒度分析の結果、洪水堆積物は細粒砂ないし泥質極細粒砂からなる(図5)。

【本研究成果の社会的意義】
今回の巴川の洪水による被害実態や再発防止に浸水深データは重要であるが、ほとんどデータがとられていないようである。本調査による系統的データが役立てていただければと思う。

 図1 清水低地の状況 (a)地形図(国土地理院, 2022)

図1 清水低地の状況 (a)地形図(国土地理院, 2022)

図2 調査地点番号と浸水深(m)

図2 調査地点番号と浸水深(m)

図3 調査地点番号と浸水深(m)

図3 調査地点番号と浸水深(m)

図4 調査地点番号と浸水深(m)

図4 調査地点番号と浸水深(m)

表1 浸水深のデータ

表1 浸水深のデータ

図5 洪水堆積物の分析結果

図5 洪水堆積物の分析結果

申込み方法・問い合わせ先:

静岡大学理学部地球科学科・防災総合センター
北村 晃寿                             
TEL:054-238-4798
E-mail:kitamura.akihisa[at]shizuoka.ac.jp
※[at]を@に変更してご利用ください。

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