国立大学法人 静岡大学

令和8年度静岡大学入学式を挙行しました

2026/04/14
ニュース

令和8年4月4日(土)、静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」大ホールにおいて、令和8年度静岡大学入学式を挙行しました。

式に先立ち、静岡大学管弦楽団と静岡大学混声合唱団による一幕が設けられ、管弦楽の響きに乗せた静岡大学学生歌「われら若人」の合唱が、入学生を華々しく迎えました。続いて、静岡大学混声合唱団により、同団の卒業生が作詞した愛唱曲「すずらん」の無伴奏合唱が披露された後、山上 純司氏の指揮の下で、静岡大学管弦楽団により楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の「第1幕への前奏曲」が演奏され、祝典の開幕となりました。

式では、日詰 一幸学長から、学部生2,023名(編入学生を含む。)、大学院生739名の入学生に対して、入学が許可されました。また、2026年は、浜松キャンパスの前身である浜松高等工業学校において、高柳健次郎博士が世界で初めてブラウン管での電子映像表示に成功して100年の記念すべき年であることが紹介されるとともに、「問いを生み出し、考え続ける力を育てる場」である大学において、学生時代に実践してほしいこと3点を挙げながら、入学生への式辞が送られました。

最後に、入学生を代表して、農学部生物資源科学科の高木 一花さんから、静岡大学での第一歩に向けて力強い宣誓が述べられました。

入学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これからの大学生活を、ともに活気ある有意義なものにしていきましょう。

 
令和8年度 静岡大学 入学者数

○ 学部(学士課程)
人文社会科学部    431名
教育学部       269名
情報学部       244名
理学部        236名
工学部        544名
農学部        179名
グローバル共創科学部 120名
       計 2,023名
※人文社会科学部、情報学部及び農学部には編入学生を含む。

○ 大学院(修士課程)
人文社会科学研究科  32名
総合科学技術研究科 616名
山岳流域研究院     8名
        計 656名

○ 大学院(博士課程)
教育学研究科      4名
光医工学研究科     6名
自然科学系教育部   26名
         計 36名

○大学院(専門職学位課程)
教育学研究科     47名
         計 47名

     合計 2,762名

------------------------

令和8年度 入学式式辞
 
 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。そして、ご家族・保護者の皆様にも、お子様のご入学を心よりお祝い申し上げます。

 静岡大学は今年度、学部学生2,014人、編入学9人、大学院修士課程656人、大学院博士課程36人、専門職大学院教育実践高度化専攻47人の合計2,762人の新入生をお迎えすることができました。ここに全学の教職員を代表致しまして、皆さんのご入学を心より歓迎致します。

 本日は、ご来賓の人文社会科学部同窓会長(岳陵会)・山下 徹様、教育学部同窓会会長・児玉 一記様、理学部同窓会会長・鈴木 富喜様、農学部同窓会会長・糠谷 明様、浜松キャンパスの同窓会組織である浜松工業会会長の河合 利夫様をお迎えして本学の入学式を挙行できますことを大変うれしく思います。

 皆さんが入学された静岡大学は、1949年に新制国立大学の一つとして誕生し、今年77年を迎えます。静岡大学は皆さんもご存じのように静岡と浜松にキャンパスを置く総合大学です。そのうち、浜松キャンパスの前身は、1922年に創設された浜松高等工業学校でした。今年は、その当時教員の一人であった高柳健次郎先生が1926年12月25日にブラウン管を用いた電送・受像に世界で初めて成功してからちょうど100年という記念すべき年でもあります。カタカナの「イ」の字を世界で初めて受像したということで、それ以来高柳先生はテレビの発展に大きく貢献され、「日本のテレビの父」とも呼ばれるようになりました。今年は、高柳先生の功績を称える様々な行事も予定されていますので、皆さんもぜひ興味・関心を持っていただければと思います。

 さて、皆さんは静岡大学で大学生としての生活を始めようとしています。そして、新たに始まる学生生活に大きな期待と夢を膨らませておられることでしょう。皆さんはこれからご自身が選択した学部や研究科に所属し、自らの問題関心に沿って学びを深めて行くことになります。「大学」を、一言で表現するとすれば「学問を追求する場」だと言うことができます。「学問」とは単に知識を蓄えることだけではありません。むしろ、常に「問いを立てること」そして、「その問いに向き合い続け、その問いに対して自ら考え抜く力」を養うこと、それこそが大学で学ぶことの意義であり、学問を学ぶことの本質ではないかと思います。高校までの学びでは、「正解」が用意されていることが多かったことでしょう。しかし、大学での学びにおいては、そのような「答え」は必ずしも存在しません。現在、世界が直面している課題の中には地球規模の気候変動や局所的に生じている軍事衝突などがあります。そして、国内に目を向けてみると地域社会の発展を削ぐような人口減少や社会経済格差の拡大、さらには技術革新の進展とそれに伴って生じる倫理の問題等があります。このように私たちを取り巻く世界を俯瞰してみると、難解で複雑な課題に満ちているということが分かります。その多くは「正解のない課題」だと言えます。だからこそ、大学は「答えを教える場ではなく」、皆さんが自ら「問いを生み出し、考え続ける力を育てる場」でなければなりません。

