令和4年度 静岡大学学位記授与式 を挙行しました

2023/03/28
学長メッセージ

令和4年度静岡大学学位記授与式を、令和5年3月22日(水)・23日(木)に挙行しました。

22日(水)にグランシップ大ホールにおいて行われた静岡地区の学位記授与式では、学部学士課程卒業生 1,146名、大学院修士課程修了生 156名、大学院博士課程修了生 11名、大学院専門職学位課程 34名に学位記が授与されました。
23日(木)にアクトシティ浜松大ホールにおいて行われた浜松地区の学位記授与式では、学部学士課程卒業生 728名、大学院修士課程修了生 356名、大学院博士課程修了生 15名に学位記が授与されました。

当日は検温・消毒等の感染症対策を徹底のうえ、4年ぶりにご家族の方にもご参加いただき、会場内では、笑顔で写真を撮られる様子が多く見られました。

日詰学長からは、「皆さん一人ひとりには、生来生まれ持った多彩な才能があります。その才能は全員が同じではありません。私は皆さんが自らの豊かな才能のもと、本学で学ばれた知を活かして、社会で大きく羽ばたいていかれることを心から期待しています。」との告辞がありました。

また、式典では学業成績が優秀な卒業生に対し、表彰状と記念品が贈られました。

最後に、卒業生・修了生を代表して静岡地区では人文社会科学部法学科の鈴木紫陽さん、浜松地区では情報学部行動情報学科の村松俊平さんから、学長をはじめとする教員等に対する謝辞がありました。

学位記授与式閉式後は、学位記授与式会場やキャンパス等において、学部・研究科ごとの学位記伝達式が実施されました。

*下記URLよりライブ配信のアーカイブ動画をご覧いただけます。(令和5年4月上旬まで公開)
【静岡】https://youtube.com/live/lHj9ZuMFaUU?feature=share
【浜松】https://youtube.com/live/-aUw0qlChoU?feature=share

令和4年度静岡大学卒業・修了者数

◆ 学部等(学士課程)
【静岡地区】人文社会科学部 399名/教育学部 298名/理学部 214名/農学部 182名/地域創造学環 53名 | 計1,146名
【浜松地区】情報学部 219名/工学部 509名 | 計729名

◆ 大学院(修士課程)
【静岡地区】人文社会科学研究科 29名/総合科学技術研究科 理学専攻 64名/総合科学技術研究科 農学専攻 63名 | 計156名
【浜松地区】総合科学技術研究科 情報学専攻 59名/総合科学技術研究科 工学専攻 297名 | 計356名

◆ 大学院(博士課程)
【静岡地区】教育学研究科(博士) 4名/自然科学系教育部 7名 | 計11名
【浜松地区】光医工学研究科 3名//自然科学系教育部 12名 | 計15名

◆ 大学院(専門職学位課程)
【静岡地区】教育学研究科(専門職) 34名 | 計34名

学位記授与(静岡)

学位記授与(静岡)

成績優秀者表彰(静岡)

成績優秀者表彰(静岡)

学位記授与(浜松)

学位記授与(浜松)

成績優秀者表彰(浜松)

成績優秀者表彰(浜松)

学長から卒業生・修了生に向けて、今後の活躍を期待し、告辞がありました

学長から卒業生・修了生に向けて、今後の活躍を期待し、告辞がありました

令和4年度静岡大学学位記授与式 学長告辞

卒業生、修了生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。ここに、静岡大学教職員を代表して、お祝いを申し上げます。そして、卒業生・修了生の今日この日を心待ちにしてこられた、ご家族・保護者の皆様にも心よりお祝い申し上げます。


昨年度の学位記授与式は、コロナウイルスの感染防止を優先するということから、規模を縮小して行いました。しかし、今年度は感染者数も減少傾向にあり、状況が落ち着きを取り戻しはじめていることから、卒業・修了される皆さんが、これまで共に学んできた多くの仲間たちと一堂に会し、同じ場所で学位記授与式に参加できるようにしました。さらに一昨年、昨年はかなわなかったご家族の皆様の出席も今年は可能になりました。これは何にも代えがたいものだと思いますし、私たちもとてもうれしく思っています。


さて、新型コロナウイルスの感染者が日本で確認されてからすでに3年以上が経過しました。私たちはコロナ禍の3年間の中で、感染を予防するための様々な方法を学び、それらが私たちの生活の中に浸透しました。マスクの着用、手指消毒の励行、密閉・密集・密接といった三密を避けること、ソーシャルディスタンスと呼ばれる安全な距離を保つこと、室内換気、そして新型コロナワクチン接種等ですが、私たちはこれらの方法を通して、感染を予防する術を身につけることができたと考えています。このような経験は、今後未知の感染症が蔓延したとしても必ずや生かせるのではないかと思います。今年5月からは、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に変更になり、私たちはコロナ感染症をもう少しで克服するところまでたどり着いたと言えます。


