教師が何を願い、どんな授業を実践してきたのか、ライフストーリーを聴き取る
社会科と聞くと、どのような学習経験が思い浮かびますか。社会科は、単なる暗記科目ではなく、平和で民主的な国家・社会の形成につながる重要な科目です。教師は、学習指導要領が示す「平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力」を育成する」という目標をふまえつつ、そこれまでの経験をもとに、自分の言葉で社会科を教える意義や方法を自分の言葉で考えて授業を実践しています。
一方で、2018年度に内閣府が実施した「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」では、「社会をよりよくするため、私は社会における問題の解決に関与したい」(肯定群42.2%)、「私の参加により、変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない」(肯定群32.5%)と、他国に比べて若者の社会的課題への意識が著しく低いという課題が生じています。
このような状況に対し、社会的な課題を積極的に取り上げて、児童生徒が社会に対して具体的に何かを実現したいと願うような、社会的な希望を形成することに寄与する授業を実践している教師がいます。
そこで、教師がどのような願いを持ちながら、その実現に向けてどのような授業を実践してきたのか、教師のライフストーリーを聴き取り、社会的な課題を取り上げるに至った経緯や、社会事象を教材化する際に直面した課題とそれを乗り越える工夫を明らかにする研究を行っています。
研究を通して、社会問題と対峙し、当事者の声を共有しようとする教師の姿が明らかになりつつあります。語りの内容だけでなく、語るという行為そのものがもつ実践的ならびに社会的な意義にも着目して研究しています。