令和7年度 静岡大学学位記授与式を挙行しました
令和7年度静岡大学学位記授与式を令和8年3月17日(火)・24日(火)に挙行しました。
17日(火)にアクトシティ浜松大ホールにおいて行われた浜松地区の学位記授与式では、学部学士課程卒業生734名、大学院修士課程修了生408名、大学院博士課程修了生17名に学位記が授与されました。
24日(火)にグランシップ大ホールにおいて行われた静岡地区の学位記授与式では、学部学士課程卒業生1,106名、大学院修士課程修了生192名、大学院博士課程修了生10名、大学院専門職学位課程47名、論文提出による博士1名に学位記が授与されました。
当日、会場内では、笑顔で写真を撮られる様子が多く見られました。
日詰学長からは、「皆さん一人ひとりには、生来生まれ持った多彩な才能があります。私は皆さんが自らの豊かな才能のもと、本学で学ばれた知を活かして、社会で大きく羽ばたいていかれることを心から願っています。」との告辞がありました。
また、式典では学業成績が優秀な卒業生に対し、表彰状と記念品が贈られました。
最後に、卒業生・修了生を代表して浜松地区では工学部機械工学科の田中政希さん、静岡地区では農学部生物資源科学科の幅裕香梨さんから、学長をはじめとする教員等に対する謝辞がありました。
学位記授与式閉式後は、学位記授与式会場やキャンパス等において、学部・研究科ごとの学位記伝達式が実施されました。
令和7年度静岡大学卒業・修了者数
◆ 学部等(学士課程)
【静岡地区】人文社会科学部 380名/教育学部 283名/理学部 213名/農学部 178名/地域創造学環 52名 | 計1,106名
【浜松地区】情報学部 222名/工学部 512名 | 計734名
◆ 大学院(修士課程)
【静岡地区】人文社会科学研究科 28名/総合科学技術研究科 理学専攻 91名/総合科学技術研究科 農学専攻 65名/山岳流域研究院 8名 | 計192名
【浜松地区】総合科学技術研究科 情報学専攻 72名/総合科学技術研究科 工学専攻 336名 | 計408名
◆ 大学院(博士課程)
【静岡地区】教育学研究科(博士) 2名/自然科学系教育部 8名 | 計10名
【浜松地区】光医工学研究科 4名/自然科学系教育部 13名 | 計17名
◆ 大学院(専門職学位課程)
【静岡地区】教育学研究科(専門職) 47名 | 計47名
◆ 論文博士
【浜松地区】自然科学系教育部 1名 | 計1名
令和7年度静岡大学学位記授与式 学長告辞
卒業生、修了生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。ここに、静岡大学教職員を代表して、お祝いを申し上げます。そして、卒業生・修了生の今日この日を心待ちにしてこられた、ご家族・保護者の皆様にも心よりお祝い申し上げます。
思い起こせば、四年前本学で行われた入学式は、コロナウイルスの感染が収束していないこともあり、感染予防への配慮から各学部・研究科の代表者だけが出席し、その他の新入生やご家族の皆様はオンラインで視聴していただくというものでした。しかし、その状況も一昨年5月8日以降、新型コロナウイルスが5類感染症と位置付けられたことから、それまで私たちに課されてきた多くの制約が緩和されました。現在、静岡大学における教育研究活動はコロナ前の状態に戻っています。そのため、今年度の学位記授与式も従来の方式に基づいて開催することができました。そして、私たちは本日ここにハレの日を迎えられた卒業生・修了生の皆さんの晴れ晴れとして清々しいお顔を拝見することができることを大変うれしく思っています。
さて、今年度本学では記念すべきいくつかのことを祝う年となりました。一つ目は、静岡大学の創基とも言うべき、1875年静岡師範学校の設立からちょうど150年を迎えたということです。静岡師範学校は本学教育学部の前身であり、150年もの長きにわたり初等・中等教育の要として静岡県の教育を支えてきたことはとても素晴らしいことだと思います。記念式典は本年3月14日に行われました。そして二つ目は、1965年に新制国立大学唯一の理工系附置研究所として設置されました電子工学研究所が60周年を迎え10月に記念行事を行ったということです。電子工学研究所における60年間に及ぶ研究成果の蓄積とその水準の高さは世界からも注目され、今もその存在を国内外にアピールし続けています。そして、三つ目は、1995年に誕生した情報学部が30周年を迎えたということです。本学における情報学部の設置は、当時の国立大学においては極めて先進的かつ先導的な取り組みであり、今日の高度情報化社会を先取りしたものと言えます。現在も情報学部での教育研究成果に地域社会から多くの期待が寄せられています。その記念式典は今年7月に予定されています。今年度は、改めて本学の歴史と伝統の重みを感じる機会となりました。
