細菌が作り出す微粒子の機能を突き止め、疾病・感染の予防へ
私たちの体は30-40兆個のヒト細胞から構成されていますが、皮膚や腸内にはその細胞数よりはるかに多くの細菌(約100兆細胞)が生息しており、人間の健康・疾病に大きく関わっています。 ヒト細胞や細菌からは生体膜で構成された100 nm程の細胞外小胞が産生されており、細胞由来の核酸やタンパク質を他の細胞に伝達する細胞間コミュニケーションの役割を担っています。特に細菌から放出される微粒子「膜小胞」は、上皮細胞や免疫細胞内に侵入し、宿主の免疫誘発や毒性因子運搬の機能を有しており、免疫応答や多くの疾患・感染症に深く関与しています。
しかし、微粒子を高精度に分析・計測する技術は世界的にも発達段階にあり、未だ十分な機能理解と応用には至っていません。
私の研究室では、細菌が形成する膜小胞の生理機能を明らかにし、生体内における微粒子の機能動態をナノレベルで制御することで、疾病・感染予防を目指しています。また、細菌を遺伝子改変することで中身や表層を自由に設計した機能性膜小胞を作製し、ワクチンや薬物送達などに応用するナノバイオテクノロジー研究にも取り組んでいます。