令和5年度 静岡大学学位記授与式 を挙行しました

2024/03/27
学長メッセージ

令和5年度静岡大学学位記授与式を令和6年3月21日(木)・23日(土)に挙行しました。

21日(木)にアクトシティ浜松大ホールにおいて行われた浜松地区の学位記授与式では、学部学士課程卒業生719名、大学院修士課程修了生377名、大学院博士課程修了生18名に学位記が授与されました。
23日(土)にグランシップ大ホールにおいて行われた静岡地区の学位記授与式では、学部学士課程卒業生1,135名、大学院修士課程修了生177名、大学院博士課程修了生14名、大学院専門職学位課程名に学位記が授与されました。
当日、会場内では、笑顔で写真を撮られる様子が多く見られました。

日詰学長からは、「皆さん一人ひとりには、生来生まれ持った多彩な才能があります。その才能は全員が同じではありません。私は皆さんが自らの豊かな才能のもと、本学で学ばれた知を活かして、社会で大きく羽ばたいていかれることを心から期待しています。」との告辞がありました。
また、式典では学業成績が優秀な卒業生に対し、表彰状と記念品が贈られました。
最後に、卒業生・修了生を代表して浜松地区では工学部数理システム工学科の遠山拓実さん、静岡地区では教育学部学校教育教員養成課程の爲實薫さんから、学長をはじめとする教員等に対する謝辞がありました。

学位記授与式閉式後は、学位記授与式会場やキャンパス等において、学部・研究科ごとの学位記伝達式が実施されました。

*下記URLよりライブ配信のアーカイブ動画をご覧いただけます。(令和6年3月29日まで公開)
【浜松】https://youtube.com/live/V16S_cIJM58?feature=share
【静岡】https://youtube.com/live/v1ddmlElARg?feature=share

令和5年度静岡大学卒業・修了者数

◆ 学部等(学士課程)
【静岡地区】人文社会科学部 407名/教育学部 293名/理学部 211名/農学部 181名/地域創造学環 43名 | 計1,135名
【浜松地区】情報学部 215名/工学部 504名 | 計719名

◆ 大学院(修士課程)
【静岡地区】人文社会科学研究科 26名/総合科学技術研究科 理学専攻 78名/総合科学技術研究科 農学専攻 73名 | 計177名
【浜松地区】総合科学技術研究科 情報学専攻 63名/総合科学技術研究科 工学専攻 314名 | 計377名

◆ 大学院(博士課程)
【静岡地区】教育学研究科(博士) 6名/自然科学系教育部 8名 | 計14名
【浜松地区】光医工学研究科 0名/自然科学系教育部 17名 | 計17名

◆ 大学院(専門職学位課程)
【静岡地区】教育学研究科(専門職) 35名 | 計35名

◆ 論文博士
【浜松地区】自然科学系教育部 1名 | 計1名

学位記授与(浜松)

学位記授与(浜松)

成績優秀者表彰(浜松)

成績優秀者表彰(浜松)

学位記授与(静岡)

学位記授与(静岡)

成績優秀者表彰(静岡)

成績優秀者表彰(静岡)

学長から卒業生・修了生に向けて、今後の活躍を期待し、告辞がありました

学長から卒業生・修了生に向けて、今後の活躍を期待し、告辞がありました

令和5年度静岡大学学位記授与式 学長告辞

卒業生、修了生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。ここに、静岡大学教職員を代表して、お祝いを申し上げます。そして、卒業生・修了生の今日この日を心待ちにしてこられた、ご家族・保護者の皆様にも心よりお祝い申し上げます。

静岡大学の学位記授与式は、ここ数年コロナウイルスの感染防止を優先するため規模を縮小するなど、これまでとは異なった対応をしてきました。しかし、昨年5月8日以降、新型コロナウイルスは5類感染症と位置付けられたことから、それまで私たちに課されてきた多くの制約が緩和されました。現在、静岡大学における教育研究活動はほぼコロナ前の状態に復帰しています。そのため、今年度の学位記授与式も従来の方式に基づいて開催することができました。そして、私たちは本日ここにハレの日を迎えられた卒業生・修了生の皆さんの晴れ晴れとして清々しいお顔を拝見することができることを大変うれしく思っています。
 