 そのためにぜひ皆さんに実践していただきことがいくつかあります。皆さんの大学生としての過ごし方に関して私の思いをお伝えしたいと思います。まず実践していただきたいことの一つが「本を読み考え続ける」ということです。本を読むということは、単に情報を得るということだけではありません。私は、「本を読み考える」ということは、他者の思考と出会い、時代や社会を超えて対話をすることだと考えています。そして、大切なことは、自分の専門や関心のある分野だけに留まらないということです。つまり、文系の学生は科学や技術に触れることが大切ですし、一方理系の学生は文学や哲学等の本を読み考えることが必要です。そのように文理を越えた読書や学びの経験は、皆さんの思考を豊かにし、解決の難しい複雑な問題に向き合う力を養ってくれるはずです。現代社会においては、一つの学問分野だけで解決策を見いだすことは極めて困難であり、ひろく様々な学問分野の融合や総合性が求められるということを知っておいてください。ある若手のAI研究者は、大学入学後に「世界のことを知らな過ぎた」ことを反省し、それから大学院で学び終えるまでに約2,000冊の本を読んだということです。そのジャンルを拝見して驚いたことは、実に幅の広い読書体験を持っていたことです。例えば、マルクスの資本論からはじまり経済や哲学の本、更には聖書も含めた宗教関連の本も手に取って、様々な思想に接したということです。そのような経験が自身の研究の幅を広げただけではなく、自身のAI研究にも大いに役立っているということです(『日本経済新聞』朝刊地方経済面・北陸、2026年2月5日、8面)。この若手研究者の約2000冊に及ぶ読書体験は、すべての本を隅々まで目を通したという訳ではないかもしれません。この点に関して、フランス文学者の石井洋二郎さんは最近出された本の中で、読書に関し「人間はしょせん読めるだけのことしか読めないし、わかるだけのことしかわからないものである。だから半分しか読めなくても躊躇なく本を閉ざしたり、ごく一部しか理解できなくても思い切って途中を読み飛ばしたりする大胆さが時には必要だ。それくらいの潔さがなければ、どの書物についても何ひとつ語ることはできない。――中途半端であることや生半可であることはけっして恥ずかしいことではない」と述べています(石井洋二郎『書物の航海へ』岩波書店、2026年、10頁)。私もそのように感じています。そのような気楽さをもってぜひ本に親しんで下さい。そして、自らの専門を深めると同時に異なる分野にも関心をもって学びを深め、皆さんの視野を広げていただきたいと思います。

 ところで、学士課程に入学された皆さんは、特に初年次の間、専門科目よりも教養教育の科目を多く学ぶことになります。これらの科目には語学も含まれ、高校までの延長だと受け止める人も多く、「何のために学ぶのか」と疑問を持つことがあるかもしれませんし、教養教育での学びは実用的なことの学びを重視する人からすれば「役に立たない」という捉え方をされることがあるかもしれません。しかし、「人間は実用的な目的のためだけに生きているわけでありません」(『教養の再生のために』影書房、2005年、13頁)。では、なぜ大学教育の中で、このような科目が用意されているのでしょうか。シカゴ大学名誉教授で日本文学を教えていたノーマ・フィールドさんは、リベラルアーツとされる教養教育の目的について、次のように述べています。「全般的な知性の拡充と洗練をめざし、技術的もしくは専門的訓練のために必要に狭く限定されない」学び、それが「教養教育」であるとしています(『祖母のくに』みすず書房、2000年、84頁)。フィールドさんが私たちに伝えたいと思っていたことは、これから大学という場で学ばれる皆さんが自立した一人の人間として成長していくにあたり、その基盤となるのが「特定の目的に縛りつけられない」学びの機会であり、そのような学びこそが大学で学ぶことの意義であるのではないか、ということだと私は解釈しています。
 やがて皆さんは学年の進行とともに、専門領域での学びの機会が増えていくと思います。その際ぜひ心にとめておいていただきたいことを評論家でもあり作家でもあった加藤周一という人がかつて次のように述べていました。「専門化が進めば進むほど、専門の境界を越えて動くことのできる精神の能力が大事になってくる。その能力を与える唯一のものが、教養なのです。だからこそ科学的な知識と技術・教育が進めば進むほど、教養が必要になってくる」と(『教養の再生のために』影書房、2005年、112頁)。教養教育を学ぶことは、皆さんが今後様々な領域で専門の学びを深めていくにあたり、その学びの基礎を形成するとともに分野を超えて総合的な思索を養ってくれるものではないかと思います。そして、文系・理系という枠を越えた様々な基礎的な学びが大切であるということを、皆さんに知っていただきたいと思います。このことは大学院で学ぶ皆さんにも言えることです。大学院では、学士課程での学びの上に立ち、専門的な学びをさらに深めていく場ですが、その際、一つの専門領域にとらわれず、ぜひ広く他の学問領域で蓄積された知にも触れ、思索の幅を広げていくことが大切だと思います。近視眼的には、役に立ちそうにも思えないことが、実はいつか役立つ時が来るということを、再度お伝えしておきます。

