世界初!見ないで物の存在と位置を判定できる量子的方法を開発

2023/06/01
プレスリリース

見ないで物の存在と位置を判定できる量子的方法を開発!光を当てないで(相互作用をしないで)観測できる方法の実現へ
静岡大学および名古屋市立大学共同論文発表
Nature Research 社『Scientific Reports』2023年5月19日に掲載


【研究成果の概要】

静岡大学大学院総合科学技術研究科理学専攻の 冨田 誠 教授 および 名古屋市立大学大学院芸術工学研究科 の 松本 貴裕 教授 の共同研究グループは、光を当てないで(物理的相互作用をしないで)物の存在と位置を同時に判定できる量子光学※1的手法の開発に成功しました。

私たちが物を見るということは、そこに当たった光を捉えるということです。したがって、真っ暗闇の中では物は見えません。
しかし近年、観測対象に光子※2を1個も当てないのに、物体が存在することがわかる観測方法が考案されています。この方法は、量子光学の分野において“相互作用フリー測定(Interaction Free Measurements)”という名前で呼ばれています。
しかし、現段階までの研究において、この相互作用フリー測定は、物体の存在を断定することができる確率が低く、また、物体の位置情報まで入手することはできませんでした。

今回の研究において、光子を1個も当てずに、物体が存在するのみならず、物体の位置情報を100%の確率で判定することができる量子光学的手法の開発に成功しました。
今回の研究成果は、光を当ててしまうと容易に壊れてしまう分子や生体物質の分析や画像計測への応用に大きく寄与できるものと考えています。
また、本研究成果を用いることによって、将来のより安全な非侵襲型X線撮影技術の構築にも大きく貢献できるものと考えています。
本研究は、Nature Research 社の『Scientific Reports』に令和5年5月19日に掲載されました。


【用語解説】

※1 量子光学:
物理学の研究分野の1つで、光ならびに電磁場の波動性と粒子性を量子力学的に精密に取り扱う分野です。量子もつれ、量子テレポーテーション、レーザー冷却、ボーズ凝縮等、数々の物理的に重要なテーマが量子光学の考え方を基礎に置いています。また、近年、多くのノーベル物理学賞受賞者を輩出している分野でもあります。

※2 光子:
光子は電磁場の量子化によって出現する素粒子で、その挙動は波動性と粒子性の両方の特性を示します。光子の最小個数は1個で、これより小さな個数には分割できません。光子は質量を持たないため、真空中では常に光の速度(凡そ3×108 m/s )で伝播します。

申込み方法・問い合わせ先:

【研究に関する問い合わせ】
(I) 静岡大学 大学院総合科学技術研究科 教授 冨田 誠
住所:静岡県静岡市駿河区大谷836
TEL:054-238-4749        
E-mail:tomita.makoto[at]shizuoka.ac.jp

(II) 名古屋市立大学 大学院芸術工学研究科 教授 松本貴裕
住所:名古屋市千種区北千種2-1-10
TEL:052-721-5211        
E-mail:matsumoto[at]sda.nagoya-cu.ac.jp

【報道に関する問い合わせ】

(I) 静岡大学 広報・基金課
住所:静岡県静岡市駿河区大谷836
TEL:054-238-5179  FAX:054-238-4450
E-mail:koho_all[at]adb.shizuoka.ac.jp

(II) 名古屋市立大学 総務部広報室広報係
住所:名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1
TEL:052-853-8328  FAX:052-853-0551
E-mail:ncu_public[at]sec.nagoya-cu.ac.jp

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