知的財産ポリシー

平成15年11月11日 評議会決定
平成19年02月14日 一部改訂

静岡大学は、教育と研究を振興し、地域社会および国内外の問題を共有し共同して解決を図っていくための、知的財産に関する基本的考え方としてこの知的財産ポリシーを定めます。本ポリシーに基づき本学が有する知的財産の積極的な活用を図り、教育と研究の成果を社会に公開することを通して社会貢献の責任の一端を果たします。

1.知的財産の創造

本学は、信頼される知的財産を創造し、それを活用する事によって、新産業の創出や技術の革新を図り、社会から要請のある課題の解決に結びつく「イノベーション」となりうる成果が得られるよう努めます。

2.知的財産ポリシーの対象者

本ポリシーの対象者は、 本学の教職員、本学との間で研究成果又は発明等について何らかの契約を交わしている客員教員(寄附講座、寄附研究部門の教員を含む。)、ポスドク、学生、研究員、派遣職員、臨時職員であり、本ポリシー内で教職員等と表します。

3.知的財産の帰属

教職員等の創出した知的財産が、その性質上本学の業務範囲に属し、かつ、その知的財産を創造する行為が本学における教職員等の職務に属する場合、その知的財産を大学に帰属する知的財産権の対象とします。このように本学の教職員等の研究成果で創られた知的財産から生じる「特許権」、「実用新案権」、営業秘密である「ノウハウ」、「育成者権」、「データベース」、研究成果から得られた知的財産を含む有体物である「研究成果有体物」及び「回路配置利用権」を本学の帰属とします。
特別な場合、「意匠権」及び「商標権」を本学の帰属とする場合があります。なお、本学に帰属する知的財産権のうち、本学が承継しないもの等は、その創作者に返還します。

4.知的財産の活用

本学は、本学の知的財産を社会で役立てるためにその権利化と活用を行い、国内外で広く活用されるように努めます。このために、学外の産学官組織と連携する学内組織を強化し、技術移転機関などの協力と理解を得て、社会からの多様な知的財産に関連する研究への要請に適切に対応します。また、教育・研究の成果の具体化と本学が保有する知的財産の活用のために静岡大学発として創業された大学発ベンチャーへの積極的支援を行います。

5.知的財産の還元

教職員等は、本学の知的財産が特許の実施権供与や譲渡による活用だけではなく、共同研究、受託研究、技術指導、あるいは研究成果有体物の貸与・譲渡など、多様な形態を通した社会貢献により本学への還元がなされるよう努めます。本学は、これらの還元が、本学への社会からの信頼の証しとして捉え、その受け入れのための制度、規則と体制を設けて、知的財産の活用による収益の一部を、その創作者の教育研究活動へのインセンティブとします。

6.知的財産に関する教育

本学は、人智の長年の結集である特許法などの知的財産に関わる現代的ルールを遵守します。教職員等が知的財産権の創出・活用に積極的に関わることを奨励するとともに、教職員等は、知的財産について自らの啓発に努めます。また、本学は、本学で学ぶ者が知的財産に関する知識を得る機会を提供します。

7.知的財産のための組織と活動

本学は、知的財産戦略に係る重要事項の審議・決定機関として「知的財産戦略会議」を置きます。知的財産戦略会議の審議結果に基づき本学における知的財産の創出支援、これに係る権利の取得、管理及び活用を一元的に行うために、担当理事の下に「知的財産本部」を設置し、産学官連携部局である「イノベーション共同研究センター」と密接に連携して活動する体制を設けます。
知的財産本部は、知的財産権の権利行使のみを重視するのではなく、本ポリシーに基づき、本学及び連携相手との研究への支援活動として知的財産を取り扱います。また、知的財産本部は、学内外への知的財産に関する広報・啓発を行います。

8.本ポリシーに関連する規則など

本ポリシーに基づき「知的財産の取り扱いに関するガイドライン」を定めて、本学の知的財産に関する具体的な取り扱いを学内外に明らかにします。教職員等の知的財産に関する学内規則として、本ポリシーに基づき「国立大学法人静岡大学職務発明規則」を定めます。

知的財産に関するガイドライン

平成19年2月14日 評議会決定

1. 知的財産に関するガイドラインの目的

静岡大学(以下「本学」という。)は、知的財産ポリシーに基づき、本学における知的財産の創出、保護・管理及び活用に関する基本的な考え方を明らかにするため、このガイドラインを定め、これを学内外に公開する。これによって、本学の内外で産学官連携に携わる研究者等が共通に認識された基盤の上で、産学官連携をより一層活性化させ、地域への社会貢献の使命を十分に果たすことを目的とする。

