肌が露出した脚は見る人の性別を問わず視線を引きつける ~女性の肌が露出した脚は男女双方の注意を捉えて離しにくい~
【ポイント】
・スカートや短パンから見える肌が露出した脚が他者の視線や注意を自動的に引きつけるかを検証。
・露出した脚は、脚を出している人、見る人の性別を問わず、衣服で覆われた脚より長く注視。
・女性の露出した脚は、課題と無関係でも男女双方の注意を捉えて離しにくいことが明らかに。
【概要】
北海道大学大学院文学研究院の 河原 純一郎 教授らの研究グループは、静岡大学教育学部の 鶴見 周摩 助教、福山大学人間文化学部の 反田 智之 講師と共同で、スカートや短パンなどから見えている脚(以下、肌が露出した脚)が、見る人の視線や視覚的注意を自動的に引きつけるかを、行動実験と視線計測実験により検証しました。
脚は顔と並んで人の印象を左右する身体部位であり、脚をきれいに見せるためのエクササイズや美容施術にも広く関心が集まっています。しかし、露出した脚が見る人の意図とは無関係に注意を奪う対象として働くのかは明らかではありませんでした。
本研究では、画面上の文字を探す課題の間、無関係な脚の画像を呈示し続ける実験と、ダンス動画を自由に見ているときの視線を計測する実験を行いました。その結果、肌が露出した脚はダンサーの性別や見る人の性別にかかわらず、衣服で覆われた脚よりも長く見られました。また、女性の肌が露出した脚は、男性の肌が露出した脚に比べて、男女双方の参加者の注意を捉えて離しにくいことが分かりました。一方、腕を露出させても、このような効果は生じませんでした。これらの結果は、肌が露出した脚が、見る人の意図とは無関係に注意を引きつける社会的な信号として働く可能性を示しています。
なお、本研究成果は、2026年9月18日(金)公開のConsciousness and Cognition誌にオンライン掲載されました。
【背景】
露出の多い服装は、メディアや日常生活で広く見られます。脚は人の印象を形づくる重要な身体部位であり、脚の長さの比率が魅力の判断に関わることや、脚の皮膚に健康状態が現れやすいことが知られています。これまでの視線計測研究では、身体のどの部位がよく見られるかは、見る人の性別や関心によって異なることが報告されてきました。しかし、露出した脚が見る人の目的とは無関係に注意を引きつけるのかは明らかではありませんでした。もし肌が露出した脚が自動的に注意を奪うのであれば、運転など注意を要する作業の妨げになる可能性もあります。そこで研究グループは、肌が露出した脚が見る人の性別を問わず注意を引きつける信号として働くかを検証しました。
【研究手法】
実験1では、成人108名が画面上に散らばった複数の文字「L」の中から、標的(横向きの「T」)を探し、その向きを答える課題を行いました。探索画面の左側には、課題と無関係な画像として、女性の肌が露出した脚、男性の肌が露出した脚、または肌が露出した脚の画像を元の形が分からないように加工した比較画像のいずれかを実験中常に呈示しました(図)。実験2では成人68名が、同じダンサーがステップを踊る2本の動画(一方は短パン、もう一方は長ズボン)を左右に並べて自由に見る間の視線を視線計測装置で記録しました。ダンサーは男女各1名でした。
【研究成果】
実験1では、探す文字が多く課題が難しい条件で、女性の肌が露出した脚が提示されていると、男性の肌が露出した脚の場合に比べて標的を見つけるまでの時間が長くなりました。さらに、女性の肌が露出した脚が呈示されている場合に限り、標的が脚と同じ側に現れると、反対側に現れる場合よりも速く見つかりました。これは、女性の肌が露出した脚が注意をその方向に引き寄せ、留めていたことを示しています。この傾向に参加者の性別による違いはありませんでした。
実験2では、動画の脚の領域を見た時間を分析したところ、男女の参加者ともに、ダンサーの性別にかかわらず、肌が露出した脚を覆われた脚よりも長く見ていました。顔を含む上半身が最もよく見られる中でも、この効果は生じていました。一方、腕を露出させても見る時間は変わりませんでした。このことから、この効果は単に肌の明るい領域が目立つためではなく、脚に特有のものと考えられます。
【今後への期待】
この成果は、衣装デザイン、広告マーケティング、エンターテインメント分野において、顧客・聴衆の視線を引きつける効果的な演出・視覚デザインに応用できると期待されます。一方で、高負荷な作業時や運転中などで意図しない注意の捕捉が見落としにつながるリスクの指摘としても重要な知見です。さらに、他者からの自動的な視線集中が引き起こす心理的影響(性的対象化やボディ・イメージに関する不安など)のメカニズム解明に向けた基礎データとしての活用も期待されます。
【謝辞】
本研究はJSPS科研費JP26K16937、JP25K00892、JP24K22818、JP23K18965の助成を受けました。
【論文情報】
論文名:The presence of bare legs captures visual attention and eye movements(肌が露出した脚の存在は視覚的注意と眼球運動を引きつける)
著者名:鶴見周摩 1,2※、反田智之 3※、河原純一郎1
(1:北海道大学大学院文学研究院、2:静岡大学教育学部、3:福山大学人間文化学部)※同等貢献
雑誌名:Consciousness and Cognition(意識と認知に関する専門誌)
DOI:10.1016/j.concog.2026.104133
公表日:2026年9月18日(金)(オンライン公開)
関連リンク
■ 鶴見 周摩 助教(教育学部)|静岡大学教員データベース|個人ウェブサイト
■ 静岡大学教育学部 知覚・認知発達研究室
■ 静岡大学教育学部
お問い合わせ先:
北海道大学大学院文学研究院
教授 河原 純一郎(かわはら じゅんいちろう)
TEL:011-706-4154
E-mail:jkawa[at]let.hokudai.ac.jp
URL:https://researchmap.jp/jik
配信元
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