静岡大学と浜松医科大学の法人統合・大学再編に係わる「期成同盟会」についての学長と記者との懇談会を開催しました

2023/02/10
ニュース

令和5年2月9日(木)に、学長と記者との懇談会を本学で開催しました。詳細は以下の通りです。

■ 日時|令和5年2月9日(木) 11:00~12:05

■ 場所|静岡大学静岡キャンパス事務局5階大会議室

■ 出席者
 [静岡大学]日詰一幸学長、片田晋 特命理事・副学長・ 事務局長
 [報道関係]中日新聞 、テレビ静岡 、読売新聞、 NHK、朝日新聞、 静岡朝日テレビ、静岡新聞、日本経済新聞


1.日詰学長説明

〇2月1日に、期成同盟会が立ち上がると報道があり、個別の依頼があったため、関係者に集まっていただき、懇談会という形をとらせていただいた。

〇本学と浜松医科大学の法人統合・大学再編に係わるこれまでの経緯と、「期成同盟会」についての私の受け止めについて御報告する。

〇資料1は合意書の締結前から現在に至るまでの状況を本学が整理したものである。

〇本学と浜松医科大学の法人統合・大学再編については、資料2のとおり、平成31年3月29日に両大学間で合意書を締結しているところである。なお、学内には合意書締結までのプロセスに疑義を持ち、大学再編に異論を持つ構成員がいるのは事実であるが、機関同士で合意書を締結したことは事実であると認識している。

〇合意書の締結以降、資料3のとおり、令和元年7月12日に文部科学省高等教育局長及び研究振興局長より「学校教育法等の一部を改正する法律等の施行について」(以下「施行通知」という。)が通知された。6ページの2.留意事項の①にあるとおり、一法人複数大学制度を活用する場合は、「関係大学はもとより、地元自治体等の関係者の理解を十分に得て進めるべき」とのことが明記されている。

〇同年7月19日には、本学と浜松医科大学の連名で法人統合・大学再編に関する構想を文部科学省の「令和元年度国立大学改革強化推進補助金」事業に申請し、10月29日に採択された。

〇他方、大学再編については、静岡キャンパスを中心とした学内教職員、同窓会、学生、更には地元自治体である静岡市などから、心配の声、反対の声が出ていた。このような状況を踏まえ、前静岡大学長から静岡市長に対し、ゼロベースでの議論を申し入れ、静岡大学と静岡市の協働する中で令和2年1月に「静岡大学将来構想協議会」を設置され、延べ6回の協議会が開催された。そして、令和3年3月29日に「静岡大学将来構想協議会のまとめ」が示された。この中では、「協議会の中では、静岡大学が浜松医科大学と法人を統合することには理解が示された。しかし、静岡大学を分割して地区ごとの大学に再編する点については、特に静岡キャンパス側のメリットが分かりにくく理解しかねるという多くの意見や、統合・再編のあり方を議論する前段階として、そもそも総合大学としての静岡大学の将来像が見えてこないなどの課題があるという意見が出ていた」とあるように、特に大学再編に対して、十分な理解が示されていなかった。

〇他方、浜松市は、法人統合・大学再編に賛同しており、その背中を押す目的で、令和2年10月に「浜松地区大学再編・地域未来創造会議」が設置され、これまでに5回開催されている。

〇そうした状況下で、両大学は、施行通知での留意事項も踏まえ、令和3年1月28日に、地域の声、国全体の両方を見据え、両大学合意の下で法人統合・大学再編の期限の定めのない延期を発表した。

〇令和4年3月31日には、資料4のとおり「令和元年度国立大学改革強化推進補助金」を活用した3年間の事業に対し、「国立大学改革強化推進補助金に関する検討会」から、残念ながら一番低いC評価「当初の構想に沿った取り組みが行われておらず、十分な成果が得られているとはいえないことから、本事業の目的を達成できなかった」と評価された。また、この評価に加え、検討会からは所見をいただいた。6つの所見には厳しい意見もあるが、法人統合・大学再編を応援する意見もある。本学としては、法人統合・大学再編を進めるためには、当然のことながらこれらの所見に対し真摯に受け止め、検討する必要があると考えている。