ところで、四年前の入学式で私が皆さんへの期待ということで、本学での学びに関することの他に二つのことをお話しました。一つ目は、皆さんと異なる考え、意見や主張を持つ人との交流を大切にしてほしいということでした。大学時代における人との交わりは生涯にわたって続くものだと思います。そのような関係性の中で、皆さんは自らの意見や考えとは異なる人と出会い、時には戸惑い、ある時には意見の対立も経験したのではないでしょうか。そしてそのような意見の違いの中にあっても、お互いに理解しようとする努力をされたと思います。これからも皆さんは意見や見解が異なる人との出会いを経験するはずですし、そのような機会は皆さんの「考えるという営み」を鍛える機会になるはずです。政治哲学者のハンナ・アーレントは『精神の生活』(<上、第一部 思考>、岩波書店)という本の中で、人が「考えることを放棄すると、判断が働かず、命令や慣行に流されやすくなる」という趣旨のことを述べています。皆さんはこれからも対話を続けることや自ら「考える」ということを大切にしていただきたいと思います。そして、何よりも皆さんが本学で培われた「自分とは異なるものと向き合う力」を持ち続けていただくことを期待します。
本日本学を卒業・修了される皆さんの多くは、四月から社会人として歩み始めることと思います。多様性を受け入れなければならない現代社会にあって、様々な意見の持ち主との対話の経験をぜひ役立てて下さい。
二つ目に私が皆さんにお話ししたことは、皆さんの学生生活が自らの殻を打ち破る「挑戦」であってほしいということでした。そして、皆さんが自らの創造力を働かせて、いろいろなことに挑戦してほしいということをお伝えしました。あれから四年。今、皆さんはご自身の学生生活を振り返ってみて、いかがでしたでしょうか。きっと、皆さんはいろいろなことに全力を尽くし、これだけはやり切ったというものを持っておられるのではないでしょうか。それは大きな成果である必要はありません。皆さんが本学で学ばれた四年間で手にした最も大きな財産は、何かに「挑戦する自分」だったのではないでしょうか。そのような経験は、これから社会に出られ、新たなことに挑もうとしておられる皆さんにとってはかけがえのないものになったはずです。静岡大学での学びや経験の一つ一つが、これからも皆さんの人生を支える大きな糧となることを切に願っています。
さて、私たちは今、21世紀という時代に生きていますが、この世紀は激動と混乱の時代なのかもしれません。21世紀の初頭からアメリカ同時多発テロ事件を皮切りに、世界のあちこちで軍事衝突が起きるなど、国際社会を震撼させる出来事が多数発生しています。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から4年が経過しましたし、パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの軍事衝突、更に最近はアメリカとイスラエルによるイランへの攻撃なども起こりました。残念ながらこれらの紛争は依然として解決の糸口を見いだせない状況が続いています。世界の英知が結集して、一日も早くこの事態を解決する方策を見出してほしいと願っています。
このように現代社会では、私たちが予測することのできないいろいろなことが起きる可能性が大きく、巨大化する自然災害、世界で発生する軍事衝突、そしてそれらが引き金となって生じる社会経済的不安等、私たち自身の上に突然降りかかってくる様々な諸問題を予見することが極めて難しい時代に生きているということを実感することができます。
私たちはこのように混とんとして先行きを見通すことが難しい時代をこれからも生き抜いていかなければなりません。その際、私は皆さんが静岡大学で培われた経験をもとに、豊かな人生を歩んでいただくことを心より願っています。
こうした時代の中にあって、皆さんがこれからの人生を歩むにあたり、ぜひ心にとめていただきたいことがあります。そのことを少しお話しさせていただきます。