思い起こせば、本日卒業・修了される皆さんはまさにコロナ禍の中で学生生活を経験された方々です。特に、本日学士課程を終えて卒業される皆さんは、入学した当初から新型コロナウイルスの感染の広がりとともに、授業や部活動をはじめ、本来ならば経験することのできた学生生活の多くに様々な制約が課されたと思います。このような状況は本日大学院を修了される皆さんにも共通しているはずです。私は、コロナ禍という大変困難な状況の中にあっても、決してくじけることなく勉学に励み、本日卒業・修了を迎えられた皆さん一人ひとりに心からの賛辞を贈りたいと思います。与えられた状況が難しいことであっても、皆さん自身が想像力を発揮して、どうすれば円滑に自身の学びや研究を進めることができるのか、様々な工夫をされたのではないかと推察します。そのような取り組みの一つ一つは必ずやこれからの皆さんの人生に良い影響をもたらすことになるはずです。
ところで、本日卒業・修了される皆さんの多くは、ちょうど20世紀末から21世紀の初めの年に生を受けて育った方々です。私たちは今、21世紀に生きていますが、この世紀は激動と混乱の時代なのかもしれません。21世紀の初頭からアメリカ同時多発テロ事件を皮切りに、世界のあちこちで軍事衝突等国際社会を震撼させる出来事が多数起きています。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から2年が経過しましたし、昨年はパレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの軍事衝突も起こりました。これらの紛争も依然として解決の糸口を見いだせない状況が続いています。世界の英知が結集して、一日も早くこの事態を解決する方策を見出してほしいと願っています。そして、このような軍事衝突だけではなく、私たちの不安を煽るような大地震をはじめとする自然災害が多数発生しています。今年1月1日に発生した能登半島地震は私たちの記憶に新しいと思います。犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、一日も早い復興を願わずにはいられません。
このように現代社会では、私たちが予測することのできないいろいろなことが起きています。新型コロナウイルス感染症の蔓延や巨大化する自然災害、世界で発生する軍事衝突、そしてそれらが引き金となって生じる社会経済的変動等、私たち自身の上に突然降りかかってくる様々な諸問題を予見することが極めて難しい時代に生きているということを実感することができます。
このように混とんとして先行きを見通すことが難しい時代に生きている皆さんにとって大切なことはどんなことでしょうか。私はこれから皆さんに期待していることを三つお伝えしたいと思います。

一つ目は、これからも学びの幅を広げ学び続けてほしいということです。
静岡大学で学ばれ、深い専門知を身につけられた皆さんが、その専門知を活かして、多様化し複雑化した社会課題や困難な問題に立ち向かっていただくことを、社会は期待していると思います。現代社会では科学技術が急速に発展し、様々な技術革新が進展し、私たちの社会を大きく変えようとしています。まずは、その現実の姿を理解することが必要です。そして、それにとどまらず皆さんの学びの幅を広げていくことも大切だと思います。最近、リスキリングやリカレント教育という言葉が聞かれるようになりました。もちろん、大学はそのような社会の変化に対応し、学ぶ意欲を持った人々にその機会を提供する責任があり、本学でもそのような環境を整えていきたいと考えています。私は皆さんが、本学を巣立ってもぜひ主体的に学ぶ機会を多く持っていただき、その学びの幅を広げていかれることを期待します。
つまり、現代社会が抱える諸課題の解決策は総合的な観点からのアプローチが求められ、様々な学問領域の専門知の融合により解決策が見いだされる可能性が高いと考えられるからです。皆さんは本学において、ある専門領域においてかなり多くの知を学ばれましたが、これからは他の学問領域の知への眼差しもぜひ持っていただきたいと思います。様々な専門領域にまたがり皆さんの知の幅を広げていくこと、すなわち「総合知」を意識した学びが大切です。皆さんには、そのような学びのスタイルがこれから多く求められていくのではないかと感じています。ぜひ社会に出られてもそのことを意識した学びを進めていただきたいと思います。
そのように自らの学びの幅を広げて社会を俯瞰する時に、現実に今起こっていることがどのようなことであり、そのために自らがすべきことは何かということが少しずつ見通せるようになるはずです。