〇合意書の締結以降、さまざまな状況の変化が起きており、合意書時の構想案のままでは、大学再編に反対する関係者の理解、納得を得ることが難しいと受け止めている。また、施行通知や補助金の所見に対応しなければ、大学設置認可申請の認可を得ることは難しく、更にはその先にある国立大学法人法の改正も極めて困難であると考えている。これらの状況への対応も踏まえて、令和4年7月5日、10月7日の浜松地区大学再編・地域未来創造会議では、学長私案ではあるが、「静岡大学未来創成ビジョン」を示した。私としては大学再編をも包みこみ、両大学の研究成果の静岡県全体への波及も視野に入れて、大学統合が一つの選択肢であることを説明したが、浜松医科大学、浜松市には御理解いただけなかったというのが現状である。

〇本学としては、18歳人口が減少する中、また、さまざまな社会課題に向き合っていかなければならない中、大学をより活性化させることが大きな課題である。両大学が一つの大きな大学となり、知と人材の集積拠点として教育研究の裾野を広げ、専門知と総合知が融合した教育研究と地域貢献を展開していくことが重要である。一つの大学になれば、大学間の壁、地域の壁はなくなり、教育研究、地域貢献において真の融合が生まれ、その成果は県域全体へと波及していくのではないかと思う。また、静岡県に置かれた国立大学として、静岡県の高等教育を先導し、発展させることも両大学の使命であると考えている。医工情報という分野の括りで一つの大学を作ることを超えて、一つの大学となることで、医学と人文社会科学、医学と教育、医学と理学、農学、と更なるシナジー効果が波及していくと確信している。また、教育研究面だけでなく、運営面においても、同一法人内で大学を2つに再編するよりも、一法人一大学の方が、合理化、効率化が図れると考えている。

〇日本には国公私立を含めて800を超える大学が存在しており、今もなお増え続けている。18歳人口が減少する中で、いずれそれぞれの大学が統廃合の決断を迫られる時代がくると予測している。本学としては、合意書締結以降の状況の変化を踏まえ、大学統合を見据えた将来の大学のあるべき姿を検討したく、合意書の「2.合意事項」(6)に基づき、両大学でさらに踏み込んだ検討をしたいと考えているが、今のところ御理解をいただけていない。私としては、静岡地区や浜松地区といった地域に分かれた大学を作るのではなく、両大学を統合して、多様化する社会を見据え、学問分野の広い裾野を持った新たな総合大学を静岡県に作り、専門知と総合知を兼ね備えた学生を育成すること、また研究の裾野も広げ、その成果を地域に還元すること、更には静岡県の高等教育を2つの国立大学が先導すること、これらの国立大学としての使命を果たしていくことにより、静岡県全体を活性化させ、持続性のある魅力的な地域にすることが重要なことだと考えている。このような大学こそが先鋭的な大学を期待する浜松市の期待にも応えることになると考えている。

〇両大学で考え方が違うこと、また状況の変化の捉え方に違いがあることにより進んでいないが、その中でも両大学で法人統合・大学再編に関して、静岡大学・浜松医科大学連携協議会でさまざまな協議をしている。その最中、期成同盟会の発足を聞き、このような動きに驚いているとともに、困惑している。

〇本年1月27日に開催した静岡大学・浜松医科大学連携協議会において、浜松医科大学からは「我々らしいディスカッションを、未来の子どもたちのために行いたい。我々がどう考えるかということが最も重要である」との発言があった。本学としても、大学のことは大学が主体的に決めるべきであると考えている。これは、浜松医科大学も同じような考えに至っているのではないかと受け止めている。

〇法人統合・大学再編に対して、自治体、経済界、行政、市民の皆様から見れば、未だに進展していないではないかとのお𠮟りを受けるのはごもっともであり、その結果が期成同盟会というものにつながったと理解している。

〇合意書の締結からは既に4年以上が経過し、そこでの大学再編構想については、大学関係者や多くのステークホルダー等も含め賛同する方も反対する方もいる。私としても、静岡県の国立大学を静岡地区と浜松地区に分ける大学再編構想は、全体として法人統合するとは言えど、やはり大学の壁が残り続けることは明らかであると受け止めている。学長就任以降、様々な関係者から、賛否両論の意見を伺った結果、現時点では大学再編よりも大学統合という構想の方が優れていると考えている。

