小野 行徳 (ONO Yukinori) ナノエレクトロニクス

超低消費電力デバイスの創成

第6期 静岡大学研究フェロー

ナノエレクトロニクス

小野 行徳

ONO Yukinori

極低消費電力・新原理デバイスの研究

1963年7月生まれ、1988年早稲田大学大学院修士課程修了(1996年 博士(工学))、1988年日本電信電話株式会社(NTT)入社(1996.12~1997.12 M.I.T.客員研究員)、2012年 富山大学 大学院理工学研究部 教授、2016年 静岡大学 電子工学研究所 教授
2019年より第4期研究フェロー、2022年より第5期研究フェロー、2025年より第6期研究フェロー。

Chapter01

電子機器の「熱の発生」問題の解決に向けて、超低消費電力デバイスを研究

スマホで動画を見ていると、スマホが少し温かくなる(温度が上がる)ことにお気づきの方もいらっしゃると思います。これは電子機器の構成部品であるトランジスタが大量の熱を放出しているためで、この熱の発生が電子機器の性能向上を阻害する主要因となっています。
私たちの研究室では、「熱の発生」という電子機器につきまとう本質的な問題を解決するために、超低消費電力デバイスの研究を行っています。

Chapter02

新開発の「トランジスタ電子温度計」で、トランジスタ中の電子の温度計測に成功

「トランジスタ電子温度計」の電子顕微鏡写真(左)と概略図(右) (H. M. Nayem et al., Appl. Phys. Lett., 2025)

図は、最近(2025年)開発に成功した、トランジスタ中の電子の温度を正確に計測するための新型デバイス「トランジスタ電子温度計」の電子顕微鏡写真とその概略図です。
熱の発生を抑えるための研究の第一歩は、熱により上昇した電子の温度を正確に計測することですが、これまでシリコントランジスタ中の電子の温度を正確に計測する手段がありませんでした。この「トランジスタ電子温度計」は、熱によりばらついた電子のエネルギーの一部を「すくい取る」ことにより、微細な領域の電子の温度を計測します。
今後、このデバイスを利用することにより、「熱の発生」の機構解明が進み、新たな低消費電力デバイスの開発が、より一層加速されることが期待されます。

Chapter03

トランジスタの基板に不可欠なシリコンの新たな現象をナノ領域で発見したい

私の専門分野は「電子工学」ですが、行っている研究は、かなり「理学(物理学)」の色彩が強いものとなっています。新原理デバイスの開発には、新しい現象の「発見」が不可欠だからです。私たちの研究対象は、現在のトランジスタの構成材料であるシリコン(Si)ですが、特に、ナノメートル(nm)領域(1nmは10-9m)の極微のシリコンにおける新たな現象の発見を目指しています。
研究をしていると、理解できない実験データが毎月のように出てきます。そしてその多くはその原因すら特定できず、あるいは特定できたとしてもあまり重要でないことが判明してしまいます。
これらのデータの中に潜む、真に重要な現象を見逃さないためには、幅広い知識はもちろんですが、個々の研究者の美意識や哲学も重要になってきます。実験結果を予想するとき、「こうであったら美しいなぁ」とか、「こうあるべきだ」という思い込みや信念が、発見には重要です。その意味で、研究者には芸術家に近い感覚が必要だと思っています。私自身、芸術家肌ではありませんが、なるべくそのような感覚を持てるようにと、日々心掛けています。

[写真]小野 行徳 (ONO Yukinori)

第6期 静岡大学研究フェロー