【キャンパスミュージアム】フォールアウト試料(放射性降下物)に関するセミナーを実施しました

2025/01/17
ニュース

静岡大学は、1月14日に『静岡大学 フォールアウト試料に関するセミナー』を開催しました。

本セミナーは、五十嵐 康人 京都大学複合原子力科学研究所特任教授(2024年6月までは日本放射化学会会長)の研究グループが、本学所蔵のフォールアウト試料(放射性降下物:第五福竜丸事件由来)を分取するために来学するのに併せて実施されたものです。
五十嵐特任教授は、厚生労働省による「原子爆弾の投下に伴う放射性降下物の拡散状況等に関する調査等一式」を実施しています。

セミナーでは、下記5つの演題での講演があり、参加者からの質疑やゲスト間での議論が盛んに行われました。

【演題及び講演者】
「黒い雨」領域の推定に関する基礎的な研究について|五十嵐 康人(京都大学特任教授)
土壌サンプリングについて|足立 友紀(株式会社アトックス)
「黒い雨」の放射能測定と土壌内分布について|八島 浩(京都大学助教)
原爆由来の熔融粒子に関する研究|遠藤 暁(広島大学教授)
放射性降下物の広島での分布について|猪股 弥生(金沢大学准教授)


セミナーの翌日にはフォールアウト試料分取が行われました。
分取に先立ち、五十嵐特任教授は本試料の解析について、

現在まで、広島・長崎の原爆フォールアウトの粒子は誰も見たことがない。
静大が保管する試料は水爆実験由来と発生源はやや異なるが、放射性微粒子が含まれている可能性があると考えられるので、観測できればどのような性状をもつのか大いに参考にしたい。

放射性微粒子の形で発見することができれば、現在の様々な最新機器で解析することで、物質の性状などの基礎的な情報が得られ、黒い雨の化学的性質(銅亜鉛箔をも酸化する力があったと考えられる)などの理解につながり、放射線や放射性物質利用の安全性の担保や評価がさらに深まる。
さらに、黒い雨の数値再現モデルにも放射性物質の物性を取り入れられる可能性があり、そうなればモデルの精度向上が図れる。

1950年代~70年代までは核実験フォールアウトは盛んに研究されたが、電子顕微鏡を用いた研究は数少なく、放射性物質のみに関する研究が主体であった。
この反省の下にフォールアウト物質の物性全般の研究ができればと考えている。

密封保存された資料なので、残留する放射性物質はそのほかのグローバルフォールアウトによるコンタミネーションが少なく、その点でも有益ではないかと考えている。


と期待を述べました。

本学キャンパスミュージアムでは、ビキニ環礁で被爆して帰還した第五福竜丸の死の灰に汚染された船体の一部などの貴重なフォールアウト試料を所蔵しています。
今後、このフォールアウト試料により研究が進展し、原爆影響のより正確な理解が進めば幸いです。

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