〇我々も、地域の多くの人々に理解、納得いただける、20年後、30年後を見据えた大学の構想を、原点に戻って議論する必要があると考えている。

〇3月2日には期成同盟会が発足すると聞いている。県内の首長の皆様、経済界、行政の皆様には、このような状況下にあることを御理解いただき、静岡県の均衡ある発展のために、本当に貢献できる国立大学を実現したいと考えていることを御理解、御支援いただきたい。


2.質疑応答(〇静岡大学 ●報道機関)

●期成同盟会を黙殺することもできるが、あえてアピールする狙いは、首長にこの流れに安易に乗らない様にというけん制か。

〇(日詰)県内の首長に我々の思いを直接伝えることができていない。大学の使命として、教育研究・地域貢献があるが、地域に理解していただきながら地方国立大学として存在していくことが大切である。浜松医科大学は医師の輩出で貢献している。本学も地域で活躍できる人材を輩出することで、さまざまな貢献をしている。それぞれの大学が地域貢献を行う中、各首長もどちらかに肩入れすることは難しいのではないかと感じている。そのような状況下で、本学がどういう考えを持っているかを理解してもらうことが重要であると考え、今回の機会を設けている。静岡県内における責任ある国立大学として、どういう形であれば地域の発展に最も貢献できるかを考え、もう少し先の将来を見据えて、より大きな大学を作ることも大切であると考えていることをお伝えしたかった。

●静岡市長は、大学の自治の問題であるためこのような流れに乗るべきではないと表明しているが、他の首長で学長がコミュニケーションをとっている方、理解を示している方はいるか。

〇(日詰)親しくしている首長で、困惑している方がいることは感じている。

●1つの大学になることで、医工連携以外の連携をするとおっしゃっているが、具体的にイメージしている事例があれば教えてほしい。

〇(日詰)具体例は用意していないが、さまざまな社会課題を解決するソリューションを発見・提案することも大学の使命である。イノベーションを担うのは理系だけではない。さまざまな領域の方々が連携することで、より深いソリューションを見つけることが可能になる。学問領域の裾野の広さがこれからの社会には必要になる。一つの大学になることで、学問分野の広がりを持ち、その中で更に新しい先端的な領域を見つけて、育てていくことができると考えている。文理融合と言われているが、イノベーションにおいても文系の果たす役割はかなりあると思うので、そういうものが融合していく環境を作ることが大学として大切であると考えている。

●学長の知見でも具体的な事例はないということか。

〇(日詰)例えば病院を見たときに、法律は医療訴訟や医療事故を防ぐための在り方や発生時の対処方法のアドバイスが可能である。病院経営も、経済の知識が必要になってくる。また、医療倫理は法律や哲学・思想が関連してくる。こういったものが融合することはあり得る。

●既存の医学部でも生命倫理などは既にあると思うが、例えば、一つの大学にならないと浜松医科大学の医師が県中部・東部に来ない、一つの大学となることで静岡県に愛着を持ち、伊豆や県東部で働いてくれるようになるといったアピールはしていないのか。

〇(日詰)まずは、一つの大学になるという入口のところで問題提起をしている。浜松医科大学が議論に乗っていただけるのであれば、話し合いは可能である。

●期成同盟会そのものは大学再編に影響するものではないと思うが、期成同盟会の報道が出た後、浜松医科大学の今野学長と期成同盟会について、意見交換したか。あるいは、今後意見交換する予定はあるか。

〇(日詰)法人統合・大学再編が足踏みしていることに、不満を持っている人が多いことは理解している。特に大学再編に対し、非常に強い意欲を持っている浜松医科大学としても、何とか実現したいという意向があることも理解している。それを汲んで浜松市を中心に期成同盟会ができると理解している。地域の要望を受け止めることも重要であるが、最終的には大学が判断すべきである。

●今野学長の思いは確認していないということか。

〇(日詰)デリケートなところもあるため、今野学長は今野学長の受け止め方があるのではないか。

●一法人一大学は日詰学長の私案となっているが、静岡大学内での議論の進捗状況はどうか。

〇(日詰)静岡大学内でオーソライズされたものではないことは事実である。その内容を巡って、学内で議論しているところである。法人統合・大学再編をどう受け止めていくかが重要であり、私は一つの大学になった方が良いという考えであるが、静岡キャンパスの教員、浜松キャンパスの教員で受け止め方が異なる。何とか方向性を見つけ出せないかということで議論している。

