齋藤 貴子 (SAITO Takako) 細胞生物学

海洋生物を利用して生命誕生の機構を探る

第6期 静岡大学若手重点研究者

細胞生物学

齋藤 貴子

SAITO Takako

ホヤ自家不和合性から解き明かす動植物共通の生殖戦略

1983年12月生まれ、2012年名古屋大学大学院博士課程修了(博士理学)、2009-2012年日本学術振興会特別研究員DC1、2012-2016年スウェーデン カロリンスカ研究所研究員、2016-2021年福島県立医科大学医学部助教、2021年静岡大学農学部テニュアトラック助教、2025年より第6期若手重点研究者。

Chapter01

遺伝的多様性が生物の進化や環境への適応を支える原動力に

生物は限られた寿命の中で、生殖というしくみを通じて子孫を残し、種を繋いでいます。有性生殖では、2つの個体の遺伝情報が組み合わさって新しい命が生まれます。この遺伝的な組み合わせが多様性を生み出し、生物の進化や環境への適応を支える原動力となっています。
一方、生物の生殖戦略の一つとして、雌雄同体というスタイルをとる種も多く見られます。これらの種では、1個体が雄と雌の両方のはたらきを持っているため、柔軟に繁殖できるのが特徴です。
しかし、自家受精は一時的に個体数維持に有利でも、遺伝的多様性が失われ、長期的には絶滅リスクが高まってしまいます。

Chapter02

ホヤをモデルとした配偶子間認識機構の解明を目指す

海洋生物ホヤを含む雌雄同体生物は、自家受精を避ける仕組み「自家不和合性」を獲得することで絶滅のリスクを回避しています。自家受精を防ぐためには、配偶子である卵子と精子が自分と他人とを認識しなくてはなりません。
単一の細胞である卵子と精子がどのような仕組みで自他を識別するのか、そして自分と判断するとなぜ受精できないのか、その分子メカニズムをホヤを用いて解明しようとしています。

Chapter03

「自家不和合性」という動物学100年の謎の解明に挑みたい

受精とは、同種でありながら異なる個体に由来する2つの生殖細胞が融合し、新たな生命を生み出す現象です。通常、異個体間の細胞融合は厳密に制御されていますが、受精においては例外的に許容されています。そのため、精子と卵子には融合相手を正確に見分ける仕組みを備えています。
ホヤはこの仕組みをさらに高度に発展させ、自身と他個体の配偶子を識別しています。
ホヤの自家不和合性は、遺伝学の父であるT.H.モーガンによって報告され、その研究の歴史は100年以上になります。100年間誰も答えを知らなかった謎に一歩ずつ近づくたびに、研究の魅力と奥深さを実感しています。
「自家不和合性」という現象は植物で普遍的にみられますが、動物ではホヤやサンゴのみがその機構を獲得しています。動物と植物で得られた知見を融合し、学際的に研究を進めることで、今まで見落とされていた新たな生命現象の発見につながると期待しています。

[写真]齋藤 貴子 (SAITO Takako)

第6期 静岡大学若手重点研究者