令和5年度静岡大学入学式を挙行しました

2023/04/10
ニュース

令和5年4月4日(火)にグランシップ 大ホールにおいて、令和5年度静岡大学入学式を挙行しました。
今年度は新型コロナウイルス感染症対策のため、午前・午後の2部制で入学式を挙行し、保護者の方にもご参加いただきました。


式に先立ち、静岡大学混声合唱団による静岡大学学生歌「われら若人」とさくらももこ作詞「ぜんぶ」の合唱があり、続いて第1部では三田村 健氏の指揮により、静岡大学吹奏楽団から「Armenian Dance Part1」、第2部では金山 隆夫氏の指揮により、静岡大学管弦楽団から「ニュルンベルクのマイスタージンガー 第1幕への前奏曲」が演奏され式典に華を添えました。

式では、日詰 一幸学長から、学部生2,030名(編入学生を含む。)、大学院生657名の新入生に対して、入学が許可され、「皆さんが静岡大学を新たなことへの挑戦の場と位置付け、何に対しても常に能動的で、自らの想像力を発揮し、柔軟性をもって学生生活を送られることを期待しています。」との式辞がありました。

最後に、新入生を代表して、第1部では工学部電気電子工学科の松田 成永さん、第2部では人文社会科学部社会学科の香髙 百柚さんからそれぞれ、静岡大学での新たな第一歩に向けて力強い宣誓が述べられました。
 

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これからの大学生活をともに活気ある有意義なものにしていきましょう。


*下記URLよりライブ配信のアーカイブ動画をご覧いただけます。(令和5年4月末まで公開)
【第1部】https://youtube.com/live/d-DiZyCEo7I?feature=share
【第2部】https://youtube.com/live/0SErxwmmiB4?feature=share

 
令和5年度静岡大学入学者数
○学部(学士課程)
人文社会科学部    420名
教育学部       267名
情報学部       249名
理学部        237名
工学部        555名
農学部        187名
グローバル共創科学部 115名
       計 2,030名
※人文社会科学部、情報学部、工学部、農学部には編入学生を含む。

○大学院(修士課程)
人文社会科学研究科  32名
総合科学技術研究科 542名
山岳流域研究院     7名
        計 581名

○大学院(博士課程)
教育学研究科      3名
光医工学研究科     4名
自然科学系教育部   20名
         計 27名

○大学院(専門職学位課程)
教育学研究科     49名
         計 49名

     合計 2,687名

第1部入学生代表者 工学部の松田 成永さんから入学生宣誓がありました

第1部入学生代表者 工学部の松田 成永さんから入学生宣誓がありました

第2部入学生代表者 人文社会科学部の香髙 百柚さんから入学生宣誓がありました

第2部入学生代表者 人文社会科学部の香髙 百柚さんから入学生宣誓がありました

日詰学長から、入学生へ式辞がありました

日詰学長から、入学生へ式辞がありました

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令和5年度 入学式式辞
 
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。そして、ご家族・保護者の皆様にも、お子様のご入学を心よりお祝い申し上げます。


静岡大学は今年度、学部学生2,014人、編入学16人、大学院修士課程581人、大学院博士課程27人、専門職大学院教育実践高度化専攻49人の合計2,687人の新入生をお迎えすることができました。ここに全学の教職員を代表致しまして、皆さんのご入学を心より歓迎致します。


昨年の入学式はコロナウイルスの感染予防を優先するということに焦点があてられ、従来本学が挙行してきました入学式からすればかなり変則的なものでした。しかし今年の入学式は、午前と午後の二部制にはなっていますが、同じ学部や研究科に入学する皆さんが全員顔を合わせてこの会場に出席しています。そして、昨年は果せなかったご家族の皆様にもご出席をいただくことができました。私たちは、皆さんの静岡大学への入学を多くの方々とお祝いする機会を持つことができましたことをとてもうれしく思っています。


新型コロナウイルスの感染状況もようやく落ち着きを取り戻してきました。そして、4月1日以降はマスクの着用も緩和され、この入学式でも皆さんの判断に委ねることにしています。このコロナ禍の中で、皆さんにはいろいろな制約が課されましたので、毎日不自由さを感じ、万全の状況ではない中で自らの学びを進めてこられたのではないかと推察しています。いろいろとつらい経験もあったことでしょう。しかし、皆さんはそのような困難な状況を乗り越えて今日の日を迎えられました。私は、皆さんのそのような努力に心からの敬意を表したいと思います。この三年間、世界中の研究者がその英知を結集して、新型コロナウイルス感染症克服のために様々な取り組みを進めてきましたが、今、ようやくその努力が実を結び始めていることを実感することができます。