2. 運用

(1) 規則・ポリシー

本学の知的財産権については、知的財産ポリシーのほか静岡大学産学官連携ポリシー及び学内規則に定められている。
また、利益相反事象における社会的な了解を受けるため、静岡大学利益相反マネジメントポリシー及び静岡大学利益相反マネジメント規則を定め、知的財産権の運用に関して公正さを担保しているところである。

(2) マネジメント体制

本学の知的財産戦略に係る重要事項の審議・決定機関として知的財産戦略会議を設置する。知的財産戦略会議の審議結果に基づき、本学における知的財産の創出支援、これに係る権利の取得、管理及び活用を一元的に行う組織として、理事(学術・情報担当)の下に知的財産本部を設置する。

(3) 適用対象者

本ガイドラインにおける適用対象者とは、本学の役員、常勤及び非常勤の教職員、研究成果について本学との間で何らかの契約を交わしている客員教員(寄附講座、寄附研究部門の教員を含む。)、ポスドク、学生、研究員、派遣職員、臨時職員(以下これらを総称して「教職員等」という。)である。

3. 知的財産の取扱い

知的財産に係る独占的・排他的な権利は、特許庁等への出願及びそれに伴う登録によって成立するものが大半である。本学は、教職員の行った発明保護のために、多くの発明等を出願して、権利化とその維持を希望するが、これらの手続きのためには、多額の費用を要することになる。したがって、権利化の可能性や社会貢献の可能性のみならず、市場性、費用などを総合的に考慮して係る発明等の出願、権利化、維持を決定する。
本学が知的財産について取り組む目的は、本学の研究成果たる知的財産を社会に有効に活用させ社会貢献を図ることにある。このため、研究の高度化と研究成果の創出を期待し、具体的な取り扱いについて以下の各号のとおり定める。

(1) 対象とする知的財産と取扱う部門

本学は、本学から創出される知的創作物のうち、「発明等」「研究成果有体物」「商標等」を本学の知的財産として取り扱う。「発明等」の対象は、特許権・実用新案権・意匠権・回路配置利用権・育成者権・著作権(データベースに限定)・ノウハウである。「研究成果有体物」とは、学術研究の成果から得られた知的財産を含む有体物である。「商標等」の対象は、商標権である。なお、著作物のうち、通常の教育研究活動に基づいて創作した個人の表現としての著作物(プログラムのソースコード、論文,著書等)に関する権利は個人帰属とする。ただし,著作権法15条1 項に規定される本学の業務として、本学からの依頼により創作されたプログラムのソースコードを含む著作物に関する著作権は、Public Domain Software、OpenSource Software などの自由配布するものを除き、原則として本学帰属とする。教職員等は、任意に創作した「意匠」「商標」は原則として本学帰属としないが、本学の信用維持などのために本学が依頼して創作された場合は本学帰属とする。
知的財産本部は対象とする知的財産を一元的に取り扱う。イノベーション共同研究センターは連携してこれを支援し、本学の知的財産の創出、保護・管理、活用を積極的に推進する。事務局の関連部課はこれらを積極的に支援し、学術情報部産学連携チームは知的財産本部の庶務を担当する。

(2) 発明等について

ア 発明等の全件開示

教職員等は、発明等をした際に、いかなる他者にもあらかじめ開示してはならず、全ての発明とその全ての内容を知的財産本部に速やかに届け出ることを遵守しなければならない。したがって、産学官連携による共同研究、受託研究、兼業における発明について、教職員等は自ら、学外の共同発明者以外に発明内容についてあらかじめ開示して検討などを行ってはならない。

イ 発明者等

発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものをいう。」とされており、本学は、発明を行った発明者等の権利を尊重する。発明者等とは、具体性のある着想を提供した者及び提示された課題に対し解決のために具体的な解決手段を提案した者をいい、単に課題や願望等を提示した者、指示されてデータをまとめた者又は実験の作業を行った者並びに資金や設備等を発明者に提供した者などは発明者等として取り扱わない。

(3) 職務発明

教職員等が、本学の業務範囲に属し、かつ、その発明等をするに至った行為が本学におけるその者の現在又は過去の本学での職務に属する発明等を、職務発明の対象とする。本学が支給又は管理する資金を使用して行った研究並びに本学の施設又は設備などの資源を利用して行った研究の結果生じた発明等については、原則として職務発明として取り扱う。教職員等の行った発明等が職務発明等に該当する否かについては、発明審査委員会の審査結果に基づき知的財産本部が決定する。