思い起こせば、卒業生、修了生の皆さんは新型コロナウイルスのまん延により、ここ3年の間とても制約の多い生活を強いられ、大変不自由な中で勉学に励んでこられたのではないでしょうか。私はそのような困難な状況の中にあっても、くじけることなく勉学に励み、本日卒業・修了を迎えられた皆さんに心からの賛辞を贈りたいと思います。与えられた状況が難しいことであっても、皆さん自身が想像力を発揮して、どうすれば円滑に研究を進めることができるのか、様々な工夫をされたのではないかと推察します。そのような取り組みの一つ一つは必ずやこれからの皆さんの人生に良い影響をもたらすことになるはずです。


ところで、本日卒業・修了される皆さんは、ちょうど世紀末、つまり20世紀の末に生を受けて育った方々が多いかと思います。今、私たちは21世紀に生きていますが、この世紀は激動と混乱の時代なのかもしれません。21世紀の初頭からアメリカ同時多発テロ事件を皮切りに、世界のあちこちで軍事衝突等国際社会を震撼させる出来事が多数起きています。そして、昨年2月24日にはロシアがウクライナヘ軍事侵攻を行い、それから1年が経過しましたが、依然として解決の糸口を見いだせない状況が続いています。世界の英知が結集して、一日も早くこの事態を解決する方策を見出してほしいと願っています。

先日、私はウクライナから静岡大学へ留学してきた女子学生、男子学生2名と面会をしました。二人ともとても明るく、戦禍が続く祖国を遠く離れ、工学や情報学を学ぶ喜びを語ってくれました。しかし、家族は依然としてウクライナの地で生活をしていますので、私たちは二人の心の思いを到底計り知ることはできませんが、改めて平和の尊さを噛みしめると同時にこのような境遇に置かれた人々に寄り添うことが大切であると感じました。

米国の科学誌「原子力科学者会報(Bulletin of the Atomic Scientists)」は今年1月24日に、世界に滅亡の危機がどれほど近づいているかを「残り時間」で示す「終末時計」の2023年版を公表しました。そして、この会報誌の表紙絵として終末時計が使われます。それによりますと、人類の滅亡まで「残り90秒」というショッキングなものでした。その背景には、ロシアのウクライナ侵攻があり、それによって危機が一層高まり前年より針を10秒進めたということです。終末時計は、科学や安全保障の専門家で構成される委員会が、現実に起こっている核問題や気候変動など、地球規模で起こっている様々な状況とリスクを分析し、その針をどうするか決めています。当然核戦争の危機が迫ってくるようであれば針は進められ、危機が遠のいていけば針を戻すことになります。この終末時計は1947年に初めて公表されましたが、その時には「残り7分」でした。そして、1991年の冷戦終結の時には「残り17分まで」針が戻されました。また、この終末時計は、2015年以降毎年公表されており、2020年から3年間は「残り100秒」になり、今年はそれからさらに10秒も短くなりました。ロシアのウクライナへの軍事侵攻は、核兵器使用のリスクを増大させているというのが大きな理由の一つだと言えます。私たちは終末時計のことを思うと心が暗くなり、悲観的になります。しかし、この終末時計が示唆していることは、世界中の政治指導者や市民が迫りくる危機に対して、何の手も施さないのであれば間違いなく危機が迫ってくるというものです。一方、世界中が連帯して、核問題、気候変動等の問題に何らかの手を施していくとするならばそれを回避することができることも示唆していると思います。私たちはそこに一縷の希望を見出すことも可能ではないかと感じています。

また、21世紀は「VUCA」の時代だとも言われています。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)それぞれの頭文字を取った造語です。この言葉は、もともと軍事用語としてアメリカで使われていたようですが、冷戦終結後軍事面においては核兵器を中心とした戦略が一転して、不透明な戦略へ変化を見せ始めたということを象徴的に表現したということです。まさに「不透明さ」を現代社会に当てはめて表現したのがVUCAなのかもしれません。現代社会では予測不能なことがいろいろと起きます。例えば、新型コロナウイルス感染症や巨大化する自然災害、世界で発生する軍事衝突、そしてそれらが引き金となって生じる社会経済的変動等、私たち自身の上に突然降りかかってくる様々な諸問題を予見することが極めて難しい時代に生きているということを実感することができます。