ところで、静岡大学はこれまで人文社会科学部、教育学部、情報学部、理学部、工学部、農学部の6学部でしたが、今年度より新たにグローバル共創科学部が加わり7学部を擁する大学になりました。新学部では、人文科学や社会科学から自然科学にわたる広範な基礎的知識を学び、多様な背景をもつ様々な人々と交わり連携し、複眼的な視点から現代社会が直面する社会的課題を的確に捉える力を育む教育を目指します。また、大学院では研究科等連係課程という新たな制度を用いて、修士課程の山岳流域研究院が設置されました。この研究院では、静岡県内の地域資源を活用したフィールド教育や文・理の枠を超えた分野横断型のカリキュラムを通じて、山岳流域を俯瞰する専門家や研究者の育成を目指します。このように静岡大学は、グローバル共創科学部と大学院の山岳流域研究院を加え、これまでの教育研究機能をさらに高め、静岡県における知と人材の集積拠点としての役割を一層強化する取り組みを進めて行くことになります。


さて、これから皆さんは静岡大学で大学生としての生活を歩み始めようとしています。そして、新たに始まる学生生活に大きな期待を膨らませておられることでしょう。皆さんはこれから学部や研究科に所属し、自らの問題関心に沿って学びを深めて行くことになりますが、これまでの受験勉強から離れ、真の学問の世界へと身を投じることになります。私はまず、皆さんの学生生活において多くの割合を占める、大学での学びについて触れてみたいと思います。

カリフォルニア工科大学教授で理論物理学者の大栗博司さんは、著書『探求する精神』の中で、ご自身の研究者としての人生を振り返りながら、大学における学びの三つの目標と大学院においてつけるべき三つの力について述べています。このことは私も共感することが多く、これから大学や大学院での学びを始めようとしておられる皆さんには、とても参考になることだと思いますので紹介したいと思います。

大学での学びの目標は、第一に自分の頭で考える力を伸ばすこと。第二に必要な知識や技術を身につけること。第三は言葉で伝える力を伸ばすことであるとしています。そして、「インターネットからの情報の洪水に押し流されず、本質を捉え、新しい価値を創造するためには、自分で考える力がこれまで以上に大切になります」と記しています(『探求する精神』42頁)。大栗さんが指摘するように、物事の本質を捉えるためには、まず「自分の頭で考えること」は実に大切なことであると思います。皆さんもぜひそのことを心がけてみてください。そして、自らの考えを深めるためには知識を豊かにしていくことが求められますし、そのためには様々な本から学ぶという姿勢も大切になってくると思います。そして、自分の頭で考えたことを、自らの言葉で伝える力を高めていくことも必要です。皆さんが大学生として、このような三つの目標を意識した学びを進めていかれることを期待します。

さらに、大栗さんは、大学院に進学された皆さんに向けて、大学での学びの上に立ち、「大学院でつけるべき三つの力」を次のように述べています。一つ目は「問題を見つける力」です。大学までの教育では与えられた問題を解くことに焦点が当てられていたかもしれませんが、大学院では自ら問題を見つける力を鍛える必要があるということです。二つ目は「問題を解く力」です。そのために必要な知識や技術を学び、それを自らの研究に役立てることも必要になります。そして三つ目は「粘り強く考える力」です。自ら研究テーマを設定し論文を仕上げるためには、相当な努力が求められますが、それを成し遂げるためには「あきらめずに時間をかけて粘り強く考え続ける力」が求められるということです(『探求する精神』141~147頁)。私の拙い経験からも大栗さんが指摘される「三つの力」はとても大切なものだと思います。ぜひ皆さんがこの力を身につけられるように努力して下さい。

以上申し上げたような学びの姿勢はとても大切ですが、それに加えてぜひ心にとどめておいてほしいことがあります。それは、自らの専門性を深めるだけの学び、つまり自身の関心のある専門知だけを深めていくのではなく、文系・理系に偏ることなく、自らの学びの幅を広げてほしいということです。最近、私はある新聞紙面の記事に目が留まりました。そこには次のように書かれていました。「先行きが不透明な時代、一つの専門を持つ『I(アイ)型』や、何でも幅広くできる『一(いち)型』ではなく、深い専門を縦軸に、広い教養と社会知を横軸に持つ『T型』、さらには複数の専門性にまたがり、互いを照らし合わせて考えることのできる『Π(パイ)型』の人物が求められています」(朝日新聞2023年1月16日)というものでした。私は常々、大学での学びにおいては、自らが所属する学部や研究科における専門知を中心とした学びに加えて、「様々な分野の専門知識を融合」させた学びを深めていくことも大切であると考えてきました。この記事はまさにそのことを端的に示しているのではないかと思います。