(4) 機関帰属

職務発明である発明は、本学が発明者の権利を承継して大学が権利を保有する機関帰属とすることができる。本学が承継しないと決定した権利については、本学に帰属せず、当該発明の発明者に帰属する(ただし、本学は通常実施権を留保する。)。なお、職務発明に該当する発明を本学が承継し、その出願手続き後に、当該発明にかかる権利を発明者へ返還した場合は、本学は発明者にその発明を実施して生じた収益から出願経費相当額を還元することを求めることができる。

(5) 出願

機関帰属とした発明の出願は知的財産本部が行う。機関帰属とした発明等は、権利取得可能性、市場性の総合的観点及び諸法令並びに本学の諸規則に照らして出願の是非を審査する。本学が出願しないと決定したものについては、本学に帰属せず、当該発明等の発明者に権利を返還する。
外国出願を本学の経費で行う場合は、原則的にJSTの支援を得て行うため、優先権主張の日から6か月以内に外国出願の要否を定める。共同出願の場合は、共同出願人に協力を求め、協議の上行う。。

(6) 管理

本学が発明を機関帰属として出願した場合、発明に係る権利が有効に活用されるよう、知的財産本部において適切に管理する。なお、発明に係る権利の維持費用を考慮し、発明に係る権利を維持するか否かの判断に当たっては、収益可能性、権利維持費用などを総合的に判断した上で、権利維持を決定する。
知的財産本部は、出願後2年6か月を経過し、審査請求の期限(3年)までにライセンシングの見込みがないと判断した場合には、本学が承継した発明等の諸権利を発明者に返還するために、発明者との協議を行う。

(7) 審査及び決定

上記(1)~(5)に関わる審査と決定は、『静岡大学職務発明規則』及び『静岡大学発明審査規程』に基づき発明者の協力を得て知的財産本部が合理的かつ迅速に行う。

(8) 活用

知的財産本部は、知的財産権の活用のために外部の技術移転機関との連携に努め、知的財産権の有効な活用を図る。知的財産本部は、発明者等の意見を尊重して、本学の権利の実施を希望する連携相手に対し、実施許諾、有償譲渡の形態や 条件の設定を行い学長がこれを認可する。

(9) 大学発ベンチャーへの支援

大学発ベンチャーでの権利活用においては、新産業への理解とその保護を考慮しつつ個別に決定する。特に発明者等が知的財産権を大学発ベンチャーに活用することが明確な場合は、発明者等の意見を参考にして優先的に独占的通常実施権、専用実施権の設定又は有償譲渡等を行う。

(10)発明等の創作者に対する補償

職務発明は、発明等に係る権利の承継にかかわらず、本学が自然的に通常実施権を保有し、発明者等に対して補償金を支払い、発明を奨励する。補償金は出願 補償金、登録補償金、ライセンス補償金を本学に権利譲渡した全ての学内発明者に本学の規定に従って支払う。
特に、本学が、発明等に係る権利の活用によって対価を得た場合には、本学の研究活動をより一層活性化することを目的として、発明等を行った教職員に重点的予算を配分し、研究グループと本学知的財産本部で残額を等配分する。これらの補償金を受ける権利は、創作者が転職又は退職した後も存続し、さらに相続の対象となる。補償の詳細については、静岡大学職務発明規則で定める。

(11)知的財産の創作者への評価と責任

知的財産創出を奨励するために、本学は、知的財産の権利化を「発明等の創出」の業績として、また、実施(実施許諾又は譲渡による収益化)の場合に、「発明等の実施」の業績として評価する。創作者と本学は、その創出した知的財産と社会還元に対して必然的責任を負うものであり、本学が承継した職務発明等の出願等及び権利化の手続、さらに管理、活用に全面的に協力しなければならない。したがって、特許出願前に論文発表等しようとする教職員は、論文発表等の時期及び方法等について、知的財産本部との調整に応じなければならない。

(12)兼業における発明の届出

教職員は、『静岡大学教職員兼業規程』に基づく兼業で行った発明等の内、兼業に由来することが合理的に判断できる発明等については機関帰属としない。したがって、本学の財産である未公開知的財産の無償提供ではないことを本学に示すために、教職員は発明開示の際に合理的理由を添えて申し出なければならない。

