菊池 将一 (KIKUCHI Shoichi) 材料強度学

「壊れる」のメカニズムを探る

第6期 静岡大学研究フェロー

材料強度学

菊池 将一

KIKUCHI Shoichi

表面改質を用いた多機能金属材料の創製

1981年4月生まれ、2010年慶應義塾大学大学院博士課程修了、2010年立命館大学助教
(2013.4-9カイザースラウテルン大学客員研究員兼任)、2014年神戸大学助教、2018年静岡大学准教授(2019.10-慶應義塾大学訪問准教授兼任,2020.11- 2024.3 JSTさきがけ研究員兼任)
2022年より第5期研究フェロー、2025年より第6期研究フェロー。

Chapter01

金属表面のミクロ組織の改質が、破壊・破損を防ぐカギに

「破壊」という言葉を聞いて多くの方がネガティブなイメージを思い浮かべることと思います。これは、インフラ機器や航空機・自動車などの輸送機の破壊が事故として我々の生活を脅かし、時としてヒトの命を奪うためです。産業界では金属材料が構造部材としての役割を担っているため、各種金属製品の破壊・破損防止が重要といえます。
そのため、金属表面のミクロ組織をいかに改質するか、がポイントです。これは,外部環境と接触する金属表面において腐食や摩耗が生じやすかったり、力学的に大きな力がかかりやすかったりすることが原因です。

Chapter02

「壊れるメカニズム」を知っているからこそ、「壊れないモノ」を生み出すことができる

なかでも、小さな力が繰返し負荷することにより生じる金属疲労が、主たる破壊要因とされています。そのため私は、金属疲労を抑制する新しい表面改質の開発を行っています。工夫を凝らした表面改質を世に提案することにより、複数の特性に優れる多機能材料の創製にチャレンジしています。最近は、他の研究者とチームを組み、ガラス・金属・高分子・ゲルを共通の考え方("柔"と"剛"の不均質構造化)で強くすることにも取り組んでいます。「壊れるメカニズム」を知っているからこそ、「壊れないモノ」を生み出すことができます。

Chapter03

日本酒づくりで米が砕けないように磨く技術も「破壊」の研究対象に

ネガティブなイメージの破壊研究に取り組む工学研究者のマインドは、決してネガティブではありません。むしろ『破壊をなくしてやろう!』というポジティブな意気込みで研究に臨んでいます。世の破壊をなくすための取り組みは地味ですが、意義深いです。
また、破壊をなくす対象は、なにも金属製の機械構造物に限ったことではありません。例えば、日本酒を造る工程では「いかに破壊させないか」が重要視されます。精米工程では米が砕けないように磨く技術が求められ、発酵工程では酵母の細胞壁を壊さないことが美味しいお酒作りの秘訣です(菊池酒造㈱顧問を兼任しています)。
また、製品によっては「ほどよく壊れてほしい」こともあるため、破壊をコントロールすることの重要さも最近痛感しています。様々なアプリケーションを意識し、材料の破壊を制御する立場から安心・安全な社会構築に貢献したいと考えています。

[写真]菊池 将一 (KIKUCHI Shoichi)

第6期 静岡大学研究フェロー