東伊豆地域の隆起痕跡から過去のマグマ活動履歴を解明

2023/08/31
プレスリリース

東伊豆地域の隆起痕跡から過去のマグマ活動履歴を解明
伊豆・首都圏南西部の防災に向けた地震・火山現象の理解へ

【ポイント】

東伊豆地域は地下のマグマ活動などによって3,000年前ころから隆起している

特に過去1,500年間で400〜800年おきに約1 mずつ3回隆起した

相模湾から伊豆半島東部一帯で地震や火山の活動が相関して活発化している可能性を指摘した



【概要】

静岡大学 防災総合センター 小山 真人教授と、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)地質調査総合センター 連携推進室 国内連携グループ 宍倉 正展 グループ長、活断層・火山研究部門 海溝型地震履歴研究グループ 行谷 佑一 主任研究員、伊東市教育委員会 金子 浩之 主任学芸員は、静岡県伊東市周辺の海岸で発見した隆起痕跡から、東伊豆地域が地下のマグマの活動などによって400〜800年おきに隆起していることを解明しました。

静岡県伊東市周辺の海岸で調査したところ、通常は海面付近の岩礁に固着するフジツボ類やカンザシゴカイ類などの生物が、高い位置に干上がっている様子を発見しました。
それらは標高3.5 mまでの間で少なくとも三つのゾーンに分布しており、7世紀ころに約1.1 m、15〜16世紀ころに約1.3 m、19世紀以降に約0.8 m、それぞれ地盤が隆起したことがわかりました。
一部ではさらに高く標高4.2 mに3,000年前ころの隆起痕跡も見つかっています。
このことから少なくとも3,000年前ころから地盤が隆起を開始し、最近1,500年間では400〜800年おきに1 m余りずつ隆起していると考えられます。
本地域は東伊豆単成火山群(伊豆東部火山群)と呼ばれる小さい火山の集合体で、1930年や1970〜1990年代を中心に群発地震を伴うマグマの活動によって地盤が徐々に隆起したことがわかっています。
一番新しい隆起痕跡はこのときに残されたものであることがわかり、それより古い過去の隆起痕跡についても同様に地下のマグマ活動を反映している可能性があります。
それぞれの隆起時期は、相模トラフ沿いのプレート間巨大地震(1923年大正関東地震など)の発生時期や活断層(1930年北伊豆地震を起こした北伊豆断層帯)の活動時期などとも近接することから、伊豆半島東部から相模湾一帯で火山や地震の活動が相関して活発化している可能性を示しています。
本研究の発見は東伊豆地域や首都圏南西部の地震・火山防災を考えるうえで重要な情報となります。

なお、研究の詳細は2023年8月30日にTectonophysics誌に掲載されます。


【用語解説】

カンザシゴカイ類
多毛綱カンザシゴカイ科に属する環形動物の総称であり、石灰質の管を作ってすみ、殻蓋(かくぶた)で管の入口をふさいで身を守る。この殻蓋をカンザシに見立てたことからその名前がつけられた。特にヤッコカンザシPomatoleios kraussiiは平均海面付近に集中して生息することから、その隆起痕跡は過去の平均海面を示す指標として地殻変動の復元に有用である。

東伊豆単成火山群(伊豆東部火山群)
伊豆半島の東部および東方沖で1回の噴火ごとに火口の位置を変える小さな火山(単成火山)の集合体。おおよそ15万年前から活動しており、これまで約100個の小火山体を形成してきた。そのうちの一つの大室山は約4,000年前の噴火で形成されたきれいな円錐台形をなす火山で、東伊豆地域で人気の観光地となっている。

相模トラフ
相模湾から房総半島沖にかけて海底に延びる細長い凹地のことをいう。関東地方の陸地がのった陸のプレートの下に、南東から伊豆半島をのせたフィリピン海プレートが沈み込む場所になっており、このプレート境界に沿って過去から巨大地震がくりかえし発生している。

プレート間巨大地震
プレート境界でプレート同士がズレ動くことによって発生する巨大地震のこと。海溝やトラフ沿いで発生して大きな津波を伴う。1923年大正関東地震のほか、2011年東北地方太平洋沖地震や将来の発生が危惧される南海トラフ地震もこのタイプである。

本件に関する問い合わせ先:

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
地質調査総合センター 連携推進室 国内連携グループ
グループ長 宍倉 正展
〒305-8567 茨城県つくば市東1-1-1 中央第7
TEL:029-861-3911
E-mail:m.shishikura[at]aist.go.jp

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
活断層・火山研究部門 海溝型地震履歴研究グループ
主任研究員 行谷 佑一
〒305-8567 茨城県つくば市東1-1-1 中央第7
TEL:029-861-3685
E-mail:yuichi.namegaya[at]aist.go.jp
 
国立大学法人 静岡大学
防災総合センター
教授 小山 真人
〒422-8017静岡県静岡市駿河区大谷836
TEL:054-238-4635
E-mail:koyama.masato[at]shizuoka.ac.jp

【機関情報】
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