●一法人一大学が地元の理解を得るための最優先事項か。ほかの形で地元の理解を得るという選択肢もあり得るのか。

〇(日詰)法人を統合することは多くの関係者が理解しているが、大学再編については一つにまとまっていない。静岡県全体の発展を考えると、大学を分けるのではなく大きな塊となって、社会課題に対応することが必要であると考えている。10月7日の浜松市の会議で示した「静岡大学未来創成ビジョン」では、法人統合後に大学統合に向かうか、モデルチェンジした大学再編にするか、法人統合のみにするか、という選択肢を示しているが、議論が十分に熟していない。

●期成同盟会発足に向けて、申し入れ等を行う予定はあるか。

〇(日詰)申し入れは考えていない。3月2日に期成同盟会が発足した際に、再度コメントすることはあるかもしれない。

●浜松市の真意を聞く場を設ける等は考えているか。

〇(日詰)期成同盟会がどのような趣旨で発足するのか、報道を通じてしか情報がない。どのような案内があったかも分からない。私の所感を述べて御理解いただきたいと思っているが、最終的には首長個々の御判断である。期成同盟会ができれば、そこから何らかの形で我々にコネクションがあるのではないかと考えているが、最終的に大学が主体的に決めるという部分は譲れない。

●期成同盟会の動きはいつ知ったか。

〇(日詰)年明けくらいに噂を耳にしたが、これほど急ピッチで進むとは思わず、驚き、困惑している。

●浜松市に真意を聞かなかったのか。

〇(日詰)我々が関与できることではない。

●首長の期成同盟会への参加の感触はどうか。

〇(日詰)分からない。両大学と付き合いがある中で、どちらかに有利になることはできないと悩んでいるのではないか。私から聞き出すことは申し訳なく思っている。

●今の考えをどれくらいのスピード感で実現していくのか。

〇(日詰)大学の将来に関わる大きな決定であるが、そのための議論が生煮えだったという意見もある。この種の問題は、一定程度の時間をかけながらじっくり議論する必要がある。スピード感がないという批判はもっともだが、同じ轍を踏まないためにもある程度の時間が必要である。一つの大学になることの理解が学内でも進んでいくことが大切であり、対話を進め、対話の中で方向性を見つけることが私の姿勢である。

●時間の制限を設けずに議論をベースに考えていくということか。

〇(日詰)いくらでも時間をかければ良いということではないことは理解している。論点に基づき議論することで、いずれは方向性が見えると理解しているが、時間を区切ることで構成員の不満も残るので、一定程度の時間をかけて議論したい。

●具体的な期限を設けているわけではないということか。

〇(日詰)そのとおりである。具体的な期限を設けることで十分な議論ができないと、理解が得られないことがある。

●その考えもあり、期成同盟会の結成に困惑しているということか。ほかに要因があるのか。

〇(日詰)そのとおりである。期成同盟会からの要望は強い形であると思うが、最終的に、主体的に大学が決めるということを地域の方々に理解していただきたい。

●文部科学省からいつまでに議論を進展させるようにと促されてはいないか。

〇(日詰)促されてはいない。

●現状が続いても許されないということはないか。

〇(片田)補助金が採択されたときに、地元理解を得ることという条件が明示された。そのような状況から、文部科学省からそれについて批判を受けることはない。DX、GX等がこれだけ示されている中で、大学改革に手を抜いていれば批判はあるだろうが、法人統合・大学再編と関係するかというと違う。法人統合・大学再編はあくまで、大学から正式に申請を出して認可をいただくということであるため、まだ申請を出していないという状況である。

●補助金を返還することはないのか。

〇(片田)法人統合・大学再編を検討するための補助金である。検討の成果が出ていないので、C評価ということである。補助金の目的は、法人統合・大学再編をすることではない。

●今後、法人統合・大学再編の補助金をもらえなくなることはないのか。

〇(片田)そもそも法人統合・大学再編を行うための補助金はない。

●静岡市から日詰学長に期成同盟会の結成等の意見はあったか。

〇(日詰)ない。田辺市長の発言は、定例記者会見の報道で知った程度である。


3.学長挨拶

今後の期成同盟会の展開を、関心を持って対応していきたい。


以上

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