3-クロロ安息香酸分解細菌の全ゲノム配列の解読　－市民科学：静岡大学2023年度公開講座に参加した高校生10名との共同研究－

静岡大学静岡共同利用機器センターの森内良太技術専門職員、兼崎友特任助教、道羅英夫教授、静岡大学農学部の小川直人教授、および本学公開講座「ゲノム解析の最前線へようこそ！」に参加した静岡県内の高校生10名らの研究グループは、3-クロロ安息香酸分解細菌 Paraburkholderia sp. strain 22B1P株の全ゲノム配列の解読に成功しました。

【研究のポイント】
・3-クロロ安息香酸分解細菌の全ゲノム配列の解読に成功
・3-クロロ安息香酸及び3-クロロカテコール分解遺伝子クラスターの推定に成功
・静岡大学の公開講座に参加した高校生１０名との共同研究の成果

本研究では、静岡県静岡市内の土壌から新規単離した土壌細菌 Paraburkholderia sp. strain 22B1P株の全ゲノム情報を解読しました。
この細菌は3-クロロ安息香酸※（3-CB）を単一炭素源として利用することが可能な細菌で、3-CB及びその中間代謝産物である3-クロロカテコールを分解するのに必要な遺伝子クラスターを染色体DNA上に保持していることを見出しました。
※３-クロロ安息香酸
環境汚染物質として知られるPCBが生物分解される際の中間代謝産物の1つ。芳香族塩素化合物の分解細菌を新規探索する際のモデル化合物としてよく用いられる。

本研究で得られた研究成果は特に、芳香族塩素化合物3-CB分解細菌の発見とそのゲノム情報の整備という意味で価値があり、将来的には微生物を用いて土壌汚染物質の除去をおこなうバイオレメディエーションの効率を高める技術に貢献することが期待できます。

なお、本研究成果は、2024年4月11日に、アメリカ微生物学会の発行する国際オンライン雑誌「Microbiology Resource Announcements」（Volume 13, Number 4）に掲載されました。


【研究者コメント】
■ 静岡大学静岡共同利用機器センター　特任助教・兼崎 友（かねさき ゆう）
高校の教科書にはDNAについての様々な知識や実験技法が載っていますが、それらが大学の研究活動の場でどのように用いられ、新たな発見に繋がるのかを直に体験できる実験公開講座として企画しました。
細菌の環状ゲノムが完成した際の生徒の皆様の表情が印象的でした。

■ 静岡大学静岡共同利用機器センター　技術専門職員・森内 良太（もりうち りょうた）
県内の高校生と共著で論文が出せたことは、とても感慨深いです。
さらにこの22B1P株では、分解遺伝子群の構造の一部がこれまでに単離されている3-CB分解細菌のものとは異なっていることが判明しており、今後、さらにこの菌の特徴について明らかにしたいと考えています。