リモートセンシングで農業に貢献 : 薗部 礼 SONOBE Rei(農業情報工学)

リモートセンシング技術を用いた作物管理に関する研究

2023年3月取材

Chapter 01

作物の品質やストレスを正確に評価するには?

おいしい野菜を作るにはどうしたらよいでしょうか?いろいろな方法があると思います。逆説的ですが、適度なストレスを与えておいしくするというのも1つの手です。これは食べる側の人間にとって好ましいことですが、作物にとっては苦痛であり、収量の低下、時には枯死に至ることもあります。よって、バランスの取れたストレスの強さやタイミングといった精緻なコントロールが必要とされます。

しかし、作物の品質やストレスを正確に評価するためには、高価な薬品や計測機械を使用して成分を分析する必要があり、さらに、生育している状態を保ったまま植物をモニタリングすることは容易ではありません。

植物は成分やストレスによって、光の反射パターンが変化し、また、構造が変われば散乱特性にも変化が現れます。ここに着目したのがリモートセンシング技術です。私たちは本技術のメリットを最大限に発揮するために機械学習を活用し、そうした変化の抽出や、モノクロ画像のカラー化、粗い画像の高分解能化のための研究を行っています。

Chapter 02

リモートセンシングはスマート農業を支える最先端の研究分野

もともと昆虫に興味があった私が農学部を志望したのは、高校生のときです。捕食者としての特性を活かしたオオハサミムシによる生物的防除法を知ったのがきっかけでした。大学生になり、農学を学ぶ中で理工学的防除法の技術を知り、3年生になって初めてリモートセンシングという研究分野の存在を知ったのです。

静岡大学では、専門科目をあまり学んでいない1年生の終わりの時期に希望するコースを決めなくてはなりません。入学直後にリモートセンシングについて学びたいと考えている学生は稀でしょう。私もそのようには考えていませんでした。

しかし、リモートセンシングは、スマート農業を支える最先端の研究分野の1つです。「よく知らないから…」「本当は他の分野を選択したかったけれど…」という学生であっても、何がきっかけになるかはわかりません。リモートセンシングの世界に一歩足を踏み入れてくれたら幸いです。

[プロフィール写真]准教授 薗部 礼 SONOBE Rei

准教授薗部 礼 SONOBE Rei(農業情報工学)

1984年7月生まれ、2015年北海道大学大学院博士後期課程修了、2009年~2012年株式会社パスコ勤務、2012年~2013年株式会社中村屋勤務、2014年~2015年日本学術振興会特別研究員、2015年静岡大学助教、2022年静岡大学准教授(現職)
2019年より第4期若手重点研究者、2022年より第5期若手重点研究者

主な研究業績

受賞歴:
  • 静岡県内大学発ベンチャー支援協議会賞(2024年)
  • 日本写真測量学会学会賞(2023年)
  • 日本写真測量学会学会奨励賞(2018年)
外部資金獲得状況:
  • 科研費基盤研究(C)「機械学習を活用した分光反射特性からの茶樹生葉の品質・ストレス評価」(2019~2022年)
  • 科研費研究活動スタート支援「リモートセンシングを活用したオアシスのモニタリングに関する研究」(2015~2017年)
学会等:
  • 日本写真測量学会評議員(2020年~)
  • 講演会実行委員会 (2017年~)
国内外の学会誌編集等:
  • Remote Sensing, Reviewer Board(2019年~)
著書・論文:
  • 1) Addition of fake imagery generated by generative adversarial networks for improving crop classification. Advances in Space Research (Available online 15 June 2024).
  • 2) Carotenoid Content Estimation in Tea Leaves Using Noisy Reflectance Data. Remote Sensing, 15(17), 4303. 2023.
  • 3) Applying variable-selection methods and preprocessing techniques to hyperspectral reflectance data to estimate tea cultivar chlorophyll content. Remote Sensing, 15(1), 19. 2023.
  • 4) Use of spectral reflectance from a compact spectrometer to assess chlorophyll content in Zizania latifolia. Geocarto International. 37(18), 5363-5375. 2022.
  • 5) Evaluation of a one-dimensional convolution neural network for chlorophyll content estimation using a compact spectrometer. Remote Sensing, 14(9), 1997. 2022.

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静岡大学若手重点研究者