(13)知的財産本部の秘密保持

知的財産本部及び発明審査委員会は、届け出された発明のいかなる内容も機関帰属とするまでは、発明者の許可なく第三者に開示してはならない。知的財産本部は、機関帰属決定後においても、当該発明の持つ最小限の情報を学内の最小限の範囲での開示とするための対策を行わなければならない。

4. 産学官連携において創出された知的財産について

受託研究・共同研究などの産学官連携に際して、本学と企業等外部組織(以下、「連携相手」という)との間で、創出された知的財産に係る権利は、本来その創作者に帰属する。本学は、発明者主義の立場をもって、機関帰属とした発明に関する各発明者の貢献度を、当該発明に係る発明者及び発明者から権利を承継した者が有すべき権利の持分割合とすることを原則とする。知的財産は、本学も連携相手も、金銭では贖えない多大の努力と知識・経験の蓄積から、必然的にあるいは蓋然的に生じるものであるから、本学は、研究費や出願費用などの多少によって知的財産権の保有割合が影響されるものとは考えない。また、本学は、大学の公益性を維持するため、特定の連携相手の利益のためだけに知的財産権のための経費を供しない。すなわち、次のとおりである。

  1. 本学の研究者が単独で知的財産の創作をした場合には、それに係る権利は本学に単独で帰属する。出願、管理、維持に係る費用(以下、「特許費用」という。)は本学が全額負担する。連携相手に対し、優先的に有償の通常実施権又は専用実施権の許諾、有償の譲渡を行う。
  2. 連携相手の研究者が単独で知的財産の創作をした場合には、それに係る権利は当該連携相手などに単独で帰属する。当該特許費用を本学は負担しない。当該知的財産権の権利行使に本学は関与しない。
  3. 本学の研究者と連携相手の研究者が共同で知的財産を創出した場合には、本学と連携相手との共有とする。本学は、教育・研究を業務として行い、製造販売を行わないため自ら実施が行えず、社会貢献としての連携相手による実施を優先するため、特許費用は連携相手が負担する。ただし、本学はこの原則を基本としつつも、事案に応じて柔軟に対応する。
  4. 本学の教職員の静岡大学教職員兼業規程に基づく兼業は、大学の業務あるいは教職員の職務とは異なる個人的な産学官連携としての社会貢献であることから、本学保有のすべての知的財産とは無関係に、兼業において知的財産の創作を為した場合は、それに係る権利は当該教職員又は兼業先企業への帰属とする。ただし、利益相反マネジメントの要否を確認するために、出願前に発明内容を本学に届け出るものとする。

5. 守秘義務

本学は、企業などとの研究交流や産学連携を行うための交渉の過程において、連携相手から守秘義務を求められた場合はこれに応じる。また、本学から企業などに対しても守秘義務を求める。産学官連携での信頼関係の構築のために、知的財産本部は、関係者からの相談に応じるなどして、適切に対応する。

6. 学生に関する取り扱い

学生に関しては、大学における通常の研究活動の範囲では本ガイドラインや職務発明規則の適用対象者とならないが、本学とアルバイトの雇用契約を締結するなどして本学の業務に従事する場合や、教職員と同様の取扱いを受けることについて本学との間で契約をした場合には、本ガイドラインの適用対象者となる。この場合、指導教員等は学生の教育を受ける権利や就職時の選択の自由などを損なわないように常に配慮しなければならない。ただし、学生にとっては、指導教員等とともに本ガイドラインや職務発明規則の適用対象となることによって、発明などを本学に一元管理させることが可能となることから、研究室内で統一的な指針のもとに教育を受けることができ、研究に専念できるものと考える。

7. 退職教職員と過去に在学した学生の発明

退職した教職員が在職期間中に創出した知的財産権、あるいは、過去に在学した学生が在学期間中に創出した知的財産権が職務発明に該当する場合は、本学の機関帰属とする。
ただし、各々の期間内に創出に至らなかった場合は機関帰属としない。なお、申し出によって任意譲渡を受けるための審査を行い、機関帰属とする合理的理由があれば譲渡を受けることで学内の知的財産と同様に取り扱う。

8. 権利維持の責任と実施時の免責

本学は、本学が単独または学外者との共有権利を有する知的財産権の権利化とその維持について責任をもって対処するが、本学は知的財産権を自ら実施することはなく、これら知的財産権の実施によって生じる損害については、本学はいかなる責も負わない。

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