国立大学法人 静岡大学

ガーベラの全ゲノムを染色体レベルで解読 -キク科植物の進化と分子育種を加速する基盤情報を確立-

2026/02/19
プレスリリース

静岡大学農学部の富永 晃好(とみなが あきよし)助教の研究グループとかずさDNA研究所は、キク科の花き作物であるガーベラ(Gerbera hybrida)の全ゲノム配列を染色体レベルで解読することに成功しました。


【研究のポイント】

・ガーベラについて初めて染色体レベルの高品質ゲノム配列を解読
・核ゲノム約23億塩基対の99%以上を25本の染色体に対応づけて構築
・約36,000個のタンパク質コード遺伝子を同定し、機能注釈を実施
・キク科植物に共通する全ゲノム三倍化(進化イベント)を染色体レベルで実証
・ガーベラおよびキク科植物の分子育種・進化研究の基盤情報を確立



■ 研究内容・研究成果について

本研究は、花き作物ガーベラを対象に、長鎖DNAシーケンス技術(PacBio HiFi)と染色体立体構造解析(Hi-C/Omni-C)を組み合わせることで、染色体レベルの高精度ゲノム解読を行ったものです。その結果、核ゲノム約23.2億塩基対のうち99.3%を25本の染色体に対応づけて構築し、花色や花形形成、病原抵抗性などに関与すると考えられる遺伝子を含む約36,000 個の遺伝子を同定しました。さらに、オルガネラゲノムの解読をするとともに、ゲノム解析によりキク科植物に共通する全ゲノム三倍化イベントを明らかにしました。


■ 今後の展望と社会への還元について

本研究成果は、ガーベラにおける花色や花形、開花特性の分子メカニズム解明や、ゲノム編集技術を活用した新品種育成の加速につながると期待されます。
また、二倍体植物であるガーベラは、キク科植物研究における遺伝子機能解析のモデルとして有用であり、花き産業の高度化や園芸分野の基礎研究の発展に貢献することが期待されます。
なお、本研究成果は、Oxford University Pressの発行する国際雑誌「DNA Research」に、2026年2月5日にAdvance Access として掲載され、2026年2月19日に報道解禁されました。


【研究者コメント】
静岡大学農学部 助教・富永 晃好


ガーベラ研究の基盤となる信頼性の高いゲノム情報を整備できたことは大きな一歩です。
本成果を起点として、花き育種や園芸研究の発展に貢献していきたいと考えています。

【研究概要】

本研究は、青柳 優太(かずさDNA研究所)および島田 理暉(岐阜大学大学院連合農学研究科)を第一著者とし、富永 晃好(静岡大学農学部)を責任著者とする研究成果です。静岡大学を中心とする研究グループは、キク科植物ガーベラ(Gerbera hybrida)について、初めて染色体レベルの高品質ゲノム配列を解読しました。本研究では、最新の長鎖DNAシーケンス技術(PacBio HiFi)と染色体立体構造解析(Hi-C/Omni-C)を組み合わせることで、約23億塩基対からなるガーベラの核ゲノムの99%以上を25本の染色体に対応づけて解読することに成功しました。
本成果は、ガーベラ育種の高度化に貢献するだけでなく、被子植物最大の科であるキク科植物の進化理解や分子育種研究の基盤情報として、今後幅広い分野への応用が期待されます。


【研究背景】

ガーベラは、切り花として世界的に重要な花き作物であり、花色や花形の多様性から観賞用植物の代表的存在です。一方で、現在流通している多くの品種は異種間交雑によって作出されており、遺伝的背景が複雑であることから、分子レベルでの育種研究を進めるための基盤情報が不足していました。
また、ガーベラが属するキク科(Asteraceae)は、約3万種を含む被子植物最大の科でありながら、系統的に基部に位置するグループ(ムティシア亜科)のゲノム情報はこれまで未解明でした。
そのため、ガーベラの高品質ゲノム解読は、キク科全体の進化史を理解する上でも重要な課題とされてきました。


【研究の成果】

本研究では、以下の主要な成果を得ました。
・染色体レベルの核ゲノム配列を解読
 ゲノムサイズ約23.2億塩基対のうち、99.3%を25本の染色体に対応づけて構築しました。
・約36,000個のタンパク質コード遺伝子を同定
 花色形成、花形制御、病害抵抗性などに関与すると考えられる遺伝子群を網羅的に注釈しました。
・葉緑体・ミトコンドリアゲノムも完全解読
 核ゲノムに加え、2種類のオルガネラゲノムの構造と遺伝子構成を明らかにしました。
・ゲノム重複(全ゲノム三倍化)の進化史を解明
 ガーベラが、キク科植物に共通すると考えられる古い全ゲノム三倍化イベントを経験していることを、染色体レベルの比較解析により実証しました。

これらの成果により、ガーベラは今後、キク科植物研究の新たなモデル植物として活用できることが示されました。


【今後の展望と波及効果】

本研究で得られたゲノム情報は、
・花色・花形・開花特性などの分子育種の加速
・ゲノム編集技術を用いた新規品種開発
・キク科植物の進化・多様化機構の解明
・他の花き・作物への応用研究

など、多方面への波及効果が期待されます。
特に、ガーベラは二倍体植物であることから、複雑な倍数体系作物が多いキク科の中で、遺伝子機能解析のモデル系として重要な役割を果たすと考えられます。


【論文情報】

掲載誌名:DNA Research
論文タイトル:Chromosome-level genome assembly of the Gerbera (Gerbera hybrida) using HiFi long-read and Hi-C technologies
著者:Yuta B. Aoyagi†, Riki Shimada†, Hideki Hirakawa, Atsushi Toyoda, Hidehiro Toh, Sachiko Isobe, Naoyuki Tajima, Kenta Shirasawa, Tokumasa Horiike, Hiroshi Fujii, Tao Fujiwara, Masaru Bamba, Takashi Nakatsuka, Akiyoshi Tominaga*
†:本論文に同等に貢献した第一著者
*:責任著者
DOI:https://doi.org/10.1093/dnares/dsag002


【研究助成】

本研究は、以下の支援を受けて実施されました。
・日本学術振興会 科学研究費助成事業(JSPS KAKENHI)
(JP22H04925 (PAGS)、JP22K05628、JP22H05172、JP22H05181)
・かずさDNA研究所 財団支援


【用語説明】

ゲノム:生物がもつ全遺伝情報の集合
染色体レベルゲノム:DNA配列が染色体単位で再構築されたゲノム情報
HiFiシーケンス:高精度な長鎖DNA配列を取得できる次世代シーケンス技術
Hi-C(Omni-C):染色体の立体構造情報を利用して配列を並べる解析手法
全ゲノム三倍化:進化の過程でゲノム全体が3セットに増えた現象

問い合わせ先:

(研究に関すること)
静岡大学農学部
助教・富永 晃好(とみなが あきよし)
TEL:054-631-4602
E-mail:tominaga.akiyoshi[at]shizuoka.ac.jp

(報道に関すること)
静岡大学 広報・基金課
TEL:054-238-5179
E-mail:koho_all[at]adb.shizuoka.ac.jp

公益財団法人かずさDNA研究所 広報・教育支援グループ
TEL:0438-52-3930
E-mail:kdri-kouhou[at]kazusa.or.jp

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