タンパク質を自由自在につくる : 佐藤 浩平 SATO Kohei(ペプチド・タンパク質化学)

合成化学で拓く新しいタンパク質工学

2023年3月取材

Chapter 01

天然タンパク質を凌駕する「スーパータンパク質」を創造する

アミノ酸が数珠状につながってできるタンパク質は、さまざまな生命現象を制御する生体高分子です。どのアミノ酸がどのような順番でつながるかによってタンパク質の機能は変化します。多彩な機能をもつことから、タンパク質は生命研究にとどまらず広範な分野で応用されています。

望む機能をもつタンパク質を得るために、タンパク質のアミノ酸配列をコードした遺伝子を細胞に導入して発現させる手法が汎用されますが、細胞が利用できるアミノ酸しか構成要素になりえません。もしアミノ酸ではないものをタンパク質に導入することができれば、これまで想像もできなかったような機能をもつスーパータンパク質を創り出すことができるかもしれません。

「こんなタンパク質があったらいいのに」を実現するために、私たちはタンパク質を自由自在につくる方法の開発に取り組んでいます。

発現系を全く利用しない完全化学合成法と、発現したタンパク質断片と化学合成した断片を組み合わせる半化学合成法に焦点を当て、実用的なタンパク質合成戦略の確立を目指しています。また、望むタンパク質機能を実現するにはどのような構造を導入すればよいかを予測するためのタンパク質設計指針の開発にも取り組みます。

Chapter 02

生命現象を司るタンパク質を自在にデザイン・合成したい

タンパク質は非常に大きく複雑な構造をもった分子です。分子である以上、構造式で記述することができます。タンパク質を構造式として眺めてみると、そこには精密な分子機械としての機能美があります。

生命の歴史の中で長い年月をかけて磨き上げられてきたその機能美の本質を理解し、さらにはそれを超えるものを自分たちの手でデザイン・合成したいというのが、私たちの研究のモチベーションの根底にあります。

Chapter 03

目に見えないミクロな世界でものづくりを究める

これまで以上のタンパク質をデザイン・合成するためには、欲しいタンパク質を自由自在につくれる技術が必要不可欠です。目には見えないミクロな世界におけるものづくりの匠になるべく腕を磨くなかで、サイエンスの美しさやおもしろさを学生の皆さんと共有し、ともにワクワクを体験できる教育研究を目指します。

[プロフィール写真]助教 佐藤 浩平 SATO Kohei

助教佐藤 浩平 SATO Kohei(ペプチド・タンパク質化学)

1988年2月生まれ、2015年徳島大学大学院薬科学教育部博士後期課程修了、2015年静岡大学助教(現職)、2022年米国ペンシルベニア大学訪問研究員
2019年より第4期若手重点研究者、2022年より第5期若手重点研究者

主な研究業績

受賞歴:
  • 有機合成化学協会東海支部奨励賞(2023年)
  • 日本化学会東海支部奨励賞(2021年)
  • 公益財団法人三木康楽会康楽賞(2010年)
外部資金獲得状況:
  • 科学研究費補助金基盤研究(C)「タンパク質化学合成を基盤としたエステル連結ユビキチンシグナル解析プローブの創製」(2022年~2025年)
  • 科学研究費補助金若手研究「薬剤耐性問題克服に向けて:タンパク質主鎖との水素結合を指標とする阻害剤評価系開拓」(2019年~2021年)
  • (公財)天野工業技術研究所研究助成金「キャッチ&リリースによる新規ペプチド精製法の開発」(2021年)
  • (公財)テルモ生命科学振興財団研究助成「対薬剤耐性創薬デザインを支援するタンパク質プローブの開発」(2020年)など
学会等:
  • 若手ペプチド夏の勉強会幹事会代表(2022年~)
  • 第50回若手ペプチド夏の勉強会世話人(2018年)
著書・論文:
  • 1)「Late-stage diversification strategy for the synthesis of peptide acids and amides using hydrazides」Exploration of Drug Science, in press
  • 2)「Hydrazide-mediated solubilizing strategy for poorly soluble peptides using a dialkoxybenzaldehyde linker」Chem. Pharm. Bull., 70,707-715, 2022
  • 3)「Late-Stage Solubilization of Poorly Soluble Peptides Using Hydrazide Chemistry」Org. Lett., 23, 1653-1658, 2021.
  • 4)「Directsynthesisof N-terminal thiazolidine-containing peptide thioesters from peptide hydrazides」Chem. Commun., 54, 9127-9130, 2018.

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静岡大学若手重点研究者