信頼されるソーシャルメディアの開発に向けた研究開発プロジェクトの採択(JST RISTEX SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(情報社会における社会的側面からのトラスト形成))
静岡大学情報学部の教員による研究開発プロジェクトが、科学技術振興機構社会技術研究開発センター (JST RISTEX) による「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(情報社会における社会的側面からのトラスト形成)」に採択されました。
【研究開発プロジェクト名】
ローカルエコーチェンバーをステアリングするトラスト調和メカニズムの認知的検討
【研究開発プロジェクトのポイント】
・フェイクニュースなどの情報社会における信頼を揺るがす問題に対し、現実の地域と接続するローカルSNSの構築により対抗
・ローカルSNSを多くの人に利用してもらうために、少数の人が集まった際におきるローカルエコーチェンバー(小さな閉じた社会のなかで意見や態度が画一化してしまう現象)のメカニズムを解明
・ローカルエコーチェンバーを集団の成員の内側にある認知の問題と捉え、人間の認知の傾向の計算機シミュレーションを実施
・シミュレーションの結果を利用することで、情報に対する信頼の度合いを適切に調整できるローカルSNSをデザイン
様々な地域に様々な地域性がありますが、本研究開発プロジェクトでは人間の認知の仕組みに基づくことで、汎用的なローカルコミュニケーションのデザインを目指します。
その鍵となる考え方が、サイバーな世界とフィジカルな世界の整列(アラインメント)です。
オンラインにおけるコミュニケーションの信頼性は、現実世界からの裏付けにより回復すると考えます。
信頼できるオンラインコミュニケーションの手段が確立されることで、地域社会における人と人の交流が豊かなものとなり、生産活動が活発化します。
この社会は、地域の伝統的な価値観を下敷きとしつつも、多様かつ新規な観点からの情報が持続的に生成される創発的な信頼社会となります。
【研究概要】
現代社会におけるトラストのゆらぎは、サイバーとフィジカルの関係のなかで生じる。実世界とオンラインの間で、獲得した情報にギャップが生じたとき、その情報を媒介したメディアへの過信が顕在化し、不信が生じる。この背景から、サイバーとフィジカルが重なる地域コミュニティにおいてトラストを適切に調和させる仕組みが必要になる。本研究開発プロジェクトでは、この仕組みを実現するために、ローカルエコーチェンバー(認知バイアスの集積による特定の態度への局所化)のステアリングを解決すべき問題として設定する。
研究開発項目としては、まず「①トラスト形成のメカニズム理解、阻害要因の分析」に向け、マイクロワールドを舞台とした行動実験およびシミュレーションを行う。マイクロワールドは、現実のソーシャルメディアの構造を抽象化したゲームとして実現する。ゲームを用いた参加者実験、その結果をシミュレーションするモデルを構築することで、ローカルエコーチェンバーをメカニズム的に理解し、ステアリングに至る要因を同定する。ここで得られたモデル(メカニズム)は、静岡県浜松市に所在する大学生向けのソーシャルメディアに適用され、フィールド実験を通して「②分析結果を踏まえた対策の開発」に橋渡しされる。この検討で扱うローカルなネットワークは、匿名性の高いグローバルなネットワークに対し、その気になればユーザ同士が現実社会において繋がれる点に特徴がある。このサービスを持続可能なものとするため、技術を活用した介入、ユーザへのリテラシー教育、経済性を考慮した制度を検討する。この検討により、「③社会実装手法と効果測定法の提案」へ結びつける。
【研究開発実施体制】
メカニズム検討グループ
森田純哉(情報学部教授、研究代表者)
竹内勇剛(情報学部教授)
大本義正(情報学部准教授)
リテラシー実施グループ
遠山紗矢香(情報学部講師、グループリーダー)
市川淳(情報学部助教)
社会実装グループ
高口鉄平(情報学部教授、グループリーダー)
遊橋裕泰(情報学部教授)
【研究期間】
2023年11月〜2027年3月
問い合わせ先:
(研究に関すること)
静岡大学情報学部
教授・森田 純哉
TEL : 053-478-1452
E-mail : j-morita[at]inf.shizuoka.ac.jp
(報道に関すること)
静岡大学 広報・基金課
TEL : 054-238-5179
E-mail : koho_all[at]adb.shizuoka.ac.jp
※[at]を@に変更してご利用ください。