田代 陽介 (TASHIRO Yosuke) 生物工学

ナノバイオテクノロジーで生命のしくみを紐解き、環境・医療応用へ

第6期 静岡大学若手重点研究者

生物工学

田代 陽介

TASHIRO Yosuke

生体微粒子を利用したナノバイオテクノロジー

1981年7月生まれ。2009年筑波大学大学院生命環境科学研究科、博士(農学)。日本学術振興会特別研究員(北海道大学、ケンブリッジ大学)を経て、2013年静岡大学テニュアトラック助教、2018年同大学学術院工学領域講師、2024年より准教授。2019-2023年JSTさきがけ研究者(兼)。2019年より第4期、2022年より第5期、2025年より第6期若手重点研究者。

Chapter01

細菌から放出される微粒子「膜小胞」が生命現象をつなぐ


私たちの体は30–40兆個のヒト細胞から構成されていますが、それに匹敵するほどの細菌が皮膚や腸内には生息しており、生体機能や環境との相互作用に大きく関わっています。ヒト細胞や細菌からは、生体膜で構成された100 nm程の細胞外小胞が産生され、核酸やタンパク質を他の細胞へと運ぶことで、細胞間コミュニケーションを担っています。特に細菌から放出される微粒子「膜小胞」は、宿主の免疫誘発や毒性因子運搬の機能を有しており、免疫応答や多くの疾患・感染症に深く関与しています。また、環境中においては微生物間の情報伝達や物質循環にも寄与しており、膜小胞は生体内外を横断して機能するナノスケールの情報媒体です。しかし、微粒子を高精度に分析・計測する技術は世界的にも発達段階にあり、未だ十分な機能理解と応用には至っていません。

Chapter02

膜小胞の機能を解明し、微粒子の動態をナノレベルで制御する

本研究室では、細菌が形成する膜小胞の生理機能を明らかにし、微粒子の生成・放出・相互作用といった動態をナノレベルで理解・制御することを目指しています。また、環境中で機能する微生物由来ナノ粒子に着目し、その特性を活かした新たな機能材料やバイオテクノロジーへの応用展開に取り組んでいます。さらに、細菌を遺伝子改変することで中身や表層を設計した機能性膜小胞の開発も進めており、これらはワクチンや薬物送達といった医療応用にもつながる可能性を有しています。このように、本研究は基礎的な理解から、環境・医療を含む多様な分野への応用展開を見据えたナノバイオテクノロジーの創出を目指しています。

Chapter03

世界で誰も見ていない現象を発見する楽しさを体験してほしい

地球上に生命が誕生してから生物は環境変化に耐えながら数十億年間進化を続けてきました。細胞は長年かけて進化し、様々な化学反応の場となる物質製造装置です。細菌というわずか 1μm 程度の精密デバイスの中には、その年月の謎がまだたくさん潜んでいます。あらゆる角度からその生命機能の謎を紐解き、世界で誰も見ていない現象を発見する研究の楽しさを学生には体験してほしいと思っています。本研究室では、微生物を研究対象として生命現象の根本を解明する基礎研究を通じて、新たな応用へとつなげる「芽」を育んでいきます。また、産業の街・浜松において、生物工学を基盤とした新たな技術の創出と、社会で活躍できる人材の育成を目指しています。

[写真]田代 陽介 (TASHIRO Yosuke)

第6期 静岡大学若手重点研究者