次に私が皆さんへお伝えしたいことは、皆さん一人一人が抱いている「志」を大切にしていただきたいということです。自身が抱いた「志」を実現した一人の本学卒業生のことをご紹介したいと思います。その方は、現在「国境なき医師団日本」で事務局長を務めておられる村田慎二郎さんです。昨年暮れに村田さんが大学を訪れ、ご自身のこれまでの経験を記した本を出版したということで、私にそれを届けて下さいました。『「国境なき医師団」の僕が世界一過酷な場所で見つけた命の次に大事なこと』(サンマーク出版、2023年)というのが、その本のタイトルです。村田さんは本学を卒業後、一度IT企業に就職しましたが、その後、「見るだけではなくて、世界でもっとも弱い立場にいる人たちに、自分の仕事のスキルを通じて貢献したい」(同書、125頁)とご自身の志を立てて、それを実現するために国境なき医師団の仕事に人生を捧げる決意をされました。実際に国境なき医師団に転職するにあたり多くの困難がありましたが、2005年、見事に様々な困難を乗り越えて入団を果たしました。国境なき医師団は医療従事者ばかりでなく、村田さんのように非医療従事者も重要な任務を果たしています。村田さんは、国境なき医師団に入団後、世界のいくつかの紛争地帯の最前線で医療従事者を支える仕事をしました。特にシリア、南スーダン、イエメンなどの紛争地帯での経験は長く、現地でまさに命を懸けて仕事に従事しました。やがて、村田さんの仕事に向き合う真摯な姿が評価され、「国境なき医師団の歴史の中で日本人としてはじめて、派遣国のすべてのプロジェクトを指揮する現地の活動責任者に抜擢」(同書、9頁)されました。そして、今は国境なき医師団日本の事務局長として日本の事務局の運営に従事しています。その本の中で、村田さんは「この限りある命をどのように使うかという『命の使い方』こそが、生きていく上で重要だ」(同書8頁)と述べています。私も彼と話していて、一度立てた「志」を実現するために努力を続け、今、その「志」を実現し充実した人生を送っている姿に感銘を受けました。村田さんのように本学の卒業生は皆、社会の構成員として様々な役割を担い、それぞれの場で活躍をしておられます。本日、静岡大学を巣立って行かれる皆さんもそれぞれ「志」を持っておられると思います。ご自身の「志」を実現するためにこれからも努力を続けることはとても尊いことです。ぜひ、皆さんの「志」が実現するように励んで下さい。

最後三つ目は、皆さんが「寛容さ」を忘れず、いつもそのような思いを持ち続けていただきたいということです。私は最近、作家でもあり精神科医でもある帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんが書かれた『ネガティブ・ケイパビリティ』(朝日選書、2017年)という本を読みました。その本の中で帚木さんは、寛容の本質を「ものの道理、人を人として尊ぶ考え、過度に一方に与する行為への制止、行き過ぎた行為への警告という、静かな道筋」であり、「あくまでつつましやかな、目に見え難い」(同書、211頁)ものだとしています。そして、「寛容は大きな力を持ち得ません。しかし、寛容がないところでは、必ずや物事を極端に走らせてしまいます」とも述べています。さらに、「悲しいことに、現在は不寛容が社会に深く根を張りつつあるのです。格差や貧困、差別が存在するときこそ、寛容の精神が発揚されなければいけないのにもかかわらず、喧嘩腰の不寛容さが世の中を支配しています」(同書、219頁)と、現代社会に警鐘を鳴らしています。帚木さんは、不寛容の行き着く先は争いであり、それがさらにエスカレートすると戦争に至るとも述べています。現在、先行きを見通すことができない難しい時代に私たちは生きていますが、このような時代だからこそ、私たち一人一人が「寛容さ」を意識し続けることがとても大切ではないかと思います。
加えて、私は「寛容さ」とともに、「共感」する力も大切だと考えています。帚木さんは、共感は「人間の最高の財産」(同書、239頁)であり、「共感の力こそが人生を変える」(同書、243頁)とも述べています。皆さんのこれからの人生行路の中で、「寛容さ」と「共感する心」を持ち続けて生きて下さることを切に願っています。

最後になりますが、皆さん一人ひとりには、生来生まれ持った多彩な才能があります。その才能は全員が同じではありません。私は皆さんが自らの豊かな才能のもと、本学で学ばれた知を活かして、社会で大きく羽ばたいていかれることを心から期待をしています。
本日卒業・修了される皆さんのこれからの人生の上に幸多かれと心より祈り、私の挨拶とさせていただきます。


2024年3月21日、3月23日
静岡大学長 日詰 一幸

浜松地区の卒業生・修了生を代表して工学部 遠山 拓実さんから謝辞がありました

浜松地区の卒業生・修了生を代表して工学部 遠山 拓実さんから謝辞がありました

静岡地区の卒業生・修了生を代表して教育学部 爲實 薫さんから謝辞がありました

静岡地区の卒業生・修了生を代表して教育学部 爲實 薫さんから謝辞がありました

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