2022年11月以降、社会に大きな衝撃をもたらしたことの一つに対話型生成AIの登場があります。すでに皆さんの多くがこの生成AIに触れる経験をされていると思いますが、とりわけChatGPTの登場は私たちの知的営みに大きな影響をもたらしています。文章を書くことやそれを要約すること。さらには翻訳やデータ分析に際しても、生成AIは大きな威力を発揮するようになりました。大学での使い方には一定程度の制約を課していますが、皆さんにとって今後の仕事や学びの場において、生成AIを抜きに語ることはできないのではないかと感じています。今や生成AIは私たちのパートナーとして位置づけられる時代がやってきたのかもしれません。AIは皆さんの「問い」に対して「答え」を提示します。つまり、「問われたこと」に対し、蓄積された過去のデータからその「問い」に対する「最適な解」を導き出します。とはいえ、あくまでも前例をもとに適切な「解」を我々に示しますので、前例のないことを我々に提示することはできません。そのため、今後私たちがAIに接する際に求められる力は、以下の四つに集約されると思います。第一に「問いを立てる力」です。課題を定義する力こそが、人間の知性の核心になるのではないかと感じます。
そして、二つ目の力は「編集力」です。AIが出力した情報を鵜呑みにするのではなく、批判的に検討し、組み換え、更にそれに新たな価値を付与する力が必要になるはずです。
さらに、三つ目は「倫理的判断力」が求められるということです。まさに倫理的な観点からAIが回答した内容について、適切な判断を下していくことが必要とされます。そのためにも、社会で起こる様々な事柄を倫理的に学び取ることの必要性が益々高まっていくことになります。
最後に求められることは、「学び続ける力」です。本学を巣立った後も文理の枠を越えて、学びや興味・関心の幅を広げ続けて様々な「学び」を続けてほしいと思います。
さて、静岡大学で学ばれ、深い専門知を身につけられた皆さんは、それを活かして、多様化し複雑化した社会課題や困難な問題に立ち向かっていくことを社会から期待されていると思います。現代社会では科学技術が急速に発展し、様々な技術革新が進展し、私たちの社会を大きく変えようとしています。まずは、その現実の姿を理解することが必要です。そして、それにとどまらず皆さんの学びの幅を広げていくことも大切だと思います。こうした時代に必要とされることは、単一の専門知だけに留まっていてはいけないということです。つまり、理系の知に文系の視点が必要ですし、文系の知に科学的思考が必須ということです。分野を越えて本を読み、異なる領域の知を結び付ける力が重要になります。アップル創業者の一人であるスティーブ・ジョブズはかつてiPad2の発表に際し、「テクノロジーだけでは十分ではない。テクノロジーとリベラルアーツの交差点にこそ、革新が生まれる」と語りました。まさに分野を越えた学びの中にこそ次につながる革新の源泉が隠されているということを述べたのではないかと思います。大学を卒業・修了することで皆さんの学びが終わるわけではありません。これからが皆さんの「学びの自立の始まり」です。毎年何冊の本を読むのか、そしてどのような分野の学びに挑戦するのか、更にはそれらを通してどんな人と議論するのか。このような日々の積み重ねが今後の皆さんの人生を形作ることに繋がっていくはずです。
このように自らの学びの幅を広げて社会を俯瞰する時に、現実に今起こっていることがどのようなことであり、そのために自らがすべきことは何かということが少しずつ見通せるようになるはずです。
今の時代は不確実性に溢れています。一方で、それだからこそ可能性にも満ち溢れていると言えるかもしれません。この様な時代を生きていく皆さんは、これからも引き続き挑戦する勇気を持ち続けて下さい。そして皆さんの考えとは異なる人の意見にも耳を傾けて下さい。そして、自ら問いを立て続け、学び続けて下さい。
これから皆さんは社会に出て働き、忙しい時間を過ごされることでしょう。そのような中にあってもご自身の時間を、自らを高めるために使うと同時に自らの楽しみのためにも使い、豊かな人生を歩んでいただくことを期待しています。
最後になりますが、皆さん一人ひとりには、生来生まれ持った多彩な才能があります。その才能は全員が同じではありません。私は皆さんが自らの豊かな才能のもと、本学で学ばれた知を活かして、社会で大きく羽ばたいていかれることを心から願っています。
本日卒業・修了される皆さんのこれからの人生の上に幸多かれと心より祈り、私の挨拶とさせていただきます。
2026年3月17日、3月24日
静岡大学長 日詰一幸