 次に皆さんに実践していただきたいことは、在学中に「これだけはやり切った」と言える経験を持っていただきたいということです。自らの研究活動でも課外活動でも構いません。何か一つ、自分が全力で取り組み、最後までやり抜いたと言えるものを持ってほしいと思います。その経験は、単なる成果以上に皆さん自身の内面に深く刻み込まれるはずです。そして、そのような経験は、皆さんが困難に直面した時に、自分を支える確かな礎になります。大切なことは才能ではなく、継続する力だと思います。ぜひ皆さんが様々なことに挑戦していただくことを期待しています。このことに関連して一つのことをお話ししたいと思います。アメリカの起業家でありアップルの最高経営責任者であったスティーブ・ジョブズは学生時代にカリグラフィーを学びました。一見すると彼の専門とは無関係に思えますが、その経験がのちにMacの美しいフォントの設計へとつながったことは良く知られています。「知の価値」とは、すぐに役に立つことだけにあるのではありません。むしろ、学び続けることが大切で、それがいつしか思いがけないところで大きなことに結びつく可能性があります。
 さらに皆さんの大学生活において大切なことがあります。それは、「人と出会い対話をすること」です。静岡大学には、学部と大学院を合わせて1万人を超える学生が学んでいます。本学に在籍する学生は静岡県内出身者ばかりでなく、全国各地からそして世界各国から集まっています。このような環境の中で皆さんは、これまで出会ったことのないような人と出会うことでしょう。そのような出会いは皆さんにとってかけがえのない経験となるはずです。これから皆さんには、同級生との新たな出会いばかりでなく、ゼミや研究室さらにはサークルや部活動を通じた先輩との出会い、そして皆さんの身近で学生生活を支える教職員との出会いなど、様々な出会いがあるはずです。皆さんはそのような新たな出会いの中から多くのことを学び、気づきを得る機会を持つことができます。自分とは異なる経験を持つ人との交流、そして自分とは異なる能力や才能を発揮する人との交流、そしてまだ出会ったことがない「すごいと思う人」との交流、このような交流の機会が皆さんのこれからの学生生活の前に開かれています。まずは皆さんが受け身になるのではなく、ぜひ自らの心の扉を開け放ち「口を開いて」、これまで出会ったことのない人との出会いを大切にしていただきたいと思います。そのような出会いは、同級生だけではなく、ゼミや研究室、さらにはサークルや部活動を通していろいろな機会があるはずです。場合によっては、皆さんの生涯に影響をもたらす同級生、先輩、教職員との出会いもあるのではないかと思います。そのような人との交流や語らいは皆さんのこれからの人生にとっても大切な機会になるはずです。ぜひそのような機会を大切にして下さい。また、本学にはアジアの国々ばかりでなく、アフリカ、北米、南米、ヨーロッパ諸国からも多くの留学生が学んでいます。そのような留学生との交流は、きっと皆さんに大きな気づきや学びの機会をもたらしてくれることでしょう。彼らは皆さんとの交流を待ち望んでいると思います。ぜひそのような交流も積極的に行ってください。

 私はこれまで、静岡大学へ入学された皆さんにこれから学生時代に実践していただきたいことを三つお話させていただきました。一つ目は専門や自らの関心だけに留まることなく、広い分野で「本を読み考え続けること」、そして二つ目は在学中に「これだけはやり切った」と言えるような挑戦の機会をもつこと、更に三つ目は自分とは異なる考えや価値観を持った「人と出会い対話をすること」でした。私は皆さんが、これらのことを心にとめて充実した学生生活を送られることを期待しています。

 最後になりますが、私たち教職員は、皆さんの学生生活が充実したものとなるように支援をしていきたいと考えています。どうぞ気軽に私たちに声をかけて下さい。そして、皆さんが静岡大学の優れた環境の中で、生き生きと学生生活を送ることができるよう心より願っています。改めまして、本日はご入学、誠におめでとうございます。以上をもちまして、私からの式辞とさせていただきます。

令和8年4月4日
静岡大学長 日詰一幸

JP / EN

Translate