情報モラルの教材開発に挑む : 塩田 真吾 SHIOTA Shingo(教育工学)

現代的・社会的課題をどう教えるか

2023年3月取材

Chapter 01

ネットトラブルから子どもたちを守る「情報モラル教育」

現在の学校教育では、国語や数学といった教科教育だけでなく、情報や環境、キャリアなどさまざまな現代的・社会的課題を教えています。こうした現代的・社会的課題は、進行形の問題が多く、明確な答えが定まっていないため、「どのように教えればよいのか」という課題があります。

例えば、情報社会の進展とともに、情報モラルも重要になってきています。しかし、この情報モラルをどのように教えるかは、実は難しい課題です。

トラブル事例を紹介して、「こんなネットトラブル事例に気をつけなさい」と教えたところで、「自分にはそんなトラブルは起きないだろう」と考え、「自分も気をつけよう」とは思いにくいのです。

Chapter 02

自分にも起きうるという「自覚」を促す教材を開発

私の研究室では、こうした情報モラルなどの現代的・社会的課題について、どうすれば自分のこととして考えられるかという「自覚」をテーマに研究しています。特に、情報教育では、自覚を促すために「認識のズレ」に着目し、自分と相手が認識する「嫌なこと」のズレや「不適切な写真」のズレ、「使いすぎ」のズレなどを実感させることで、「自分もトラブルにあってしまうかも」というトラブルへの自覚を促す教材を開発しています。

Chapter 03

学校現場で学生や企業と実践的な研究を推進

具体的には、学校現場の課題、特に現代的な教育課題を実践的に研究しています。教育工学の中でも、より実践的・応用的領域になるので、実際に学校現場に伺って研究を進めることが前提となります。「現場」「現物」「現実」の三現主義を重視し、学生も理論と実践の往還の中で学びを深めていきます。

また、さまざまな企業と共同研究を行っていることも研究室の大きな特徴です。例えば情報教育では、LINE株式会社などの情報系企業とともに「情報モラル」を学ぶ教材を開発し、学校に無償で提供しています。企業や学生と試行錯誤しながら新しい教材をつくりあげ、その教材が多くの学校現場で活用され、子どもたちが楽しみながら学ぶ様子を目にすることが、研究の一番のおもしろさです。

[プロフィール写真]准教授 塩田 真吾 SHIOTA Shingo

准教授塩田 真吾 SHIOTA Shingo(教育工学)

1981年10月生まれ、2010年早稲田大学大学院博士課程修了、2009年静岡大学教育学部助教、2011年静岡大学教育学部講師、2015年静岡大学教育学部准教授
2019年より第4期若手重点研究者、2022年より第5期若手重点研究者

主な研究業績

受賞歴:
  • 静岡大学 産学連携奨励賞(2022)
  • 第32回学習デジタル教材コンクール奨励賞(2016)
  • 日本エネルギー環境教育学会 研究論文賞(2011)など。
外部資金獲得状況:
  • 科研費若手研究B「長期的視点に立った情報モラル教育の評価指標・方法の検討と評価システムの構築・実証」(2014-2018)
  • ふじのくに地域・大学コンソーシアム共同研究助成「特別支援向けネットコミュニケーションスキルの育成に関する実践研究」(2020)など。
委員等:
  • 文部科学省「ICT活用教育アドバイザー」(2021)
  • 文部科学省「情報モラル教育推進事業」検討委員会 副座長(2018-2021)
  • 静岡県富士市立高等学校運営協議会委員(2013-2021)など。
著書・論文:
  • 『自律的思考を促すスポーツ・インテグリティ教育』静岡学術出版(2021)
  • 『特別な支援を要する子どものためのネット・スキル・トレーニング』静岡学術出版(2020)
  • 「子どもの情報機器活用に関わるトラブルのリスクアセスメント」日本教育工学会論文誌44巻1号, pp.75-84(2020)
  • Development of Thinking Tools to Foster Creative Problem Solving Skills: A Trial in Programming Education”,International Journal of Information and Education Technology,Vol.10, No.6, pp.471-475(2020)

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静岡大学若手重点研究者