このように混とんとして先行きを見通すことが難しい時代に生きている皆さんにとって大切なことはどんなことでしょうか。

高等教育機関である「大学」という場で学ばれ、深い専門知を身につけられた皆さんが、その専門知を活かして、様々な社会課題や困難な問題に立ち向かっていただくことを社会は期待していると思います。現代社会では科学技術の急速な発展とともに、様々な技術革新が進展していますので、まずは、その現実の姿を理解することが必要です。そして、それにとどまらず皆さんの学びの幅を広げていくことも大切なことではないでしょうか。最近、リスキリングやリカレント教育という言葉が聞かれるようになりました。もちろん、大学はそのような社会の変化に対応し、学ぶ意欲を持った人々にその機会を提供する責任があり、本学でもそのような環境を整えていきたいと考えています。私は皆さんが、本学を巣立ってもぜひ主体的に学ぶ機会を多く持っていただき、その学びの幅を広げていくことを期待します。

これは、現代社会が抱える諸課題の解決策は総合的な観点からのアプローチが求められ、様々な学問領域の専門知の融合により解決策が見いだされる可能性が高いと考えられるからです。皆さんは本学において、ある専門領域に関してかなり多くの知を学ばれましたが、これからはほかの学問領域の知への眼差しもぜひ持っていただきたいと思います。様々な専門領域にまたがり皆さんの知の幅を広げていくこと、すなわち「総合知」を意識した学びです。皆さんには、そのような学びのスタイルがこれから多く求められていくのではないかと感じています。ぜひ社会に出られてもそのことを意識した学びを進めていただきたいと思います。

そのように自らの学びの幅を広げて社会を俯瞰する時に、現実に今起こっていることがどのようなことであり、そのために自らがすべきことは何かということが少しずつ見通せるようになるはずです。


私がかつて皆さんと同じ年頃に感銘を受けた本の一つに、キリスト教思想家であり伝道者でもあった内村鑑三が著した「後世への最大遺物・デンマルク国の話」(岩波文庫)があります。この本に収められている「後世への最大遺物」という話は、日清戦争開戦直前の1894年に箱根で開催された基督教青年会第六回夏季学校での講演をまとめたものです。内村自身がキリスト教に帰依しており、その信仰をもとにしたものであることから、違和感を覚える方もいるかもしれませんが、そこで内村が言わんとしていることは多くの人の生き方の参考になるものと思います。内村は「私に……命をくれたこの美しい地球、この美しい国、この楽しい社会、このわれわれを育ててくれた山、河、これらに私が何も遺さずには死んでしまいたくない、との希望が起こってくる」(17頁)と記し、そのため「われわれが死ぬまでにはこの世の中を少しなりとも善くして死にたいではありませんか」(19頁)と述べた上で、人はどのようなことを社会に遺すことができるか考察を進めます。そして、私たちがこの世に遺すことができるものとして、金銭、事業、思想、文学、教育などを挙げていきます。しかし、それらを実現するためには「いずれも一定の才能」(132頁)がなければできず、すべての人がそれを成し遂げることはできそうにない。しかし、「何の才能もないものにできるものとは何か」と問うた時に、「勇ましい高尚なる生涯」(58頁)であれば遺すことができると、内村は述べます。そして、〈この世の中は失望の世の中ではなく、希望の世の中であることを信じること〉、〈この世の中は悲嘆の世の中ではなく、歓喜の世の中であるという考えをわれわれの生涯に実行して、その生涯を世の中への贈り物としてこの世を去るということ〉など、このような遺物であれば、「誰にも遺すことのできる遺物ではないかと思う」(58頁)とまとめています。なかなか意味深い言葉ですが、私自身はこれからもこの言葉の意味することを考えながら残りの人生を生きていきたいと考えています。

皆さん一人ひとりには、生来生まれ持った多彩な才能があります。その才能は全員が同じではありません。私は皆さんが自らの豊かな才能のもと、本学で学ばれた知を活かして、社会で大きく羽ばたいていかれることを心から期待をしています。かつて、ノートルダム清心学園理事長をされた渡辺和子さんが次のような言葉を残しています。「二十一世紀に入って、今まで以上に科学、技術が発達し、人間にとって替わるものが発明されてゆく時、一人の人間のかけがえのなさ、人の心が求めてやまない愛、自由等について、私たちは、もっともっと考えないといけないと思います」(『人間としてどう生きるか』2頁)。この言葉は、科学技術が発展して、社会が大きく変わっても決して変わることのない人間の生き方の本質を語りかけていると思います。皆さんもこのことを覚えて生きて下さることを願っています。

最後になりますが、本日卒業・修了される皆さんのこれからの人生の上に幸多かれと心より祈り、私の挨拶とさせていただきます。


2023年3月22日(3月23日)
静岡大学長 日詰一幸

静岡地区の卒業生・修了生を代表して、人文社会科学部 鈴木 紫陽 さんから謝辞がありました

静岡地区の卒業生・修了生を代表して、人文社会科学部 鈴木 紫陽 さんから謝辞がありました

浜松地区の卒業生・修了生を代表して、情報学部 村松 俊平 さんから謝辞がありました

浜松地区の卒業生・修了生を代表して、情報学部 村松 俊平 さんから謝辞がありました

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