武力紛争とは何かを考える : 川岸 伸 KAWAGISHI Shin(国際法)

非国際的武力紛争を規律する武力紛争法

2023年3月取材

Chapter 01

武装集団が関わる紛争で適用されているルールとは?

国際社会においては、伝統的に国家が主要なアクターでありましたが、現在では、国家以外のアクター、すなわち、非国家主体が飛躍的に行動領域を拡大させています。中でも、世界中の紛争に目を向けてみれば分かるように、武装集団が関与しない紛争はほとんどないと言っても過言ではないでしょう。

例えば、ウクライナ、シリア、リビア、アフガニスタンなどで生じている紛争を取り上げてみるだけでも、このことは理解可能ではないかと思います。私は、着任以来、この武装集団が関与する、国際法上は非国際的武力紛争と呼ばれる紛争にどのようなルールが適用されるのかという問題を中心に研究してきました。

Chapter 02

条約または条文の成立過程や紛争事例、国際裁判の判決を分析

非国際的武力紛争を規律する国際法(特に武力紛争法)のあり方を解明することが私の着任以来の研究テーマです。具体的には以下のような手法を駆使しながら、研究を進めています。

①ある条約または条文の成立過程に焦点を当てる
②実際に生じた紛争事例を検討する
③国際裁判の判決を素材に分析を進める など

Chapter 03

行動の動機や立場の正当化、対立の妥協点などを読み解く

ある条約または条文の成立過程、実際に生じた紛争事例、さらに国際裁判の判決などを分析していくと、国家、武装集団、国際裁判所などの国際社会におけるアクターは、実に巧みに行動していることに気付かされます。

我々が普段見聞きする情報だけでは、これらのアクターの行動の結果しか知り得ることができませんが、資料(史料)を手がかりに検討していくと、どのような動機に基づいて行動していたのか、どのような理屈に基づいて自身の立場を正当化していたのか、さらにどのように対立を克服しようと妥協点を見出そうとしていたのかなど、未知なる発見に遭遇することが度々あります。国際法の研究方法には実にさまざまなアプローチがありますが、私の場合、これらの未知なる発見に遭遇する時、いつも国際法の面白さを実感することになります。

[プロフィール写真]教授 川岸 伸 KAWAGISHI Shin

教授川岸 伸 KAWAGISHI Shin(国際法)

1981年8月生まれ、2010年9月京都大学大学院法学研究科博士後期課程修了、博士(法学)、京都大学大学院法学研究科助教などを経て、2023年より現職
2022年より第5期若手重点研究者

主な研究業績

外部資金獲得状況:
  • 科研費基盤C(分担)「武力紛争法のdomain区分――宇宙戦法規という新domain成立可能性」(2020年~2023年)
  • 科研費若手B(代表)「非国際的武力紛争の規範原理再考――その史的検証」(2017年~2021年)
  • 科研費基盤A(分担)「国際法の訴訟化への理論的・実践的対応」(2011年~2016年)
委員等:
  • 世界法学会庶務幹事(2023年~2026年)
  • 国際法学会研究振興委員会委員(2022年~2024年)
  • 国際法学会研究企画委員会委員(2020年~2022年)
  • 国際法学会国際交流委員会委員(2018年~2020年)
  • 世界法学会庶務主任補佐(2011年~2014年)
著書・論文:
  • 1) Shin Kawagishi, “Reconsidering the Classification of Extraterritorial Conflict with Armed Groups in International Humanitarian Law,” in Karen Scott et al (eds.), Changing Actors in International Law (Brill, 2020), pp. 329-355.
  • 2) 川岸伸「非国際的武力紛争への外国干渉と国際的武力紛争の概念」『国際法外交雑誌』第116巻 3号(2017年)60-91頁。
  • 3) 川岸伸「非国家主体への越境攻撃と『武力紛争』の概念」『国際法外交雑誌』第113巻1号(2014年)54-84頁。

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静岡大学若手重点研究者