さらに皆さんの意識の中に入れておいてほしいことがあります。それは、学問は進歩していくと必ず分野が分かれて専門化していくということです。つまり、大きな幹から様々な専門分野が枝分かれして細分化されていきます。しかし、その一方でそれら細分化された専門分野の融合ということも起きていきます。特に将来のことを見通しにくい現代社会においては、様々な社会課題が山積しています。それらの諸課題にアプローチするためには、学問間ないし専門分野間の連携や融合の必要性が高まります。現代においてはそのようなことが必然的に生じてきますし、それは文系、理系という枠組みを超えて起こってくるはずです。知覚心理学者の下條信輔さんは、「現代のいろいろな科学分野の先端では、人文・社会科学的な現象ないし対象に自然科学的な方法論、特に計算科学によって提供された方法からのアプローチがおこなわれている」(『リベラルアーツと自然科学』83頁)と指摘しています。その一つの例に考古学があります。これまで考古学は「経験知や感性が重視」される「感性の学問」だとされていましたが、最近の先端的研究においては数理モデルや統計解析も活用した「数理考古学」という取り組みが注目されているようです(朝日新聞2023年3月21日)。これは最新の研究の一端ですが、文系の分野においても科学の力が求められることが多くみられるようになりました。一方、理系の分野においても文系の研究成果を活用しなければならない側面が増えているものと思います。そのため、すでに述べましたように、これから大学での学びを始めようとしている皆さんにとって、文・理の枠を超えた学びが大切になっているのです。

大学に入学した今、皆さんは好きなことを好きなだけ学ぶことができる自由な環境の中に身を置いています。ですから、皆さんは静岡大学で自由に学びの幅を広げていくことができます。世の中で起こっている様々なことに問題意識をもち、物事を探求する姿勢こそ大学生としての学び方であるはずですし、皆さんができる限り知的関心を広げて学んでいってほしいと思います。そして、これまでの自身の学びのスタイルを見直し、まさに学びの醍醐味をこの静岡大学で味わってほしいと思います。

私はこれまで、大学での学びについて私の皆さんへの期待をお話してきましたが、皆さんの学生生活が豊かになるためには、学びの他にもいろいろなことがあると思います。

次にお伝えしたいことは、皆さんが学生生活において出会う多くの人々と良い関係を築いてほしいということです。静岡大学には、学部と大学院を合わせて1万人を超える学生が学んでいます。本学に在籍する学生は静岡県内出身者ばかりでなく、全国各地から集まっています。まずは、皆さんが受け身になるのではなく、ぜひ自らの「口を開いて」心の扉を開け放ち、これまで出会ったことのない人との出会いを大切にしていただきたいと思います。そのような出会いは、同級生だけではなく、ゼミや研究室、さらにはサークルや部活動を通していろいろな機会があるはずです。場合によっては、皆さんの生涯に影響をもたらす同級生、先輩、教職員との出会いもあるのではないかと思います。そのような人との交流や語らいは皆さんのこれからの人生にとっても大切な機会になるはずです。ぜひそのような機会を大切にして下さい。また、本学にはアジアの国々ばかりでなく、アフリカ、北米、南米、ヨーロッパ諸国からも多くの留学生が学んでいます。そのような留学生との交流は言葉が一つの壁になるかもしれませんが、彼らは皆さんとの交流を待ち望んでいると思います。言葉、宗教、風俗、習慣の異なる国から目的をもって静岡大学へ留学した学生たちとの交流は、必ずやこれからの皆さんにとって大きな気づきや学びの機会をもたらしてくれるはずです。そして、皆さんが学生時代に培った人間関係は、必ずや生涯の財産となることでしょう。

そして、最後に私が皆さんに期待することは、世の中で起こっていることに関心を持ち、社会に対する自らの洞察力を磨いてほしいということです。私たちは今、21世紀に生きていますが、新型コロナウイルスなどの感染症や大規模な自然災害、そして世界で発生する軍事衝突とそれが引き金となって起こる社会経済変動など、まさに激動と混乱の時代だとも言えます。つまり、先行きが不透明で将来を見通すことが困難だということです。そのような中で、私たちは受け身になるのではなく、積極的に社会との接点を求め、自分にできることは何かという問いを自身に投げかけ、自らの判断により社会に働きかけていくことを考えてみて下さい。さらに、皆さんにとって静岡大学での学生生活が、自らへの「挑戦」の機会であってほしいと思います。これからの皆さんの人生において、学生時代は最も自由を謳歌できる時期です。それだけに、どのように過ごすのかということは皆さんに委ねられています。そうであるからこそ、自らの可能性を試してみるということに力を注いでみても良いのではないでしょうか。皆さんがやがて静岡大学を巣立つ日を迎える時に、「これだけはやり切った」と言えることにぜひ挑戦してみて下さい。皆さんの学生生活は他人から強制されるのではなく、自らの判断で自身の可能性を試し、さらに自身の新たな可能性を発見することができる機会ともすることができるはずです。皆さんが静岡大学を新たなことへの挑戦の場と位置付け、何に対しても常に能動的で、自らの想像力を発揮し、柔軟性をもって学生生活を送られることを期待しています。


最後になりますが、私たち教職員は、皆さんの学生生活が充実したものとなるように支援をしていきたいと考えています。どうぞ気軽に私たちに声をかけて下さい。そして、皆さんが静岡大学の優れた環境の中で、生き生きと学生生活を送ることができるよう心より願っています。改めまして、本日はご入学まことにおめでとうございます。以上をもちまして、私からの式辞とさせていただきます。

令和5年4月4日
静岡大学長 日詰 一幸

JP / EN